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アニメ『犬夜叉』弥勒の風穴は戦国最強の武器!? 使い方しだいで天下統一も夢じゃない!!

2021.12.04 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 先日、アニメ『半妖の夜叉姫』は第二期の放送が始まり、初回からますます目の離せない激動の展開となっておりますが、その前日譚となる『犬夜叉』はご存じでしょうか?

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 アニメ『犬夜叉』は今から約20年前に放送が始まって、2009~2010年にかけて放送された『犬夜叉 完結編』をもって完結しました。『犬夜叉』を見ずに『半妖の夜叉姫』から見始めている人は、『犬夜叉』もご覧になってみてはいかがでしょう!?

■武器が魅力的だった犬夜叉!!

 犬夜叉の持っている「鉄砕牙」は“一振りで百の妖怪をなぎ倒す”と言われる妖刀で、それと対となる「天生牙」は“一振りで百の命を救う”という癒やしの刀でした。天生牙は殺生丸の刀として『半妖の夜叉姫』にも登場しています。

 カッコイイ刀はそれだけで魂を揺さぶられるものがありますが、その他にも、かごめや桔梗が放つ「破魔の矢」、巨大なブーメランのような珊瑚の「飛来骨」など、『犬夜叉』に登場する武器は、どれも特徴的でした。

■印象深いのは弥勒の「風穴」!

 『犬夜叉』に登場した中でも、特に印象に残っている武器と言えば、弥勒の「風穴」なのではないでしょうか?

 風穴は弥勒の祖父が奈落によって穿たれた、右手のひらにある小さな穴です。普段は数珠をつけて封印していますが、封印が解かれると、ブラックホールのように周囲のものを吸い込み、巨大な敵ですら一瞬で吸収してしまいます。

 風穴は徐々に広がって最終的には自分自身が吸い込んでしまうという恐ろしい呪いでもあり、純粋な武器とは言い切れないかもしれませんが、弥勒は風穴を使って何度も犬夜叉たち一行の窮地を救っています。

 毒のある妖怪や悪い邪気を吸い込むと弥勒自身の体にもダメージがあるなど、弱点もある風穴ですが、単純な破壊力を考えると『犬夜叉』でもかなり上位の武器になるでしょう。

 風穴が強力なのはアニメを見ていれば一目瞭然です。では、この風穴はいったいどれくらい強かったのか? 吸い込むときに発生する風の強さを基準にして、具体的にどれくらいの威力になるのかを考えてみます!!

■風穴の圧倒的な吸引力を数値化してみる

 “吸い込む”といわれて一般的に思い浮かべるものといえば掃除機ですが、風穴の吸引力は掃除機どころではありません。風穴でお掃除なんてしようものなら、家どころか住んでいる町がぐちゃぐちゃになり、瓦礫の山と化してしまうでしょう。

 掃除機とでは比較にならないので、竜巻と比較して風穴の威力を数値化してみましょう。 竜巻などの突風はあまりに風が強すぎるため、風速計などを設置して風を計ることができません。そこで、1971年に藤田哲也博士によって被害から風速を推計する「藤田スケール」という基準が考案されました。

 藤田スケールにはF0~F5までの6段階が設定されており、それぞれの基準を大まかに説明すると以下のようになります。

F0「アンテナなどの弱い構造物、木の枝などが折れる」
F1「窓ガラスが割れる。横風を受けた車が横転する」
F2「家の屋根がはぎとられる。弱い建物が倒壊する。大木が倒れることがある」
F3「壁が押し倒され家が倒壊する。自動車が持ち上げられて飛ばされる」
F4「家がバラバラになって飛散する。自動車が何十メートルも空中飛行する」
F5「家が跡形もなく吹き飛ばされる。車や列車が遠くまで飛行する」

 ここで、弥勒の風穴を見てみましょう。弥勒が戦闘で風穴を解放するとシーンでは、何十体もの妖怪をまとめて吸い込んだり、大きな岩を吸い込んだり、馬小屋ごと馬を吸い込んでしまったり、ありとあらゆるものを吸引しています。

 また、設定によると風穴は、範囲は約100m、重さは700kg以上の物を吸い込めるそうです。となると、軽自動車(600~800kg)くらいは浮き上がらせることができそうです。このことから、藤田スケールにおいて、弥勒の風穴がもたらす風の強さはF3からF4くらい、範囲を加味するとF4よりと考えられます。

 F3の風は秒速70~92mで、F4は秒速93~116mとされていますから、弥勒の風穴の風はおよそ秒速90~100mほどだと推定されます。つまり、風穴を向けられたら、100m先にいても、約1秒で吸い込まれてしまいます。

ちなみに……

1時間は3,600秒なので、秒速100mは
100×3600=360000
時速360,000mで、
1kmは1,000mなので、
360000÷1000=360

となり、時速360kmになります。

 日本最速の新幹線でも時速320kmほどですから、時速360km(秒速100m)がめちゃくちゃ早いのは分かると思います。弥勒の風穴の射程範囲では、吸い込まれた物がそのくらいの超高速で飛び交っているはずです。たとえ風穴に吸い込まれずに耐えたとしても、後ろから新幹線以上の超高速で物が飛んでくるのですから、風穴を向けられたらかなり危険でしょう。

 では、風穴がもたらす秒速100mの風とはどれくらいのものなのか、過去の災害と比較してみました。すると、驚愕の事実が分かりました。

■風穴の破壊力は激甚災害級。いや、それ以上だった!

 まず、近ごろ頻発していた台風について調べてみたところ、いずれも最大風速は秒速50mほどでした。風穴の風速と比較すると早さはおよそ半分です。それでも、停電や家屋への被害などが多発して大変なことになりました。戦後、最大の被害を出したという伊勢湾台風ですら、最大風速は秒速75mと推定されており、風穴による風には及びません。

 風穴の範囲は100mと短く、普段は弥勒が数珠で封印しているため問題ありません。ですが、もしも風穴が暴走するようなことがあれば、範囲内では日本人がかつて経験したことのない暴風が吹き荒れ、大災害に至ってしまうでしょう。

■使い方しだいで天下統一も夢じゃない?

 最後に「風穴」が武器としてどれくらい有用かを考えてみます。そのためには、風穴の弱点を把握しておく必要があります。

 弱点の一つ目は、毒や邪気を吸い込むと体にダメージがあること。『犬夜叉』の劇中でも、敵の奈落は風穴対策のために「最猛勝」という毒虫の妖怪を利用しています。これは最大の弱点ですが、普通の人間を相手にする場合にはあまり考えなくてもいいかもしれません。

 二つ目の弱点が射程距離です。半径100mは支配できると言っても過言ではない風穴ですが、その外側から攻撃されると対処が難しくなります。現代のミサイルやスナイパーライフルなどで攻撃されれば、風穴ではまず太刀打ちできないでしょう。

 しかし、風穴が活躍したのは戦国時代。当時の長距離武器と言えば弓矢と火縄銃くらいです。弓矢も火縄銃も、正確に狙い打てる距離は長くて100mほどで、射程距離は風穴とほぼ互角です。

 弓矢と火縄銃は制度や装填速度の面で、風穴に対して圧倒的に不利です。また、弓矢や火縄銃は射撃時に角度をつけることで数百メートル離れた相手を攻撃することもできますが、その場合の矢や銃弾は山なりに放物線を描いて飛ぶことになるため、速度が低下します。風穴の影響範囲に入った途端に、矢や銃弾は風穴の威力に負けて吸い込まれてしまうでしょう。

 以上から、風穴は戦国時代において、正面にいる人間を相手にする限りでは無敵に近い武器だと言えます。ただし、側面や背後を弓矢や火縄銃を持った大群に囲まれ、集中砲火にあってしまったら、風穴だけでは対処できません。

 したがって、風穴を使って戦うとすれば、山城などを利用した籠城戦か、平原で戦うにしても脇と背後を仲間に守られた状態を作ることで、有利に戦闘を進められるでしょう。

 なお、平原で闘う場合、たいていの軍は密集して隊列を組みます。仮に1m間隔で密集した隊列を組んでいた場合(敵が1㎡に1人いる)、弥勒を中心にして半径100mの空間には、“100×100×3.14=31400”つまり、31,400人ほどがいることになります。そのうち、弥勒より後方の半分は味方の軍だとすると、敵は前方の15,700人です。

 100m先にいる敵を吸い込むのに要する時間が1秒なので、1°ごとに手を止めて吸い込むのを待ったとしても、たった180秒(3分)で、前方の半径100メートル圏内にいる15,700人を一網打尽にできます。天下分け目の「関ヶ原の戦い」でも、両軍の戦死者は最大で40,000人ほどだと言われています。一歩も動かずわずか3分で15,700人を倒せる弥勒なら、簡単に自軍を勝利へと導けるでしょう。

 弥勒はいずれ風穴によって自分自身が吸い込まれてしまうことを恐れ、呪いを解くために奈落を倒そうとしています。ですが、上記のような風穴の圧倒的な破壊力を思えば、自分自身の命を縮めるという代償は高いものではないのかもしれません。おそらく、天下統一を目論む戦国武将の中には、命に変えてでも弥勒の「風穴」を欲しがる人がいたのではないでしょうか。もし、そんな人間が風穴を持ってしまったら、暴力に任せた恐怖の統治が始まっていたことでしょう。

 『犬夜叉』において登場初期の弥勒は、女たらしで、妖怪退治をした際に物を盗んだりしており、小悪党のように描かれています。しかし、風穴の力を考えると、どれも、かなり控えめな悪事に思えます。風穴を悪用すれば、こそこそと泥棒なんてしなくても、欲しい物は何でも力ずくで奪い取ることができたでしょう。

 弥勒は強い法力の持ち主です。おそらく、厳しい修行を積んだはずです。不良法師のふりをしていますが、実際の弥勒は、修行で培った強固な精神力で日頃から自らの欲望を律し続けていたに違いありません。

 『犬夜叉』を観る際には、「風穴を悪用されなくて良かった……」と胸をなで下ろしながら、弥勒の行う小さな悪事は寛大な気持ちで受け流しましょう!

■参考資料
『犬夜叉』 official web
ウィキペディア:「犬夜叉」「半妖の夜叉姫」「台風」「伊勢湾台風」「関ヶ原の戦い」
Oh!軽|軽自動車の新車情報、購入ガイド、比較ランキング
気象庁webサイト
全日本アーチェリー連盟HP

※画像は公式サイトをキャプチャーしたもの。
(C)高橋留美子/小学館・読売テレビ・サンライズ 2000

文・渡辺晴陽

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