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平成アニメの”バディもの”といえば? 『Fate/Zero』『まどマギ』『あの花』など平成のアニメを振り返る『平成アニメ備忘録』第23回

2020.06.16 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 平成30年分のTVアニメを振り返る『平成アニメ備忘録』シリーズ! 今回は平成23年(2011年)のアニメを振り返ります。

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 この年は、“不条理な”日常がシュールに描かれた『日常』、緻密な伏線と魅力的なキャラに心捕まれた『STEINS;GATE』、中村春菊によるボーイズラブアニメ『世界一初恋』、『オルフェ』や『マジLOVE1000%』が大流行した『うたの☆プリンスさまっ♪ マジLOVE1000%』、時に笑いあり時に百合ありな日常アニメ『ゆるゆり』、「侵略にきたでゲソ!」イカ娘ブームが起こった『侵略!?イカ娘』。

 さらに、『Fate』シリーズ始まりに至る物語『Fate/Zero』、“友達が武器になる”衝撃の展開に痺れた『ギルティクラウン』、亜豆ちゃんみたいな女の子に憧れるよね『バクマン。』、「きっと何者にもなれないお前たちに告げる」“家族”をテーマに描かれた『輪るピングドラム』などが放送されました。

 今回は、数ある平成23年に放送されたTVアニメのうち3作をご紹介します!

「僕と契約して魔法少女になってよ」――平成アニメ史に残る衝撃の”魔法少女”ストーリー『魔法少女まどか☆マギカ』

 『魔法少女まどか☆マギカ』は、シャフト制作によるダーク・ファンタジー作品。2011年にアニメ化され、2012年には総集編が劇場公開され、2013年には完全新作が劇場公開されました。

 2011年、本作に度肝を抜かれた方は多いはず。何と言っても『ひだまりスケッチ』の原作を手掛ける漫画家・蒼樹うめさんが原案担当の可愛い“魔法少女”たちが登場する作品、放送前に公開されたポップなキービジュアル、キュートなマスコットキャラクター(キュウべえ)……何もかもが可愛らしく、「今期の癒し系枠は『まどマギ』だな」なんて思っていた方も多いのではないでしょうか? 筆者は『セーラームーン』的な作品だと思ってた。

 いざ放送がスタートすると、第1話から廃墟と化した異空間に立つ主人公“鹿目まどか”の姿、そしてその空間で巨大な魔女と戦い、傷つく1人の少女の姿が。この時点で「おやおや?」と思いつつも、その後、夢から目覚めたまどかが学校へ通い、夢の中で見た少女“暁美ほむら”が転入してきたことに驚き、異空間に飛ばされたまどかたちが魔法少女である“巴 マミ”や“美樹さやか”たちと出会います。その後、“まどか”は、“マミ”や“さやか”たちとともに“魔女”との戦いへと参加することに……そして衝撃の第3話へ……。

  願いを叶える代わりに“魔法少女”になり、“魔女”と戦うことになった少女たち。しかし、その裏には重大な秘密(もとい代償)が隠されていることが第9話にて明らかに。過酷な運命に身を落とすことになった“魔法少女”たちは、残酷な戦い、そして逃れられない宿命と向き合うことになります。本作は『Fate/Zero』や『PSYCHO-PASS サイコパス』を手掛けた虚淵 玄さんが脚本を担当。『まどマギ』の緻密かつ衝撃的な展開、鬱屈としつつもその先に繋がる展開が見えるストーリーは、虚淵さんならではの世界観ですよね。めっちゃ怖いし鬱々とするけれど、「ひょっとしたらこの先に希望があるかもしれない」と思い先を見てしまいます(そして希望はないことが多い)。

 また、本作はストーリー展開はもちろんのこと、“魔女”のビジュアルなど独特な世界観も話題に。“魔女”のビジュアルや戦闘背景は、日本のアニメーション作家ユニット“劇団イヌカレー”が担当。イラスト×コラージュで描かれる“魔女”は、まさにこの世のものとは思えないグロテスク&異質な存在感を放っていました。なかには、“お菓子の魔女(シャルロッテ)”や“委員長の魔女(パトリツィア)”のように、一見すると可愛らしい魔女もいました(その見た目に騙されると痛い目を見る)。

平成アニメの”バディもの”といえば! ワイルドおじさん&生意気な新人バディヒーローが描かれた『TIGER & BUNNY』

 『TIGER & BUNNY』(タイバニ)は、サンライズ制作によるオリジナルアニメ。2011年にTVアニメ化され、2012年には新作エピソードを交えた劇場版が、2014年にはテレビシリーズ最終回後のストーリーを描く完全新作として劇場版が公開されました。

 本作は、特殊能力者“NEXT”がスーパーヒーローとして活躍する大都市・シュテルンビルトを舞台に、落ち目のベテランヒーロー“鏑木・T・虎徹(ワイルドタイガー)”と生意気なスーパールーキー“バーナビー・ブルックスJr.”がコンビを組み、ともにヒーロー活動を行う”バディもの”。ヒーローとしての誇り・正義を掲げる虎徹とポイントのために効率的に活動するバーナビー。対照的な2人は時にぶつかり、すれ違いながらも、様々な事件を経て次第に本物の”バディ”になっていく姿が描かれています。

 本作のキャッチコピーは「職業・ヒーロー(正社員) 崖っぷちのベテランと扱いにくい新人 最悪で最高のヒーローコンビ誕生!」なのですが、初めて見た時に不思議とワクワクしたのを今でも覚えています。『タイバニ』以前にも“バディもの”は存在していますが、『タイバニ』が驚異的なヒットを起こしたことで「バディものといえば『タイバニ』」というイメージができあがったような気がします。筆者的には“バディもの”といえば『タイバニ』か『相棒』を思い出します。話がそれました。

 『タイバニ』は、実在する企業がヒーローたちのスポンサーになったことでも話題に。スポーツや格闘技の試合を見ていると、選手のユニフォームや会場にスポンサー企業のロゴがあしらわれているものですが、『タイバニ』ではヒーローたちが着用する戦闘スーツにロゴがあしらわれています。たとえば、“ワイルドタイガー”には『SoftBank』が、バーナビーには『BANDAI』、『amazon.co,jp』のロゴが戦闘スーツに。

 第1話放送時に話題になったのは『牛角』と『高須クリニック』がスポンサーになっていたことでもの凄く話題になりました。アニメのなかに知っている企業の名前が登場するのって不思議な感覚ですよね。そして、CMではスポンサー企業のCMが流れる徹底ぶり。ストーリーや設定の面白さはもちろんのこと、これまでにない特別な演出でも『タイバニ』は多くの注目を集めました。

 個人的に『タイバニ』で一番ぐっときたのは“ショーのような犯人逮捕劇”。“シュテルンビルト”に現れた犯人をヒーローが逮捕する際には、報道番組『HEROTV』にて中継が行われ、実況と共に放送。ヒーローは逮捕の際の活躍した度合い(人命救助、犯人逮捕、街の公共財を守る)によってポイントが付与。これにより最多ポイントを獲得したヒーローは“キング・オブ・ヒーロー(KOH)”として賞賛されます。また、獲得したポイントにより スポンサーから与えられる給与が増減する、スポンサーが増減するなど、ヒーローの死活問題にもかかわってきます。

 そのため、ヒーローとして華麗に戦うことはもちろんのこと、他のヒーローよりも見せ場を作って戦う必要がある……ヒーロー同士の熾烈なるランキング争いが行われることも魅力。そして、見せ場をつくるためにそれぞれが個性をフルに発揮して魅せる姿は時に格好良く、時に可愛く、時に面白い。気になるヒーローができたころには「ワイルドタイガーまたやったよ(待ってた)」、スカイハイの「ありがとう」待ちをするようになるはず。

夏になると思いだす。少年少女の葛藤と成長の物語『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』

 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(あの花)』は、A-1 Pictures制作によるオリジナルアニメ。2011年にTVアニメ化され、2013年には劇場版も公開されました。

 オリジナルアニメとして制作された『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』。この年、多くの人がこの作品を見て涙したことでしょう。“幼馴染の死”や“思春期の戸惑い”が描かれた本作は、普段からアニメを見る層のみならず、『あの花』で初めてアニメを見たという方が生まれるほどとても話題になりました。アニメをいっさい見たことがなかった親族から「あのアニメは良かった」と突然連絡がきたときは驚いた(久しぶりにあった時にめんまのグッズをあげたらめちゃめちゃに喜んでた)。

 監督は『とらドラ!』『とある科学の超電磁砲』などの長井龍雪さん、脚本は『黒執事』『花咲くいろは』などの岡田麿里さん、キャラクターデザインは『君の名は。』などの田中将賀さんが担当。埼玉県秩父市を舞台に描かれた本作は、丁寧に紡がれていくストーリーはもちろんのこと、田舎ならではのノスタルジーな情景や演出でも話題になりました。秩父鉄道に乗りたくなるアニメ。

 小学生時代の宿海仁太(じんたん)、本間芽衣子(めんま)、安城鳴子(あなる)、松雪集(ゆきあつ)、鶴見知利子(つるこ)、久川鉄道(ぽっぽ)ら幼馴染6人組は、平和を目指すグループ“超平和バスターズ”を結成し、秘密基地で集まっては無邪気に遊ぶ日々を送っていた。しかし、“めんま”が川の転落事故で亡くなってしまったことをきっかけに疎遠に。時は流れ高校時代へ。リーダー的存在であった“じんたん”は引きこもりになり、自分にコンプレックスを抱いていた“あなる”は派手な見た目に。“じんたん”に対抗心を抱いていた“ゆきあつ”は今も過去の“じんたん”と“めんま”を忘れることができず、そんな“ゆきあつ”を“つるこ”は気にかけながらも行動を共にしていました。

 そして、“超平和バスターズ!”で一番小柄だった“ぽっぽ”は誰よりも立派に成長し……と、月火の流れとともにそれぞれが成長しながらも、過去の出来事(めんまの死)に心を囚われていました。 ある日、“じんたん”の目の前に死んだはずの“めんま”が零体となって現れたことをきっかけに、“超平和バスターズ!”は再集結。“めんま”の「お願い」を叶えるため、それぞれの過去と今に向き合うことになります。

 『あの花』は「毎回泣かされている気がするな!?」と感じるほど、名シーンのオンパレード。“じんたん”が秘密基地に向かって走り出すシーン(第1話)、冷めた性格の“つるこ”が“あなる”に感情むき出しにするシーン(第10話)、“じんたん”の母親と思い出の蒸しパン(第3話)、“ゆきあつ”がとある姿で他のメンバーの前に登場したシーン(第5話)、そして最終回(第11話)。どこを切り取っても胸を打つシーンばかり。個人的には夏になると必ず見たくなるアニメです。

 1話から見直すと必ず“かき玉入り塩ラーメン”が食べたくなるので、ここ数年は『あの花』を見る際には塩ラーメンを買い置きするようになりました。必需品。

平成23年の日本はどうだった?

 ちなみに平成23年の日本では、FIFA女子ワールドカップにて“なでしこジャパン”が初の世界一に輝き、“なでしこジャパン”がこの年の流行大賞に。また、任天堂より『ニンテンドー3DS』が、ソニー・コンピューターエンタテインメントより『PlayStation Vita』が誕生したのもこの年のできごと。さらに、iPhone用アプリ『おさわり探偵 なめこ栽培キット』も流行。この時期みーんななめこを育てていました。

 次回の『平成アニメ備忘録』をお楽しみに!

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