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『漁港の肉子ちゃん』二宮役・花江夏樹インタビュー「大切な人への気持ちがまたちょっと変わる作品」

2021.06.11 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 明石家さんまが直木賞作家・西加奈子の小説に惚れ込み企画・プロデュースした劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』が、6月11日(金)より全国ロードショー。本作は、漁港の船に住む訳あり母娘・肉子ちゃんとキクコの秘密がむすぶ感動のハートフルコメディ。『ドラえもんのび太の恐竜2006』(06)『海獣の子供』(19)の渡辺歩が監督を務め、アニメーション制作を圧倒的なクオリティと世界観で世界中に多くのファンを持つSTUDIO4℃が手がけています。

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 この度、本作の主人公・肉子ちゃん(CV:大竹しのぶ)の娘・キクコ(CV:Cocomi)の小学校の同級生・二宮役を演じる花江夏樹さんにインタビューを実施。さんまさんからオファーを受けて演じることとなった経緯についてや、作品の印象、これまで演じてきた役柄とは少し違う二宮を演じる上で意識した点など、たっぷりとお話を伺いました。

花江夏樹インタビュー

――本作に参加するに至った経緯を教えてください。

 事務所経由で「さんまさんがプロデュースする作品でオファーをいただいたんがあるんだけど」と聞いたのが最初です。資料をいただいた際に感じたのは、STUDIO4℃さんによるある錆びっぽい絵と、ちょっと寂れた港町のノスタルジックな雰囲気の良さですね。こういう作品がすごく好きなので、「ぜひ参加させてください」とお受けしました。

――原作は最初から知っていたのでしょうか?

 いえ、オファーを受けてから原作の小説や台本を読んで、「どんなアニメになるのかな」と想像を膨らませました。原作から肉子ちゃんは「こんな人は存在するんだろうか?」と思うくらいすごくパワフルで、映像になったときにどのくらいインパクトが出るのか楽しみでした。それを超えるくらいの画力と、大竹(しのぶ)さんによる芝居がすごくいいですよね。

 名前も「肉子ちゃん」ってなかなか女性にはつけないし(笑)。それを感じさせない明るさが彼女にはありますけど。かなり悲愴な目に遭って、騙されたりもしているけど、人としての大切なものはちゃんと持っています。それを信じて進んでいる明るさがいいところですし、自分もそういったことを日常生活で大事にしていきたいなと思いました。

――最初に台本を読んだときの印象を教えてください。

 港町を中心に繰り広げられる親子愛というか、人と人の気持ちの揺れ動きが重要な作品だと思いました。肉子ちゃんとキクコの会話が面白かったりとか、なにげないやり取りでクスっと笑えたりするところがあります。でも最後にはどんでん返しもあって、物語に登場するフィールドは狭いのですが、そのなかでちゃんと世界が広がっていると感じました。

――作品では“家族”や“命”、“生きる”といったことが描かれていますが、花江さんに一番響いたテーマはなんでしょうか。

 子どもが生まれたばかりなので、またちょっと感じ方が違うなと。親目線に立って作品を見たことがなかったので、今回はかなり肉子ちゃんに感情移入したというか(笑)。彼女にとってのキクりん(キクコのニックネーム)、キクコから見た肉子ちゃんっていうのが今までよりわかるようになって、序盤からウルっときちゃいました。

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――では、ご自身が演じた二宮の印象はいかがでしょうか。

 二宮は物語の本筋にかかわってくるようなキャラじゃないんですよね。キクコと色々会話をするなかで、キクコにとっての大切なものを思い出させるような、導いてあげるようなキャラクターです。結構不思議な子で、「会話をしているようでしていない、自分の言いたいことを一方的に投げかけて会話を進めるような子」という監督からのディレクションがあり、それを意識して演じました。たぶんこの作品に出てくるキャラクターのなかで、一番声が小さいんじゃないかな……声優だけど……(笑)。

――二宮に共感したところはありますか?

 僕自身、じっとしていられないことがあるんですけど、二宮も変顔をしたりそわそわしているんですよね。あとは1人の世界を持っているところ。彼はミニチュアを作っていましたが、僕も小さいころに何かに集中して没頭していたので「そういうのあったなぁ」という気持ちになりました。二宮は髪の毛を目が隠れるくらい伸ばしているのですが、人と接するのがあんまり得意じゃないところからきているのかな? 今はそんなことはなくなりましたけど、僕も小さいころは人見知りだったので共感できるなと思いました。

――二宮はこれまでの花江さんが演じてきたキャラクターとは少し違う喋り方や声の出し方をしていますが、どういったことをイメージされましたか?

 この作品は大竹さんとCocomiさんがメインなので、声優としての技術をあまり使わない、どちらかといえば実写に近いお芝居でやるんだろうなと思っていました。二宮はあんまり作り込まず、ただそこに立って喋っているイメージです。普段人が喋るときって、いい声を出そうとか思わないじゃないですか。小学生なんてなおさら気が抜けているときはだらだら喋ると思いますし。そういう技術的なことよりも、口から自然に出た言葉の方がいいかなと思い、アフレコに挑みましたね。

――二宮が方言のような喋り方をするシーンがありますが、方言の指導などはあったのでしょうか。

 最初にどこの方言なのか、ガイド音声があるのか、指導の人がいるのか聞いたんです。でも厳密にどこの方言だっていうのはないらしくて、わりと標準語で語尾だけ方言っぽく変えるように指示がありました。だからそんなに大変ではなかったですね。どこかが元になっていると忠実にしなきちゃいけないので(笑)、あくまでフィクションのなかの方言ということらしいです。

――普段なかなか共演する機会がない方も多かったと思いますが、共演者のなかでどなたの名前に一番驚かれましたか? また、共演しての感想をお願いします。

 やっぱり大竹さんですかね。共演するシーンは肉子ちゃんと二宮がすれ違うくらいで、会話はしていないですが。アフレコで一緒になったのはCocomiさんだけですね。全部はできなかったですけど、会話するシーンでご一緒することができました。Cocomiさんは声がすごくきれいで、キクコのまだ成長の途中の未完成な感じとマッチしていました。昔声優さんになりたかったことやレッスンも受けていたのも知っていたので、それをふまえて「良かったね!」という別の意味での感動もありました。何度かお会いしたことがあったので、まさかこういう形で共演できるとは思わなかったです。

――今回、下野紘さんもトカゲ、ヤモリ役で参加されています。出演のきっかけは、お2人でさんまさんの番組に出演したことだそうですが、何か話されたことはありますか?

 事務所経由で「下野さんの出演が決まりましたよ」と聞いて、別の現場でお会いしたときにその話はしました。役の声を聞いたのは映画が完成してからですね。要所要所で喋るヤモリは、物語のなかでかなりいいアクセントになっていると思います。

――最後に、映画を楽しみにしている方へのメッセージをお願いします。

 家族や友達、恋人同士でも楽しめますし、幅広い世代の方に見ていただきたいです。見終わった後に、自分にとっての大切な人への気持ちがまたちょっと変わる作品だと思います。肉子ちゃんのパワフルさをぜひ映画館で見て、元気をもらって欲しいです。楽しみにしていてください。

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(取材・撮影/山口美季、構成/米田果織)

作品情報

■劇場アニメ映画『漁港の肉子ちゃん』
企画・プロデュース:明石家さんま
原作:西加奈子「漁港の肉子ちゃん」(幻冬舎文庫 刊)
監督:渡辺 歩
キャラクターデザイン・総作画監督:小西賢一
脚本:大島里美
音楽:村松崇継
主題歌:稲垣来泉「イメージの詩」 作詞・作曲:吉田拓郎編曲:武部聡志
サウンドプロデュース:GReeeeN (よしもとミュージック)
エンディングテーマ:GReeeeN「たけてん」(ユニバーサル ミュージック)
アニメーション制作:STUDIO4℃
配給:アスミック・エース
製作:吉本興業株式会社

出演:
大竹しのぶ
Cocomi
花江夏樹
中村育二
石井いづみ
山西惇
八十田勇一
下野紘
マツコ・デラックス
吉岡里帆

公式サイト:29kochanmovie.com
公式twitter:@29kochanmovie

©2021「漁港の肉子ちゃん」製作委員会

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