神谷浩史特別インタビュー 劇場アニメ『夜は短し歩けよ乙女』

2017.04.07 <PASH! PLUS>

「頭のなかで描く世界がそのまま広がっているような感覚です」(神谷)

©森見登美彦・KADOKAWA/ナカメの会

 森見登美彦原作の小説が、TVアニメ『四畳半神話大系』を手がけた湯浅政明監督の手により、今度は劇場アニメに。 PASH! PLUSでは、4月7日(金)より全国公開される『夜は短し歩けよ乙女』から、本作で学園祭事務局長役を演じた神谷浩史さんにお話をお聞きしました。
 4月10日(月)発売のPASH!5月号には掲載しきれなかった部分が中心となりますので、ぜひ本誌とあわせてお楽しみください!

 

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Profile●かみや・ひろし 青二プロダクション所属。主な出演作:『進撃の巨人』シリーズ リヴァイ役、『夏目友人帳』シリーズ 夏目貴志役、『傷物語』シリーズ阿良々木 暦役 ほか

 

「秋パートの学園祭では、学園祭事務局長がもっとも“学園祭事務局長然”としています」

──初めて本作の映像をご覧になった際の感想を聞かせてください。

神谷:原作を読ませていただいたときもそうなんですが、とにかくすごく面白かったです。なんで面白いのか理由は分からないのに、夢中で映像を観てしまって。

 みなさんの頭のなかにも、文章を読んで思い描く世界がイメージになって広がることがあるかと思いますが、まさに今回湯浅監督が作り上げた映像世界というものが、「そうそう、こんな感じ!」と思わされるものだったんです。実際には自分のなかで思い描いていたものよりも遥かに高いクオリティの映像で、絶対自分だけではこんな素晴らしい世界は想像できなかったはず。なのに、それでも自分の頭のなかにこのイメージが広がっていたと錯覚してしまうくらい、イメージどおりのものが動き始めている、という印象を受けました。そんな不思議な映像体験でしたね。
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──神谷さんが演じられている学園祭事務局長について、ご自身の想いを聞かせてください。

神谷:当初、学園祭事務局長は、言い方は悪いかもしれないですが、そこまで目立つ役ではないだろうと思っていたんです。突飛もないキャラクターがたくさんいるなかでの先輩のいち友人、くらいかなと。ところが実際映像で観てみると、自分が任せていただいている役だからということもあるのかもしれませんが、「すごいいい役じゃん!」と感じました。
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──学園祭事務局長は特に秋パートで活躍していますね。

神谷:そうですね。学園祭事務局長が、学園祭事務局長然としているというか、「学園祭事務局長として働いているときは、こういう感じ」というのが一番よく見えていると思います。

 秋パートでは、彼が自分の役割を正しく演じている部分が垣間見えるんですよね。十手を持って“韋駄天こたつ”を追いかけたりしているところなんて、非常に演劇的というか、学園祭事務局長が“自分の役割を正しく演じている”という印象がありました。韋駄天こたつに逃げられて、「くそ、偏屈王め!」と悪態をつくところは、本来だったら自分はその役割として『偏屈王』を上演する“ゲリラ演劇集団”を取り締まらなければならないのに、それを逃してしまって忸怩(じくじ)たる思いである、ということを自分のなかで押さえ込んでおかなければいけない。でもこの場面では、それを悔しがっているんだと彼はちゃんと正しくアピールしています。ここはアフレコで、「“悔しがっている自分”に酔っている感じ」というディレクションもあったんです。

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↑“先輩”や“黒髪の乙女”が通う大学で、秋に開かれる学園祭。学園祭事務局長は、学園祭で起こるトラブルの数々を解決し、この行事を成功させるべく奮闘する。しかし、樋口師匠(CV:中井和哉)とパンツ総番長(CV:秋山竜次〈ロバート〉)による“韋駄天こたつ”や、ゲリラ演劇『偏屈王』を行う集団に手を焼かされて…

──秋パートで描かれている学園祭の出し物も、変わっていて面白いですよね。

神谷:美女クレーンゲームなんか、すごいバカバカしいですよね(笑)。よく考えたなと思いました。たった2カットなのに、すごく面白い。学園祭シーンに限らずですが、本作は登場するキャラクターたちがみんな自分の人生を前向きに楽しんでいる感じがして、観ていて気持ちのいいフィルムなんです。特にこの学園祭のシーンは、それが強いと思います。どのカットを観ても、「ああ、この学園祭はきっと楽しいんだろうな」って思わされてしまいますよね。
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「全然自己投影できないキャラばかりなのに、魅力的なんです」

──本作には変わったキャラクターばかりが登場しているのに、でもどこか自分にも近いところがあるようにも感じました。

神谷:そうかもしれないですね。作品を観るときって、どうしても主人公だったり、一番“おいしく見える”人物に自己投影したがるものじゃないですか。でも現実には、確かに自分の人生は自分が主役かもしれないけれど、いろんな人がいて、さまざまな干渉があって、それによって一つの作品になったり一つの事柄が成り立ったりしているので、誰が欠けてもきっと完成しないと思うんです。どうしても最近の作品って、すごくカッコいい人とすごくキレイな人が出てきて、その2人だけの世界で物語が進行していきがちです。でもこの作品は、もちろん先輩と黒髪の乙女の2人を主軸にはしていますが、2人もそれを取り巻く人たちも、一生懸命に人生を生きているんですよね。この作品はそこをちゃんと切り取ってくれているので、観ていて「先輩、頑張れ!」と思うし、最終的に「ああ、よかったね」と思えるんですよ。

 実際、先輩に自己投影なんかまったくできませんからね(笑)。女性も、黒髪の乙女には自己投影できないと思うんですよ。そういった意味ではすごく変わった作品なんじゃないでしょうか。今主流になっているような、一人のヒロインに対して周りにイケメンがいっぱいいて、観る側はヒロインに自己投影して観てくださいね、その逆もまた然りです、といった作品とはまったく異なります。そんな自己投影なんて全然できない人たちがメインキャラクターなのにもかかわらず、すごく魅力的に感じるというところが、「なんか分かんないけど、すごい面白いものを観たな」と思わせるんじゃないでしょうか。
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──最後に本作を楽しみにしているファンのみなさんへ、メッセージをお願いします。

神谷:とにかく僕は手放しで面白い作品だと思っています。もしかしたら、サブカル系のオシャレな人が観にいく作品なんじゃないの…とレッテルや予防線をはっている方もいるかもしれませんが、観た瞬間、虜にされてしまう作品です。ぜひ騙されたと思って観ていただきたいです。どうぞよろしくお願いします。

 

DATA
『夜は短し歩けよ乙女』
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イラスト=中村佑介

ROADSHOW:4月7日(金)より全国公開

HP:http://kurokaminootome.com 
Twitter:@otome_movie

STAFF:
 原作=森見登美彦(角川文庫刊)
 監督=湯浅政明
 脚本=上田 誠(ヨーロッパ企画)
 キャラクター原案=中村佑介
 音楽=大島ミチル
 主題歌=ASIAN KUNG-FU GENERATION
 制作=サイエンス SARU

CAST:
 先輩=星野 源
 黒髪の乙女=花澤香菜
 学園祭事務局長=神谷浩史
 パンツ総番長=秋山竜次(ロバート)
 樋口師匠=中井和哉
 羽貫さん=甲斐田裕子
 古本市の神様=吉野裕行
 紀子さん=新妻聖子
 ニセ城ケ崎=諏訪部順一
 プリンセスダルマ=悠木 碧
 ジョニー=檜山修之
 東堂さん=山路和弘
 李白さん=麦人 ほか

STORY:
 京都のしがない大学生、“先輩”の想い人…それはクラブの後輩である“黒髪の乙女”だ。彼女の気を引こうと、“先輩”は『なるべく彼女の目にとまる』、通称“ナカメ作戦”を日々実行。しかし無念にも空回って終わるまでが常なのであった。
 春の先斗町、夏の古本市、秋の学園祭…好奇心豊かな乙女が行く先々に待ち受けるのは、一風変わった人びとと奇妙奇天烈な出来事ばかり。なんとか乙女との距離を縮めたい“先輩”だが、最後に訪れた冬には何が起こるのか…? 長くて短い京都の夜は、今日もしんしんと更けてゆく。