interview

『サマーゴースト』監督loundrawさんインタビュー。「なぜ生きるのか、という悩みのヒントを見つけてもらえたら」

2021.11.12 <PASH! PLUS>

 若い女性の幽霊と3人の高校生のひと夏の出逢いを描いた映画『サマーゴースト』が、11月12日より公開されます。

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 本作品でアニメーション映画監督デビューをしたのが、弱冠26歳のloundraw(ラウンドロー)さん。10代からイラストレーターとして商業デビューを果たし、アニメ、小説、漫画など様々な表現活動を続けるloundrawさんに、作品への想いや制作過程で感じたことをお伺いしました。

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監督・loundrawさんインタビュー

――どういった経緯でアニメ映画を製作することになったのでしょうか?

 もともと絵を描く時に前後のシーンまで想像をしていたので、必然的にアニメーション制作の方向に進むのがいいのかなと考えたんです。

 その意思表示として、大学を卒業する時にアニメを自主制作しました。ありがたいことにその際にたくさんの方との出会いがあり「映画を一緒に作ってみる?」と声をかけていただいて、今回の映画製作に至りました。

――初めてアニメーション映画監督として作品を制作するなかで感じたことを教えてください。

 ディレクションが大変でした。絵を描くことは自分ひとりで完結する作業なので、どう作るかは僕が理解していれば良いのですが、アニメーションは共同作業なので、考えを共有するのが難しいですね。

 一方で、イラストレーターの経験が生きていると感じます。絵を動かすというフローに対して、1カットずつこだわりを持って制作できるので、スタッフの皆さんからはほかのアニメにない構図や色味だと言っていただけました。

――これまでと違う表現とは、特にどういった部分ですか?

 一番大きいのは色ですね。日本のアニメは明るい色味で処理することが多いのかなと思います。キャラが重く見えないし、見栄えもよくなるのですが、明るくなるほど光の表現の幅が狭くなっていくんです。

 例えば、夏の強い光を表現しようとするなら、本来は影を濃くしないといけなくなります。なので今回は、黒色の要素をうまく取り入れて、夏の話ですが明るいだけの表現にならないことを意識しています。

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――撮影もこだわっていますか?

 作画や美術の素材としての良さをなるべく活かしたいので、撮影処理は本当に必要なものを必要な分だけ取り入れることにこだわりました。それを成立させるための方法をスタッフと模索しながら進めています。

――音楽でこだわった点はありましたか?

 バックボーンも含めて毛色の違う4人の登場人物が出てくるので、全体的に音楽の統一感を持たせるよりもシーンごとに適切な音楽を作りたいと思いました。

 今回担当していただいた小瀬村 晶さん、当真伊都子さん、Guianoさん、HIDEYA KOJIMAさんの4名には、他の方を気にしないでそれぞれの音楽で自分のベストを尽くしてほしいと話しました。

――今回、安達寛高(乙一)さんが脚本を手掛けられていますね。

 中学生の頃から乙一さんの小説を読んで世界観なども好きだと周囲に話したことがありました。それを知ってか、プロデューサーさんから脚本家として乙一さんをご提案いただいて、僕としては担当していただけるならぜひ、とお願いしました。乙一さんには開発時から参加していただきました。

――そこから『サマーゴースト』の物語はどのようにできたのでしょうか?

 キラキラするだけの青春ものにしないでおこうとは決めていて、脚本開発の当初は“死”やホラーなどすこし暗い要素も入れたいと乙一さんに話していたんです。そのなかで幽霊の女の子に花火をしている時だけ会えるという設定を提案させて頂いて。

 その案をもとに乙一さんがおおまかなプロットを作ってくださったのですが、その段階でこれはすごく良い話になると思いました。プロットで人を感動させられるところがやはりすごいなあと思いましたね。

 その後も、脚本を作りながらビデオコンテにして、映像のテンポに合わせたセリフに直して……と少しずつ相談しながら進めました。文章でおもしろいものと、映像でおもしろいものは違うのでどちらもベストにしたかったんです。

 本来、脚本家の方が嫌がりそうな作業ですが、乙一さんはそこもおもしろがってくださってとても助かりました。

――乙一さんとのやりとりで印象に残った部分はありましたか?

 良いものを作るというところに熱心で、ある種僕のわがままで、ビジュアルがこうだから変えたい、と言っても「それもいいね」と受け止めてくださって。時にはひっぱってくれて、時にはアシストと、とても柔軟に対応してくだいました。

――登場するキャラクターはどのように生まれたのでしょうか?

 プロットの段階でおおまかには決まっていたのですが、そこから脚本を作るにあたって、ビジュアルも徐々にできていきました。ワンシーンだけ垣間見えるバックボーンなどは僕からも提案させていただきました。

 先にキャラクターを先に固め過ぎてしまうと、40分という時間では描き切れないので、短いお話の中でも描ける部分を考えていったという感じです。

――キャストの皆さんはどのような観点で選びましたか?

 物語に沿ったわかりやすいキャラクター性よりも、人間らしさを大切にしたいということを音響制作のみなさんに相談して候補を挙げていただきました。

 自然体の時の声が合うかを確認するためラジオも聴きましたね。そのうえで特に大事にしたのは、芯を感じられるかどうかというところでした。

 強いと思われている人でも悩みや葛藤があったり、弱いと思われている人でも実は確かな意思を持っていたり。生きるうえでキレイな一面だけではなく、誰しもが持つ影の部分も正直に描くことに意味があると思っていたからです。

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――アフレコではどういったディレクションをされましたか?

 最初に、素に近い感じで抜いてほしいというというお話をさせていただきました。セリフに対して感情をのせるというのもあるんですが、それ以上にシーンとして前後のニュアンスや演出の意図まで含めて、センテンスごとにかなり細かく説明をしましたね。

 より良いものを探りながら、シーンを細かく分けて、フレーズごとに録音することもありましたがキャストの皆さんは嫌な顔ひとつせず、付き合ってくださるので助かりました。

――アフレコで印象に残ったことはありますか?

 最初はリテイクが重なるんですが、前半3分の1くらいを過ぎたところで「このキャラはこの声だ」っていう着地点が見える瞬間がありました。

 そうなるとベースが固まるので、細かいニュアンス調整だけでアフレコが進みました。そして最後に、もう一度最初のシーンを取り直したのですが、比べると声の雰囲気が全く変わっているんです。

――表情などの動きで心掛けたことはありますか?

 目線をすごく意識しました。セリフは変わらなくても相手を見ているのか、見ていないのかで内面が違うと思うので、顔がどこを向いているかまでをコンテで描いて。キャストの方にも、絵を見ていただきながら、いま目線は相手に向かっていないので、もう少し独り言っぽく、ということもお話しましたね。

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――作品を通じて伝えたいメッセージはどのようなものですか?

 三者三様の登場人物の事情から、それぞれが生きていくことに疑問を持っているんです。そこに明確な答えはないですが、僕は生きていくうえでいろんな人と関わったり、いろんなことが起きたりすることに価値があると思っています。

 そういったことをもう一度見つめなおしてほしいという想いを込めてはいますが、それを受けてどう生きていくかは描いていません。一つの出来事をそれぞれの角度から解釈していただいて、きっかけにしていただきたいなと思います。

 この作品に強烈なメッセージを込めるのは浅はかだと思うので、そこは気を付けていた部分でもあります。

――どういった人に観てほしいですか?

 登場人物のように、どうして生きているんだろう、なぜ人生をあきらめたらダメなんだろうと疑問を持っている人に見てほしいですね。

 解決にならなくてもヒントを感じ取ってほしいですし、おこがましいですが、登場人物が生きる姿を通して勇気づけることができるといいなと。

――最後に作品に興味を持った方にメッセージをお願いします。

 幽霊に会いに行くという、わくわくする雰囲気もありながら、みなさんが予想しないような展開もあるはずです。そのなかで大切な結末を迎えるお話なので、今出ている情報から、どんな話かを想像して、ぜひ答え合わせに来ていただけたらと思います。

(撮影・文/松井美穂子)

『サマーゴースト』作品概要

【公開時期】
2021年11月12日
【スタッフ】
原案・監督:loundraw
脚本:安達寛高(乙一)
キャラクター原案:loundraw
音楽:小瀬村晶、当真伊都子、Guiano、HIDEYA KOJIMA
企画:FLAGSHIP LINE
アニメーション制作:FLAT STUDIO
製作・配給:エイベックス・ピクチャーズ
【キャスト】
杉崎友也:小林千晃
春川あおい:島袋美由利
小林 涼:島﨑信長
佐藤絢音:川栄李奈

『サマーゴースト』公式サイト
『サマーゴースト』公式Twitter

(C)サマーゴースト

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