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「可哀相な女の子は嫌」――『君のせい』に込められた”恋心”と”女心”。TVアニメ『青ブタ』OP担当“the peggies”北澤ゆうほインタビュー

2018.12.14 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

メンバーとの仲や北澤ゆうほさんの思春期時代の出来事など、盛りだくさんの話題が飛び出しました!

 10月より放送スタートしたTVアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない(青ブタ)』。本作のOP主題歌は、ガールズバンド・the peggies(ザ・ペギーズ)の『君のせい』が担当しています。

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 PASH PLUSでは、11月7日に『君のせい』がリリースされたことを記念して、the peggiesのボーカル&ギターの北澤ゆうほさんにインタビュー! OP主題歌『君のせい』の制作についてはもちろん、北澤さんの恋愛観や学生時代の思い出、“思春期症候群”にちなんで思春期時代のお話を伺いました。

――今回、the peggiesがPASH PLUSに初登場します。まずは、バンドについて伺いたいのですが、the peggiesはどのようにして結成されたバンドなのでしょうか?

北澤:中学校の軽音部のメンバーと結成したバンドで今年で結成10年目になります。中学時代は学校でコピーバンドを組んでいたんですけど、高校に入ってからはライブハウスでオリジナルの楽曲を演奏するようになりました。卒業してからインデックスバンドとしてデビューして、今はありがたいことにメジャーバンドとして活動させていただいています。

――北澤さんは現在23歳とのことですが、20代にしてバンド歴10年ってなかなかないですよね?

北澤:そうなんですよ! 先輩アーティストが結成10年のアニバーサリーライブをやっているのを見ると「私たちも同じ10年だけどまたちょっと違うな」って思うことがあります(笑)。

――the peggiesの持ち味はなんでしょうか?

北澤:学生時代から青春の全てを音楽に注ぎ込んできたメンバーであり、一緒に過ごしてきた時間・共有してきた思いが多いメンバーなので、3人ならではの独特のグルーヴ感・信頼関係が築かれていると思う。“3人だからこそやる意味があるバンド”だと思っているので、きっとライブを見ていただければその思いを感じてもらえると思います。

 メンバーとは聴いてきた音楽が違うんですけど、その代わりに「私はこういうのが格好いいと思う」、「この楽曲よかったよ」って教えあうことができる。経験や考えだけじゃなくて、新しい発見や後悔も3人のなかで共有してきました。考え方も性格もバラバラなんですけど、不思議なまとまりがあると思います。でも、3人とも別のベクトルでそれぞれを「ヤバい奴」だと思ってるんじゃないかな(笑)。

――今回、お互いが思う印象を伺えずに残念です(笑)。メンバー同士の関係性は、学生時代からの知り合いということもあり“バンドメンバー”というよりも“友達”という感じなのでしょうか?

北澤:中学校の時は“友達同士で組んだ”というよりは、“パートが違うから組んだ”という感じだったので、関係性の入り口がバンドメンバーでした。だから学生時代は友達らしい関係というよりは、バンドや音楽以外では付かず離れずな関係だった。

 お互い言っていないこともあったし、知らないこともあったんですけど、メジャーデビューする前に“3人がしっかりと繋がっていないとダメだね”っと決めてからは、お互い自分のことを言うようになり、ちゃんと友達らしい関係を築けるようになった気がします。学生時代よりはオープンな関係になりましたね。前は音楽の話ばかりだったけれど、今は趣味の話や好きなテレビの話をしたりもします。

――メンバーとの会話のなかでアニメの話をすることもあるのでしょうか?

北澤:うちのドラム(大貫みく)がアニメ好きなのでおすすめのアニメの話を聞くことがあります。私自身は、昨年『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のED主題歌(『ドリーミージャーニー』)を担当させていただいたこともあり毎週チェックしています。あと、小学校6年生の甥っ子と一緒に暮らしているので、『ヒロアカ』や『斉木楠雄のΨ難』を一緒に見ていました。

――今回、TVアニメ『青ブタ』の主題歌を担当されています。まず、本作の率直な印象っていかがでしたか?

北澤:『涼宮ハルヒの憂鬱』のように有名なタイトルは知っていたけれど、自分からライトノベルに触れたことがなかったので未知の世界であり、フラットな状況で興味を持てました。『青ブタ』は設定がとても面白くて、「よく思いつくな~」と思ったし、どんな話なんだろうってワクワクしながら読むことができました。

――本作には“バニーガール先輩”こと桜島麻衣や“プチデビル後輩”こと古賀朋絵、“ロジカルウィッチ”こと双葉理央など個性的なヒロインが登場します。北澤さんが気になる、もしくは感情移入したキャラクターはいますか?

北澤:(桜島)麻衣ちゃんと誕生日も身長も同じなので親近感が沸きました。最初に読んだ時にキャラクター性にも共感できたし、読んでいるうちにどんどん好きになりました。

――どんな部分に共感を?

北澤:(麻衣ちゃんは)とても普通の女の子。自分のパーソナルな部分にいれたくないという思いがありつつも、本当は誰かと一緒に居たいし、弱い部分を見せたい気持ちがある。そういう強いと弱い部分で揺れている感じや、絵に書いたような女の子らしさをぶつけられないプライドがある感じが好き。芸能人だけど「なんだ普通の子じゃん」って部分に魅力を感じるし、読んでいる内にどんどん麻衣ちゃんの心の中を想像するようになりました。

――メジャーシーンでバンドをやっているという意味では、ひょっとすると普通の女の子とは違った生き方なのかもしれません。

北澤:確かにバンドをやっているからこそ共感できた部分かもしれないですね。それに何かをやっている人って“自分はこうだ”という自分への意識が強いと思うし、自分にしかできないことを探して頑張っていると思う。“自分はこうでいたい”、“自分はこう見られたい”とか、“周りとは違う個性を持っていたい”と思うのは活動しているからこそ芽生えるものかもしれないですね。

――“自分はこう見られたい”という思いはいつ頃から芽生えたものなのでしょうか?

北澤:自分自身の考えは学生時代からあるタイプでした。自分はこんな風に生きたいと思う気持ちが強すぎて、周りと上手くすり合わせることができなかったんです。今はうまい具合に折り合いをつけたり、他人の価値観に興味を示せるようになったんですけど、学生時代は“自分が正義”と思う気持ちがすごく強かった。

 なぜ“自分が正義”だと思っていたのかというと、自分に対するコンプレックスが強くて、自分が自分をたてないと不安になってしまっていたんです。だから、麻衣ちゃんみたいに“自分はすごい人なんだ”と思いたい気持ちと、心の奥の方では全然自信が無い気持ちがあった。10代のころは周りの環境に対応できなくて「みんな敵!」だと思って過ごしていました。それこそ友達だけじゃなく、親も、周りの人たちも。

 エスカレーター式の学校だったので同級生はいたんですけど、自分をさらけだすことができなかったし、どこかで周りを敵だと感じていたから、本当の意味では友達が居ないように感じていて。だからこそ、ライブハウスで好きなバンドのライブを見ているときは「今、自分ここにいるな」って思える時間でした。

女の子だから“弱くて守ってあげなければいけない”と思われるのは絶対に嫌

――『君のせい』は、麻衣ちゃんの気持ちを想像して制作されたそうですね。具体的にはどのように制作されたのでしょうか?

北澤:サビの元ネタ自体はお話をいただく前からあったんですけど、お話をいただいた時に新しい曲を作ろうとして煮詰まっていた時に、ふと元ネタを思い出して。「もしかするとあうかも?」と思って引っ張り出してみたんです。そうしたらパズルがハマるみたいにぴったりきて! 歌詞に関しては「麻衣ちゃんはこんなこと言わないな」と思ったので、脚本を読み直して麻衣ちゃんに寄り添う形で書きなおしました。

 ただ、「君のせい」というフレーズ自体は元からありました。サビの頭で「君のせい 君のせい」とリフレインさせているんですけど、このフレーズが、“誰かのせいにしたいもどかしさ”とか、“誰かのおかげだって思うにはまだ未熟な青春時代の気持ち”を表すのにぴったり当てはまったと思います。

――「君のせい」というキラーフレーズは元からあったのですね! 個人的には『君のせい』を聴いたら「学生時代にもどりたい」と強く思いました。青春時代を取り戻したくなります……。

北澤:分かります……私は小学校から大学まで女子校だったので共学行きたかったなって思います。学園モノを見ると知らない世界すぎて「えっこれ本当におこるの?」ってそわそわします(笑)。それに、学校が山の上にあったので、世間と隔絶されていて。異性どころか学校以外の人との交流はライブハウスくらいでしかなかったですね。

――女子高あるあるですね。学生時代で記憶に残っている出来事はありますか?

北澤:学校が小田急線沿線にあったので、学校サボっては終点の片瀬江ノ島まで行っていたこともありました。麻衣ちゃんが1人で江の島の水族館に行ったのを知った時は「私も学生時代行ったわ」ってまた不思議なつながりを感じました。キャラの設定の部分でも麻衣ちゃんと重なる部分があったので、今回の楽曲のお話をいただけて、麻衣ちゃんとの縁ができたことは今となってはすごいことだなと思うし、嬉しいですね。

――『君のせい』の北澤さん的な聴きどころは?

北澤:サビ始まりでみんなの心を掴めたらなと思って作っているので、「君のせい」というリフレインが印象付けられればと思っています。アニメはショートバージョンになっているので1番のみなんですが、個人的には2番がとても好きで。1番は麻衣ちゃんに寄せて作っているんですけど、2番からは麻衣ちゃんであり私でもある境目の視点で書いていて、“可哀そうな女の子”にならないようにしています。

――可哀そうな女の子にならない。

北澤:私は暴力的なくらい強い人間だと思って生きていて(笑)。絶対に同情されたくないし、誰かに「可哀そう」って思われたくない気持ちがすごくあるんです。本当は強がっているだけで、そんなに強くないってことは近しい人には分かってほしいけれど、「女の子だから“弱くて守ってあげなければいけない”と思われるのは絶対に嫌」という気持ちを2番で書いています。

 あとは、ギターソロがめちゃくちゃ格好いい。個性的だけど難しくないので文化祭とかでコピーしてくれたら嬉しいです。もしコピーしてくれたら私のTwitterまで動画を送ってください(笑)。

10代の時に生えた棘を抜いていく作業が大人になること

――カップリング『最終バスと砂時計』は、『君のせい』とはまた違った恋愛観を感じました。こちらはどのよう制作されたのでしょうか?

北澤:『最終バスと砂時計』は自分自身の素直な気持ちや経験を書いた曲。私、通常の恋愛ができないことに最近気付いたんです(笑)。

 自分のなかで自分の存在が大きすぎるから、他人に興味を湧ききれなくて……もちろん人のことを好きになるんですけど、恋に戸惑うことがないんです。私と恋人が居たとして、また別の私が「彼はこう言ってほしそうだよ」、「今はこうするべきだよ」って信号を送ってくる。

 だから、恋人とは穏やかで適度な距離感は築けるんですけど、思いっきり気持ちをぶつけるような喧嘩をしたことがなくて。こういう恋愛観って詳しく話せば共感してくれる人はいると思うんですけど、3分半くらいの曲にするには難しいなって思っていたんです。なので、リード曲(『君のせい』)ではストレートな恋愛観を歌って、カップリングで本当の恋愛観を書いてみました。

――どちらかというと恋愛では踏み込まないタイプ?

北澤:踏み込まないんですよね~本当に! 悩ましくて、もはや恋愛においてコンプレックスになりつつあります。でも、こういう恋愛観を伝えると“サバサバしている”って印象を持たれるんですけど、私はサバサバしているっていう女の子が嫌いなんですよ(笑)。よほど濃い10代を送らない限り、本当にサバサバしている女の子なんていないと思うんです。だから、この曲はサバサバしている女の子の曲ではないってことだけは伝えたい。

 どちらかというと、建前でもいいからハッピーな関係でいたいから、相手にとってプラスの存在でいるために、マイナスの関係になりそうだったら心のシャッターを下ろしてしまう……そんな私の曲です(笑)。共感してくれる人がいたら嬉しいし、何かを感じてくれたら嬉しい。

――本作では“誰かの未来が見えた”、“他人の声が聞こえる”など“思春期症候群”と呼ばれる都市伝説的現象がおこります。北澤さんは思春期のころを振り返るとどんな人生を送っていましたか?

北澤:思春期の頃は周りの人間“全員敵”だと思っていたので、自分以外の全てが許せなかった。今は10代らしかったなって思えるけれど、その当時は他人が自分を壊す存在だと思っていたし、怖かった。

 高校2年生の時に仲いいグループがいたんですけど、私を誘わずにグループの子みんなで食堂に行ったんですよ。その姿を見た時に気が動転してしまって、「食堂に行くのに誘ってくれないなんて許せない……みんな嫌だ!」と思うようになって。どうせ大学行ったら男の子と関わるようになって「飲みヤバイんだよね」とかいうんでしょ?って全部が嫌になってしまって。

 クラス全員が見ているSNSで「みんな嫌いだ」って投稿してみたんですよ。そしたらみんな見るじゃないですか? 仲いいメンバーも「自分たちのことを言ってるんだな」って気づいたみたいで、次の日からどこのグルーブにも所属しない亜種になったんです。明らかに自分が悪かったので「ごめんなさい」って謝ったんですけど、友達に「失った信用は取り戻せない」って言われて。そこから2年間、移動教室もお弁当も1人で過ごしていました。

 とはいえ、そんな自分が悔しくて。最初はトイレでお弁当を食べてみたんですけど、衛生的にも良くないし「自分を可哀相に演出しているだけだ」って気づいてからは、自分が可哀相だって思う材料をつくるのは良くないと思って、そこからは教室で寝たふりをするようになりました。起きているんですけど「ああ~」とか言ってみたり(笑)。今はその時仲たがいしてしまった友達たちと仲良くなって、ご飯にいったり遊んだりしています。

 そんな風に自分が理解できないことを敵視しがちだったし、攻撃的な態度をとってしまうタイプだったんですけど、これは思春期ならではだったなって今は思います。でも、これがいけないことだったなとは思わないです。傷つけてしまった子たちに対しては申し訳ないと思うけれど、10代の時に生えた棘を抜いていく作業が大人になることなんだなって思うから。棘をなくすのと引き換えに、誰かに優しくしたい気持ちや自制心を手に入れて大人になっていくんだと思います。

――いつ頃から“大人になった”と感じましたか?

北澤:20になったことが大きかったと思います。家族とも上手く付き合えなかったんですけど、ある時「二十歳超えて親と喧嘩するってやばくない?」って思って。急に恥ずかしくなって、自分の気持ちを落ち着かせることを心掛けてみたら、そのまま普通にできるようになりました。そしたら身の回りの片づけとかもできるようになったんですよ(笑)。

 だから最近になってからですね、落ち着いて話せるようになったのは。だから、今悩んでいる十代の子はいつかできるようになるから大丈夫だよって言いたいですね。

――最後に読者に向けてメッセージをお願いします。

北澤:『君のせい』はthe peggiesらしいキャッチーさがありつつも、サウンドはそれぞれがやりたい音楽性を表現できている曲。そこに歌という大衆文化を乗せた化学反応がthe peggiesの味だと思っています。一度聴いてもらえれば覚えてもらえると思うし、共感してもらえるところもあると思うので、まずは曲を聴いてくれたら嬉しいです。そして、the peggiesを好きになってくれたら嬉しいし、ライブに来てくれるのを待っています。

 そして、みんな強く、優しく、生きることへの魅力を知ってほしい(笑)。あまり自分を可愛そうだと思わずに、自分をプラスにもっていくパワーをthe peggiesを通して届けられればと思います!

――ありがとうございました!

the peggies 3rd Single『君のせい』発売中

●通常盤CD:1,050円(税込)ESCL 5119
小山 健描き下ろしマンガジャケット
M1 君のせい
M2 最終バスと砂時計

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●期間生産限定盤:CD+DVD 1,500(税込)ESCL 5120-1
TVアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』田村里美描き下ろしジャケット・デジパック仕様
M1 君のせい
M2 最終バスと砂時計
DVD/TVアニメ『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』ノンクレジットOP映像

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ライブ“the peggies 2018冬全国ツアー~君のせいで最終バス乗り過ごしたツアー~”

席種:オールスタンディング
前売:3,500円(D代別)
一般発売日:発売中
2018年11月29日(木)大阪 バナナホール
2018年11月30日(金)名古屋 JAMMIN’
2018年12月2日(日)渋谷 TSUTAYA O-EAST
2018年12月7日(金)札幌DUCE

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