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【PASH!×キズナイーバー特別コラボ企画】岡田麿里&TRIGGERプロデューサー対談公開!

2016.03.12


PASH! PLUS

岡田麿里&プロデューサー大塚雅彦が「キズナイーバー」制作秘話を語る

(C)TRIGGER・岡田麿里/キズナイーバー製作委員会

PASH!2015年11月号に掲載されたスタッフインタビューを期間限定公開。 脚本・原作の岡田麿里氏と、TRIGGERプロデューサー大塚雅彦氏に「キズナイーバー」の企画の立ち上げや、作品の内容についてたっぷり語っていただきました。

 

ナイーブな少年少女の
キズナを描きたい

——まず初めに、『キズナイーバー』というオリジナルアニメを作るに至った経緯を詳しく聞かせてください。

大塚 2012年のTVアニメ『ブラック★ロックシューター』(以下、『BRS』)にトリガーも制作協力で携わり、岡田さんとご一緒させていただいて。やっぱり岡田さんの書く話がすごく面白かったので、トリガーでもぜひ何かやりたいなと社内でも言っていたんです。それでうちのプロデューサーの堤(尚子さん)がオファーしたところ、岡田さんからも「やりましょう!」と乗ってもらえたんですよね。何がいいだろうって最初はそれぞれアイディアを出し合いました。そこで岡田さんから『キズナイーバー』の案を出していただいたんです。

岡田 トリガーの今石(洋之)さん(『天元突破グレンラガン』、『キルラキル』監督)とか、堤さんとかがいて、面白い場でしたね。ジャンルの制限なくみんなで企画を出し合って。大塚さんの案は、「特攻隊」でしたよね?

大塚 そうでした(笑)。岡田さんからはほかに「地獄もの」が出たんですよね。

岡田 ちょうどその頃、地獄がマイブームで(笑)。結局それらはいつかやりましょう、ということになって。

大塚 それで最終的にこの企画に決まりました。3年前くらいですかね? そのときはアニプレックスさんはまだ参加していなくて、まずは企画を立ち上げてどこかに持っていこうよ!ってノリでした。そういう作るアテがはっきりしていないところから企画するというのも珍しいんですよね。トリガーも創設1年目くらいだったので、色々やっていこう!という空気があったんです。当時『キルラキル』もまだ準備中で、自社のオリジナルタイトルは作っていない状況でしたからね。でも、だからって満を持してとか気負った感じでもなく、着実にコツコツ積み上げていって。

岡田 途中、待機時期もあったりしまして、再始動したのは『キルラキル』が放送された2014年頃からでした。

——『キズナイーバー』はどのように生まれたのですか?

岡田 ここ数年、„絆”という言葉が世の中のキーワードになってきているんじゃないかな、と思っていて。でも、絆にはいろんな捉え方があるよなぁ、と考えました。普段の人間関係、例えば家族や友情とかももちろん絆ですけど、仕事で同じ苦境や闘いを乗り越えると「絆が強くなったねぇ!」って感じること、あるじゃないですか。同じ苦しみ、同じ気持ちを共有して、「つながる」ことができる。そういう絆もありますよね。そんな„共有”を無理矢理させられてしまう少年少女の話が観てみたいなと思いまして…。

大塚 タイトルも初めからついていましたよね。

岡田 読んで字のごとく„キズナ”と„ナイーブ”をくっつけました。今回は、内容よりも先にタイトルをつけたんです。ちょうどその頃『アオハライド』って作品がやっていて。「タイトル、カッコいいな!」と思って(笑)、言葉と言葉をくっつけるところから入りました。„ナイーブ”って、英語ではマイナスな意味だけど、そしたら
„傷”と„ナイーブ”がつながるかも!って。で、そこに„キズナ(絆)”の要素が入って。この設定なら、普通だと生まれない人間関係が描けると思ったんです。

——大塚さんは、岡田さんから『キズナイーバー』の設定を聞いたとき、どう思われましたか?

大塚 タイトルもそうなんですが、今どきのアニメっぽい!と。トリガーはおじさんのアニメーターが中心でやっていたので、社内で出るアイディアが昔風というか、いつの時代だよ!というものが多いんです(笑)。だから、今のアニメってやっぱりこうだよな、これは我々には発案できないなとすごく思いました。

——作品のテーマはなんでしょう?

大塚 1つに絞るのが難しいですが…。

岡田 結局のところ、本当の意味で人は他人の痛みを知ることができるのか? 他人のことを自分のことのように思うことは可能なのか? そういったコミュニケーションの話だと思います。それを表現する手段はワイルドですけど(笑)。

トリガーがつくる
“今っぽい”アニメに

——小林 寛監督は、本作で初めて監督をされるんですよね?

大塚 はい。立ち上がりの経緯から、スタッフも若い人でやったほうがいいというのは、頭のなかにありました。小林さんは『BRS』や『キルラキル』で絵コンテ、演出を1話ずつ担当してもらっていて、周囲でも評価が高かったんです。いつか監督をやる人だなとは思っていて、今回自然と候補に挙がりました。作品のテイストにも合いそうだと感じたので、それでオファーさせていただきました。

岡田 小林監督は真摯で真剣な方ですよね。年下の監督とご一緒するのはこれまでにあまりなかったんですけど、すごく頼りがいがあります。

大塚 彼は年齢の割にけっこう落ち着いているんですよ。

岡田 そうそう。気になるところを仰るときも、なんというか社会人経験があるな!って感じです(笑)。

大塚 ガハハ!って笑うこともなく、急に熱くなることもなく、常にクール。だけど、とても話を掘り下げてくる。

岡田 質問してくる内容が、すごくストーリーを読み込んでくれているなという印象を受けます。こちらの想いも汲んでくれますし。いろいろ考えて咀嚼して、そこから道を探す方なので、とても誠実だなと感じます。

大塚 NGなことはハッキリ言ってそこは譲らない、というところもありますが、なんでもかんでも自分の思いどおりにしたいということは全然なくて。

——キャラクター原案の三輪士郎さんやキャラクターデザインの米山さんは、どのように起用されたのですか?

大塚 先ほど„今っぽいアニメ”と話しましたけど、そういう意味ではキャラ原案は、社内の人じゃないほうがいいかなと思ったんです。それで、社外でこの作品で…と考えたら、今なら三輪さんだ、と早い段階で自然とお名前が挙がりました。実際に上がってきたキャラクターの原案を見て、今までやったことのないテイストだったので、すごく新鮮でした。

岡田 三輪さん独自の空気がありますよね。

大塚 それからアニメの設定画として仕上げる際に、絵に関して若手では米山だなあと。作品のテイストにも間違いなく合う気がしていましたし、同世代のなかでは飛び抜けてうまいですからね。

——本作はトリガーとして新境地だと思いますが、意気込みは?

大塚 オリジナルのTVアニメシリーズという意味では『キルラキル』の次になりますからね。注目していただいた作品の後を若手中心でやるというのは、現場もかなりプレッシャーがあるんじゃないかと思います。私としては、任せるところは任せたいと考えているので、頑張れ!という気持ちです。ただ、やり始めるとどこまでも突き進んでしまうメンバーでもあるので、やらせてあげたい気持ちと、でも抑えなきゃいけないもどかしさが…。アニメーションには予算もあるし、スケジュールもありますからね(笑)。

——トリガー作品の特徴として、キャラクターがよく動いてバトルも激しいという点がありますが、本作にはバトルシーンは入りそうでしょうか?

大塚 どちらかと言うと人間ドラマというか、キャラクターの感情の起伏を見せる作品になっています。

岡田 当初は、戦うシーンもメインに据える予定だったんです。自分が受けた傷をほかの人と分け合うことで、ダメージが減るぶんまたもう少し戦える。それでも傷は全員分が蓄積されていくので、最終的にそれがいっぱいになってしまったらみんな一気に死んでしまう、といった構想でした。だけど監督やみなさんの意見を伺うなかで、感情を描くことをメインに移行することになりました。

大塚 それだけに日常芝居が大事にはなってくるかなと。ある意味『キルラキル』のようなアクションよりも、きちんと日常を描くほうがアニメーションとしては難しいので。派手さはないかもしれないですけど、キャラクターを動かすという意味では、やっぱりスタッフの能力が問われる作品になるかと思います。

——この作品で、トリガーらしさはどのように出していきたいですか?

大塚 トリガーらしさっていうのがあるのかどうかも分からないですけど、基本的に作品は監督はじめスタッフのものだと思うので、彼ららしさが出ればそれがイコール、トリガーらしさになっていくのだと思います。スタッフを信頼していますので、出来上がってくるものは間違いないと確信しています。現場では作画が始まったばかりですが、今から完成が楽しみです。

物語の派手さより
キャラ同士の関係性を

——『キズナイーバー』を制作する際に、大事にしているところや苦労されているところは?

岡田 シナリオ作りに関しては、かなり私のやりやすいように、自由にやらせてもらっていて、すごくありがたいと思っています。実は今回、プロットの段階を飛ばしてもらっているんです。作業的な話になりますけど、例えば感情の描写って、セリフだけじゃなくてシーン構成に拠るところも大きいんですよ。このシーン構成の順番だといいけど逆だとダメ、とか。でもそのバランスってプロットの段階では、どうしても微妙なニュアンスが出せなくて、その時点では決められないんです。それなのに一旦書いてしまったらその後の調整は進行上難しくて、今度は割とそこに囚われちゃうところもあって。今回は具体的なシナリオになるまで任せてもらえているというのが本当にありがたい。書き上がったあとみんなの意見をもらってどんどん膨らんだ結果、大きな修正も必要になりますけど、それでもあらかじめストーリーやキャラクターの細かいニュアンスは絶対出しておいたほうがいいんです。苦労するところでもあるんですけど、本当に楽しくって。この作品に携わって、「ああ、お話を考えるのって楽しいなあ」ってしみじみ思っています。お話=あらすじって思われがちですけど、アニメを観ていると、キャラクターの感情の動きとか、キャラクター同士のかかわり方とか、そういう微妙なニュアンスのところが目立っていたりしませんか?先に枠だけきっちり作っていくやり方では見えないそういったストーリーを、どれだけ入れられるか。この作品ではそこに前向きに取り組んでいます。

——そこがまさに、岡田さんが描きたいと考えている部分の1つなんですね。

岡田 ええ。登場人数は多いですが、1人ひとりの感情を掘り下げる話にしたい。キズナ実験で強制的に結ばれたといいながらも、どんどんキャラ同士の絆がつながっていく。つながりすぎたことでほころびが生まれる…派手な出来事でなく、この子たちの„傷でつながっている”という人間関係を描きたいです。なので、キャラクター個人はもちろんなのですが、同じくらい
„この組み合わせが気になる”っていう関係描写も多いです。例えば千鳥と天河。ここは普通の恋愛話なら、フィーチャーされないところです。やっぱりストーリーは、メインのキャラを中心に書きますからね。でも今回は群像劇なので、本来1クール作品では描けないような、キャラクター同士の色んな矢印とか組み合わせとかをいっぱい入れたいと思っています。人間関係って、対する相手によって微妙にその人の性格というか、態度が変わるじゃないですか? 自分では特別意識していなかったとしても。だから多少キャラぶれに見えたとしても、そのあたりはちょっとだけリアルめに描きたいです。

——ほかにどんな組み合わせが気になっていますか?

岡田 由多と牧のシーンなんかは、書いていて楽しいんですよね。由多の駄目な感じが一番出るので。あとは日染と仁子っていうのも多くはないんですけど、個人的には掛け合いが楽しい。この2人は、重要視しているピントがズレているコンビなんです。恋愛っぽい組み合わせ、友情っぽい、一緒にいて素が出る…、そういう関係性がたくさんあると思うので、そのあたりを楽しみにしていただけるとしいなあ。

大塚 普通だったらこの2人はあまり話さないな、って組み合わせがあると思うんです。でもここでは強制的に結びつけられたことによって、普段なら会話が発生しないようなところがつながる。そういった見せ方は、確かにこの作品の面白さだと思います。

——キャラクターについても伺わせてください。

岡田 主人公の勝平は、痛みが主軸に置かれたこの世界で、肉体的にも精神的にも痛みに鈍いので、少し異質に見えると思います。でも、そこから生まれるドラマがあるんじゃないかなと。というのも、作品を作るときに主人公は普通じゃない子にしたいという想いがあるんです。主人公って感情移入しやすくて、どちらかというと普通な子が一般的。でも私は、感情的に重なる部分はありながら、作品ではどこか異端な感じがあるくらいが好きなんです。

——制作秘話などがあればぜひ!

岡田 由多のキャラクターデザインは最初、前髪がもっとM字型のようになっていたんです。でもそれだと彼のコミカルな面があまりに際立ってしまっていて…。そのときは女性陣一丸になって、「もうちょっとだけ分け目をズラしてください!」と全力でお願いしました。あのときの女性陣には一体感があった(笑)。

大塚 打ち合わせも、女性がけっこう多いですからね(笑)。

岡田 あとは、天河のシャワーシーンを入れないとな、とは思っています。多分、髪を下ろしたら相当カッコいいと思うので。Tシャツをガバッと片手で豪快に脱ぐ描写とか!(笑)

——ぜひお願いします! 本作の情報解禁はPASH!11月号からということで、嬉しい限りです。こういった情報の出し方は、トリガーとしても新しい試みではないでしょうか?

大塚 そうですね。仕掛け人はアニプレックスのプロデューサーさんです。こちらとしてはちょっと驚きましたけど、そういう意外な打ち出し方も、うちだからいいんじゃないかと思ってくれたのかなと。読者のみなさんがビックリしてくれると嬉しいです!

——10月号の次号予告も「堂々解禁!!」の文字だけでした。

岡田 そんなアオリがあったとは…、すごいです(笑)。

——最後に読者のみなさんへ、メッセージをお願いします!

岡田 女性視聴者の方って、キャラクターそのものを愛でるというよりは、そのキャラクターから生まれる関係値を大切にされるなとすごく思うんです。私も作品を観るときには、そういう部分が一番魅力に感じるので、そこを重視して書いていきたいと思っています。女子キャラクターたちと絡むことでさらに花開く男子たちの魅力も満載ですので、ぜひ注目していただければ!

大塚 シナリオを読んでいて感じるのは、やっぱりこれまでのトリガー作品と違って、感情の機微が繊細だということ。キャラクターたちの感情がとてもリアリティを持って描かれています。若いスタッフ中心ですが、能力のある人たちなので、彼らが存分に力を発揮できる環境を作ろうと励んでいます。会社としては、トリガーってどうしても男性スタッフの方が多く入社する傾向があって…。この作品をきっかけにその比率が半々ぐらいになってくれたらなと(笑)。女性ファンからの反応がどのくらいあるのか、期待しています。どうぞよろしくお願いします!

<PASH! 2015年11月号掲載/text:鈴木 杏(ヴァーンフリート)>

キズナイーバーHP  http://kiznaiver.jp/

 

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