【最終回】YOUNG OF PRISM コウジ編

anime

2019.03.02 <PASH! 2019年2月号>

PASH! PLUS

キャラクターの幼少期をショートストーリー＆イラストで描く”YOUNG OF PRISM”

　PASH!２０１８年３月号から、本誌独占で『KING OF PRISM』のキャラクターの幼少期をショートストーリー＆イラストで描く”YOUNG OF PRISM”！　菱田正和監督監修のショートストーリーでは、今まで語られることのなかったキャラクターの秘密も明らかに!?

　全11回でお贈りしてきた”YOUNG OF PRISM”も今回が最終回。トリを飾るのは、音楽と料理に天性のセンスを持つ神浜コウジが登場！
　新作劇場版『KING OF PRISM -Shiny Seven Stars-』は本日3月2日公開。本連載をふまえて劇場版を観ると、二重三重に楽しめるはず！　ぜひ劇場に行ったあと、再度チェックしてみてください。

＜最終回　コウジ編＞

「ハンバァ〜グゥ〜♪　こねてこねたぁ〜らぁ〜」
　夕暮れ時、都内のマンションから楽しげな歌が聞こえてくる。歌声の正体は、かつて日本中を熱狂の渦に巻き込んだロックバンド・Lucky★Starのリードボーカル兼ギタリストのＪＯこと、神浜丈幸（みはまたけゆき）とそのひとり息子コウジだ。丈幸はバンド解散後、表舞台から姿を消し、専業主夫として家事に専念していた。
「そうだ！　いいぞ〜！　ひき肉は体温で温まらないように素早くこねるんだ！」
「はぁ〜い！」
「う〜し〜さん〜ぶ〜た〜さん〜♪　はんはん仲良く〜まぜ〜まぜ〜」
　コウジは毎晩、父と夕食を作るのが日課だ。丈幸は幼少のコウジが覚えやすいようにと、料理の段取りを歌で教えている。コウジは父と料理をする時間が大好きだった。
「お母さん、今日は早く帰ってこられるんだよね？」
「うん」
　母の奈津子は大人気ブランド・Dear Crownのマネージャーを務めており、残業することが多く、３人で食卓を囲むことはそれほど多くなかった。
「すごく久しぶりだよね！　お母さんと一緒に…、あれ!?」
　丈幸の目からポロポロと大きな涙がこぼれ落ちていた。
「お、お父さん！　どうしたの!?」
「あぁ、大丈夫大丈夫！」
「えっ？」
「これこれ！」
　小気味よくトントントントンと響くまな板には綺麗にみじん切りされた玉ねぎが。
「玉ねぎは涙をこらえて細かくみじん切りにすることが大切だぞ〜」
「うん！」
　慌ててティッシュを取り、父の涙を拭くコウジ。
「うふふ、ありがとう。それじゃあ玉ねぎを炒（いた）めようか。飴色になるまで丁寧に炒めるぞ〜」
「は〜い！」

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　コウジを台の上に乗せ、手を取って一緒に炒め始める。
「さあ、いくぞ〜」
「たまたまネギネギたまネギさ〜ん♪　へ〜らでナデナデなでましょう〜な〜でなで〜♪　な〜でなで〜よ〜しよし〜♪　よ〜しよし〜」
「少し茶色くなってきたよ！」
「よし火を少し弱めて！」
「うん」
「さ、ここからが大事だぞ。焦がさないように丁寧に丁寧に炒めるんだ！」
「わかった〜！」
「たまたまネギネギたまネギさ〜ん♪　へ〜らでナデナデなでましょう〜な〜でなで〜♪　な〜でなで〜よ〜しよしよ〜し♪」
　コウジは父の大きな手の温（ぬく）もりに心地よさと安心を感じていた。
「それじゃあお父さんは付け合わせを準備するから、コウジは玉ねぎをよろしくな」
「うん！」
「たまたまネギネギたまネギさ〜ん♪　へ〜らでナデナデなでましょう〜な〜でなで〜♪　な〜でなで〜よ〜しよしよ〜し♪」
　楽しそうに歌いながら調理するコウジ。と、そのとき、メールの着信音が鳴る。
「コウジ！　お母さんからだ！　いま会社を出たよ、だって！」
「やった〜！　それじゃあ、あと27分で帰ってくるね！」
「急ぐぞ〜！」
「うん！」
「よし！　玉ねぎを番重（ばんじゅう）に上げて粗熱を取るんだ。スピードアップするぞ！」
「わかった！」
　調理のピッチを上げる丈幸。コウジには父の姿が楽しそうにメロディを奏でているように見えた。そんな父を見てコウジの頭のなかに新たな歌が流れてきた。
「おいしいおいしいハンバ〜グ〜♪　みんなで一緒に食べましょう〜」
「えっ!?」
「あっ!!」
　偶然か奇跡か、コウジと丈幸が同時に口ずさんだ歌がまったく同じ詞、同じメロディ！
「コウジ！」
「お父さん！」
「あはははははは！」
　コウジも丈幸も偶然の一致が面白くてたまらなかった。
「ただいま〜！」
「お帰りなさい！　あはははははは！」
「ん？　どうしたの？　そんなに笑って!?」
「うふふ、それはね！」
「うふふふふ」
「なになに!?　もったいぶらないで教えなさいよ〜！」
「後でちゃんと教えるから！」
「うんうん！」
「もぉ〜！　ずるい〜！」
「おいしいおいしいハンバ〜グ〜♪　みんなで一緒に食べましょう〜」
「あははははは！」
「なーに〜!?　教えてよ〜！」
　暖かい一家団欒（いっかだんらん）の空気が神浜家を優しく包んでいた。

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