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EXILE/FANTASTICS世界さん×タスクオーナ先生SP対談!『氷菓』『Fate/stay night[Heaven’s Feel]』の貴重な裏話も

2023.07.08 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 アニメ、漫画、ゲームなどのカルチャーに精通するEXILE/FANTASTICSの世界さんが、ご自身の「好き」を突き詰める『少年セカイのススメエンタメ道』がPASH!にて好評連載中。今回は特別に、2023年6月号に掲載された第一回目の記事を抜粋してお届けします!

 ゲストは、『氷菓』『Fate/stay night』などのコミカライズを担当されているタスクオーナ先生。実は今回が初対面ではなく、お互いがお互いの大ファンだそう。そんなおふたりだからこそできた、濃密なトークをお楽しみください♪

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▲『Fate/stay night[Heaven’s Feel]』10巻、『氷菓』14巻は現在発売中!

「先生のコミカライズがハマっていると感じるのは、原作へのリスペクトに溢れているからだと思います」【世界】

タスクオーナ(以下、タ) 記念すべき第一回のゲストに呼んでいただき光栄です。実は私が初めて行ったLDHのライブが2年前のファンタ(FANTASTICS)で、世界さんとはご縁があって何度かお話しさせていただいたものの、こうして公の場で自分の仕事の話をするのは初めて。だから、なんか変な感じです(笑)。

世界(以下、世) そうなんですよね。実は最近はずっとインド映画『RRR』の話ばっかりさせていただいていて(笑)。なので、今日は改めて先生について深くお話を聞きたいと思います。早速ですけど、漫画家になるのは小さいころからの夢だったんですか?

 全然ですよ。子供のころは普通に漫画やアニメが好きなだけでした。それが、急にころんとオタク的な物に興味を持つようになって…。

 え、何があったんですか?

 友達に「お前が好きな漫画のイラストを描いてるファンが集まる場所があるんだ」って連れていかれたのが、同人誌の即売会だったんです。で、案の定「これは大変な所に来たぞ!」って(笑)。その後、誘われるままに絵を描くようになり、なんやかんやで「本を作ってみよう、集まりに行ってみよう」という感じで同人誌を作り始めたんです。『Fate』と出会ってからは、多くの人に本を読んでもらえるようになったこともあって、公式の仕事をいただけたりもして。

 それで漫画を仕事にしようって決めたんですか?

 いや。漫画で食べていこうと決めたのは、『氷菓』のコミカライズのタイミングですかね。当時はまだサラリーマンだったから。

 それまでずっと、会社に勤めながら漫画を描いてたんですか!?

 はい。だから会社で働いて、連載漫画を描いて、同人活動も続けて…って12月は地獄で。

 仕事をふたつ抱えたまま、コミケに突入(笑)。

 本当にヤバかったですよ(笑)。

 じゃあ、『氷菓』はそれまでの経験を全部つぎ込む感じで描き始めたんですか?

 いや、逆ですね。全部捨てて入れ替えました。公式のキャラクターデザインや設定がとにかく素晴らしかったから、全部これに寄せた方がいいって思ったんです。なので、一生懸命資料を真似して描く練習をしました。

 すごいですね、その発想。

 でも、未だに似ないんですよ(苦笑)。資料を見ながらそっくりに描けるのと、生き生きと描けるのは全然違うし、「設定画にちょっと似たな」って思ってもアニメを観ると天と地ほど違う。ファンの人はアニメに近いモノを漫画で見たいはずだから、どうにかしてその気持ちに応えたいけれど…ハードルがすごく高くて。

 でも、それまでの自分のスタイルを壊して、まったく違う描き方をするって絶対に難しいですよ。

 やっぱり絵を描くときにそれぞれみんな自分の手癖みたいなのがあって、私の場合、ラフの段階から頭とか顔の比率が公式の設定画と全然違ってたんです。顔を描くときによく卵みたいな丸を描いて、そこに十字を入れて顔の向きやパーツのアタリをつけるじゃないですか。この十字の線が、設定画ではかなり顔の下の方に入ってた。眉毛から頭頂部にかけてのおでこ部分が大きくなって頭が大きくなるぶん、背が高くても幼く、可愛く見えるんです。あと自分は格ゲー世代なので以前はゴツめの線だったんですけど、アニメを観たら首の位置と柔らかさがそれまで描いてたキャラと決定的に違うことに気づいたので、線の柔らかさを意識するようになったりしました。

 今でも『氷菓』を描くときは大変ですか?

 そうですね。今も設定画を見ながら描いてます。変な話ですけど、私はコミカライズが決まってから本腰を入れて漫画に取り組む覚悟を決めた…いわば受け身の漫画家だから、昔はオリジナル作品をやっていない引け目もあったんです。しかも連載が始まった10年位前って、まだ「コミカライズ作品はレベルが低いものが多い」っていう空気だった時代。今でこそ、腕のある作家さんが本気でコミカライズをやっている作品もいっぱいあるし、著名な方がコミカライズをされることも普通にありますけど。

 確かに、僕が学生の頃はコミカライズ本を持ってる友達って少なかったけど、今は当たり前ですもんね。

 だから死ぬ気でやらないと読んでもらえないって思ったし、今も気が抜けないんです。私より上手い漫画家さんは、いっぱいいますから。ただ、この10年でひとつの作品が幅広くメディア展開すること自体が普通になってきたじゃないですか。どのメディアを通して作品と出会ったかを気にしない若い層が増えてくれた。原作小説、アニメ、コミカライズのどこから入っても純粋に作品を楽しんでもらえるようになったというか。

 昔の原作至上主義みたいな頑なさが薄れて、原作はリスペクトしつつも、いろんな方向から作品を楽しもうぜっていう感じになったなっていうのは僕も感じてます。でも、『氷菓』と『Fate [HF]』を同時に手掛けるって半端じゃないですよ。しかも『Fate [HF]』は自ら「好きだから(コミカライズを)やりたい」って名乗り出たってあとがきで読んで、「タスクオーナさんのコミカライズがハマるのって、やっぱりこれなんだな」って、めちゃめちゃ納得したんです。リスペクトに溢れてるんですよ。最初に『Fate [HF]』を読んだときなんか、『氷菓』と可愛さが全然違ってびっくりして「すげぇ!」ってなったし。この違いはどこから来るんだろうって、すごく気になってたんです。

 今もたまに言われますね。「『氷菓』のタスクオーナが、『Fate [HF]』を描いてるって知らなかった」って。そう言われると「やった!」って嬉しくなります。作品ごとに、球種を変えてることに気づいてもらえてるんだなって。そういえば、世界さんは昔から『Fate』シリーズが好きなんですか?

 そうですね。友達の兄ちゃんとか親戚とか、いわゆる年上のオタクの先輩に薦められてゲームを始めたのがきっかけでした。もともと友達と戦う話とか、親友の裏切りに恋愛が絡んでる話は好きだったんですけど、『Fate』は世界観がずば抜けてるなって感じて。

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▲穂群原学園陸上部ジャージ・間桐 桜のトップスを愛用する世界さん。

 一番好きなキャラを聞いてもいいですか?

 間桐 桜です! 僕、すっごい弱々しいか、すっごい強いかのどっちかに極端に振り切ってる子が好きなんです(笑)。間桐 桜を描くときに意識してることを聞いてもいいですか?

 描いている間、ずっと「可愛い、可愛い、お前は可愛い」って思いながら描く。

 なるほど(笑)。

 でも『Fate [HF]』の桜さんが可愛いっていうのと、『氷菓』の千反田さんが可愛いっていうのは全然違うから、「可愛い」という言葉に引っ張られて、同じ括りに入れないようには気を付けてます。

 僕、昔は漫画家になりたかった時期もあったんですけど、壊滅的に絵が下手なので原案しか無理だなって思って諦めたんですよ。

 目さえ上手く描ければ、大体上手く見えちゃうものですよ?

 なんか太字の名言みたいなのが出ましたね(笑)。でもそうか、漫画も目ヂカラが大切なのか。

 ポイントのひとつとしてですけどね。特に青年誌や少女誌は表情表現が中心になるから。でも、正直漫画を描くのに技術なんかいらないですよ。逆に、必要なものだけが後からついてくるから「全部の技術を磨かないと漫画は描けない」って考え方はしなくてもいいんじゃないかな? 描いていると、「もっとこうしたい」って欲が必ず出てきますから。あと、最初からすごいやつは誰も描けないです。だから下手でもどんどん描いて、ちょっとずつ上手くなることが大事。下手な時期にいっぱい描いて、ハートを強くした者の勝ちなんですよ!

 すごい励まされてる(笑)。

 イラストの場合は1枚の絵で全部を届けなきゃいけないけど、漫画は何コマ使ってもいいという違いもありますね。あと、髪の毛。イラストレーターさんやアニメーターさんは、髪の毛を本当に綺麗に描きますよね。アニメーターさんは、止まっていてもなびいているように感じさせる髪を描く練習をするって聞いたことがあります。形とか色じゃなくて、生きてる線というか。

 最近ドキュメンタリーとかで声優さんが取り上げられるようになって、アニメ制作の裏側の大変さが少し見えるようになってきたけど、アニメーターさんや漫画家さんのリアルも、こうやって聞くとすごい刺さりますね。

 浦沢直樹さんがやっている番組の『漫勉』みたいに、注目ポイントを解説してくれる有識者がいるといいですよね。その絵の何が大事かを解像度高く教えてくれる人というか。その人が「この線が綺麗」って言ってくれると、 視聴者は「漫画で線が綺麗なのは大事なことなんだ」って知ることができる。アニメーターさんなら、「この動きを取れる人がすごい、なぜなら…」とか、動画の楽しめるポイントをいっぱい教えてくれたら、アニメを何倍も楽しめるようになるかもしれないですね。

 そういうクリエイターさんの話、僕はいっぱい聞きたいです。最後に、コミカライズならではの漫画の描き方で意識していることを教えてください。

 私が手掛けている作品だと『氷菓』は文字を読むことを楽しめるような作りで、『Fate [HF]』は世界観やキャラクターの魅力を楽しんでもらうような作り…という風に、作品ごとにポイントにしている部分が少し違いますかね。あと、初期の『氷菓』はアニメを参考にすることが出来たけれど、今はアニメで映像化されていない部分のお話を漫画にしているので、キャラの演技と動線を考えて、場所を決めて、漫画のテンポに合わせて台詞を簡略化して…と、原作小説から漫画への落とし込み作業を自分でやらなきゃいけないんです。それがコミカライズならではの苦しみでもあり、醍醐味でもあるかな?

 その取捨選択は、めちゃめちゃ大変ですね。

 特に『氷菓』は推理もので、原作小説の米澤穂信先生がミステリーとしての完成度を大事にされています。謎を提示して、ヒントがあって、最後には解けるようになってなきゃいけない。責任重大です(笑)。

 小説を読むと、謎が解けたときにスッキリするじゃないですか。僕、あの感覚が漫画だとどうなるんだろうって思ったんですけど、漫画もメチャメチャ面白くて! 小説も漫画もどっちも面白いし、同じ作品だけど別作品にも見える。ふたつの『氷菓』がちゃんと存在してるなって感じます。

 世界さんにそう言ってもらえると嬉しいです!

 ラフとかって全部取ってあるんですか?

 必要な物は取ってありますよ。例えば『氷菓』では学生モブのキャラクターデザインも作ってるんです。ミステリーの都合上、違う人が現れると困るので「この校舎を歩くときにはこの子を使おう」とか、できるだけ矛盾がないように心掛けてます。

 漫画家さんには色んな苦労があるんだろうなと思ってたけど、想像以上でした。すごいな!

 京アニさんが本当にすごい仕事をしてらっしゃるので。私も、世界さんのダンスを見てまったく同じように感じてますよ。たとえば、友達にファンタを薦めるときは、「まずこれを観て!」ってMVを観せるんです。私には具体的にどうすごいか解説は出来ないけど、「すごくない?」って (笑)。世界さんのすごさは一目瞭然なので。“なんだかわからないけど、すごいもの”って、ある意味最強だし、感動するじゃないですか。

 すごいわかります! 僕もアニメとか漫画を見たときに、なんかわからないけど「ヤバイ! すげぇ!!」ってガーンってやられる瞬間があります。

 そこに対するリスペクトって、大事ですよね。「なにかやりたい、作りたい」って思うことの原点って、やっぱりそれが好きっていう気持ちですよね。というわけで、今年のライブも楽しみにしてます!

 僕も、先生の作品をこれからもずっと読ませてもらいます! 今日はありがとうございました。

(※PASH!2023年6月号より一部抜粋)

Text=犬飼かおり

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世界さんprofile

せかい LDH所属。FANTASTICSのリーダーで、EXILEと兼任し活動中。圧倒的なダンススキルで人気を集めるほか、オタクカルチャーにも精通しており、『劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編』では声優を務めるなど、活動の場を広げている。

タスクオーナ先生profile

漫画家。現在は『月刊少年エース』にて青春ミステリ『氷菓』のコミカライズを、『ヤングエース』にてPCゲーム『Fate/stay night』の最後のルートのコミカライズ『Fate/stay night[Heaven’s Feel]』を連載中。

©︎TASKOHNA  ©︎TYPE-MOON ©︎米澤穂信/KADOKAWA ©︎米澤穂信・角川書店/神山高校古典部OB会

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