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TVアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 3』脚本・冲方 丁×深見 真×吉上 亮インタビュー! 脚本作りや灼&炯についての秘話も

2019.11.08 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 TVアニメ『PSYCHO-PASSサイコパス3』より、脚本を手掛ける冲方 丁さん、深見 真さん、吉上 亮さんら3名の脚本陣のインタビューが到着!

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 脚本づくりの舞台裏や、新キャラクターの魅力、作品に対する想いなどを熱く語ってくれた。

『PSYCHO-PASS サイコパス 3』脚本家座談会 冲方丁(シリーズ構成・脚本)× 深見真(脚本)× 吉上亮(脚本)

――『PSYCHO-PASS サイコパス 3(以下、PP3)』の脚本は3人の作家による共作ということになりますが、どのように脚本づくりは進められたのでしょうか。

冲方:プロデュースサイドや塩谷(直義)監督から、今回のキャラクターを全部新規にして、時間軸をどこ(劇中の時間は第二期から6年後の2120年)にする、といった具体的な注文がありました。それを受けてシリーズ構成を組みあげて、おふたり(深見、吉上)に脚本を書いていただいたというかたちです。

深見:冲方さんと塩谷監督のコンビネーションが良くて。まず、ふたりの中で出来上がっている感じがありました。冲方さんが組み上げられたシリーズ構成がすごく緻密で。こんな緻密な構成は見たことがない! というレベルのものだったんです。そこで僕が最初にやった仕事は「そのシリーズ構成から柱(エピソードのテーマ)を立てて、ハコ書き(シーンの具体的な要素をまとめる)にしてください」というものでした。

冲方:深見さんはさすがだな、と思ったのは僕が投げた球を、曲げて返してくるんですよ(笑)。シリーズ構成にはいないキャラが、足されて返ってくる。たとえば、小畑ちゃん(ファースト・インスペクター梓澤廣一の協力者である小畑千夜)は深見さんだから生まれたキャラクターです。深見さんの変化球がおもしろいから、こちらもさらに曲げて返す。

深見:僕らのシナリオ作業を見て、もっとおもしろくしてやろうと冲方さんが後半のシリーズ構成をさらに書き換えるんです。

冲方:ここぞとばかりにふたりが変化球を投げてくるので。良いリズムで脚本作業ができたと思います。時間はかかったけれど。

深見:冲方さんがおつくりになったシリーズ構成やプロットを読んだときはびっくりしたんです。どこを切っても新しい『PSYCHO-PASS サイコパス』なんです。ビフロストの登場、インスペクターたちの設定。全員がちょっとずつ事件に加担していて、誰も犯罪者と自覚していない仕掛け……。おもしろいものになっていると思います。

――吉上さんは『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System Case.1 罪と罰』で脚本に初参加、そして今回TVシリーズの脚本に初参加ですね。

吉上:僕は中盤の話数を担当していたのですが、プロットの段階でみんながどんどんアイデアや要素を盛り込んでいくので、脚本がものすごい文字数になってしまって。

冲方:それは吉上さんのクセだよね。何を書いても、すごいボリュームに仕上げちゃう。

深見:吉上さんの脚本は、どちらかと言うと小説なんですよ。

冲方:わかる! 僕もアニメの脚本を書き始めたころはそうだった。

吉上:冲方さんに脚本の修正を細部の細部まで入れていただき、すごく鍛えられました。

――主人公の慎導 灼、炯・ミハイル・イグナトフは、どういったキャラクターでしょうか。キャラクターの特徴や魅力を教えてください。

冲方:最初に塩谷監督、プロデュースサイドから「キャラクター総とっかえ」という話があって、その中で「監視官はバディふたり」で考えてきてほしいと依頼されて。「監視官のバディもの」で「片方が入国者で、ふたりは幼なじみ」「身長差がある」というのも最初から決まっていたと思います。そこから僕が心理担当と戦闘担当のコンビはどうだろうと考えて、メンタリスト(心理分析者)と軍事経験者のバディを提案しました。

深見:最初にホン読み(脚本打ち合わせ)に参加したら、いきなり冲方さんから「深見さんの書いた慎導 灼と炯・ミハイル・イグナトフを見たいから、第1話を書いてみてください」と言われたんですよ(笑)。灼は一見、ふにゃっとしているけど頭が良い。へらへらしているけど正解をすぐに見つけて、そこへ走っていく。最初は苦労しましたね。

冲方:下手をするとイヤみな奴になっちゃうんです。

深見:最初は「イヤみな奴に見えても良い」と冲方さんもおっしゃってましたよ。

冲方:しらずしらずのうちに会話をリードして、自分の有利な方向に持っていくキャラクターですからね。

吉上:人たらしなんですよね。そういう意味では一番刑事っぽいかもしれない。

冲方:犯罪者と仲良くなってべらべらしゃべらせて、そして逮捕するっていう良い刑事ですね。

――『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズに参加するおもしろさをお聞かせください。

深見:僕はもともと冲方さんの小説をがっつりと読ませていただいていて。『マルドゥック』シリーズ、『シュピーゲル』シリーズ、そして時代もの……そんな方とご一緒させていただくだけでも刺激になりますよね。頭の良くない言い方になりますが「頭が良い方だなあ」と(笑)。冲方さんと打ち合わせをすると、自分の頭もフル回転させないといけない。この打ち合わせを経たあとだと、脚本の見方が変わるような刺激的な現場だったと思います。

冲方:『PSYCHO-PASS サイコパス』の現場にいると、「クリエイターってみんな頭がおかしいんだな」と思いますね(笑)。もちろん誉め言葉なんですが、第一期を手掛けた虚淵(玄)さんも、深見さんも、吉上さんも、みんなどこか普通じゃない。だから、楽しいものができるんだなと思いますね。

吉上:僕は10代のころから、冲方さん、深見さんの作品を愛読してきて。おふたりからの影響をすごく受けているんです。自分自身にもすごく大きな成長の機会になりましたし、深見さんがおっしゃるように脚本の読み方が変わりました。日本SFエンタメの先端で活躍する作家が集まって、本当にすごいTVアニメがつくられているんだぞ、「みんな、見てくれ!」と断言できる現場でした。

<profile>

■冲方 丁(うぶかた・とう)
 小説家、漫画原作者、脚本家。日本SF作家クラブ会員。『PSYCHO-PASS サイコパス 2』のシリーズ構成・脚本を担当。『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、『天地明察』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞などを受賞した。アニメ『攻殻機動隊ARISE』シリーズ構成・脚本、『HUMAN LOST 人間失格』ストーリー原案・脚本を手掛ける。

■深見 真(ふかみ・まこと)
 小説家、漫画原作者、脚本家。『PSYCHO-PASS サイコパス』のTVシリーズ第一期で脚本家としてデビュー。以来、小説家としてだけでなく多くのアニメ作品に関わる。『revisions リヴィジョンズ』ではシリーズ構成を担当。自身が漫画原作を手掛ける『魔法少女特殊戦あすか』のアニメ版も自らシリーズ構成を担当している。

■吉上 亮(よしがみ・りょう)
 小説家、脚本家。日本SF作家クラブ会員。日本推理作家協会にも所属。『パンツァークラウン フェイセズ』で作家デビュー。『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズではスピンオフ作品『PSYCHO-PASS ASYLUM』(全2巻)、シリーズの過去を描く『PSYCHO-PASS GENESIS』(全4巻)を執筆。新作として『泥の銃弾』を上梓。

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DATA
■『PSYCHO-PASS サイコパス 3』

公式サイト:http://psycho-pass.com/
公式Twitter:@psychopass_tv

ON AIR:2019年10月~フジテレビ“ノイタミナ”にて毎週木曜日24:55~25:55拡大枠にて放送
配信:Amazon Prime Videoにて日本・海外独占配信

STAFF:
監督=塩谷直義
シリーズ構=冲方 丁
脚本=深見 真、冲方 丁、吉上 亮
キャラクター原案=天野明
キャラクターデザイン・総作画監督=恩田尚之
色彩設計=鈴木麻希子
美術監督=草森秀一
3Dディレクター=大矢和也
撮影監督=村井沙樹子
撮影視覚効果=荒井栄児
編集=村上義典
音楽=菅野祐悟
音響監督=岩浪美和
オープニング・テーマ=Who-ya Extended『Q-vism』(SMEレコーズ)
エンディング・テーマ=Cö shu Nie『bullet』(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)
アニメーション制作=Production I.G

CAST:
慎導灼=梶 裕貴
炯・ミハイル・イグナトフ=中村悠一 
雛河 翔=櫻井孝宏 
廿六木天馬=大塚明夫 
入江一途=諏訪部順一 
如月真緒=名塚佳織 
唐之杜志恩=沢城みゆき 
霜月美佳=佐倉綾音 
ドミネーター=日髙のり子
法斑静火=宮野真守 
代銀遙煕=中 博史 
裁園寺莢子=田中敦子 
小宮カリナ=日笠陽子 
ラウンドロビン=森川智之
梓澤廣一=堀内賢雄 
小畑千夜=矢作紗友里
狡噛慎也=関 智一 
座伸元=野島健児 
須郷徹平=東地宏樹 
六合塚弥生=伊藤 静 
花城フレデリカ=本田貴子 
常守 朱=花澤香菜

©サイコパス製作委員会

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