神谷浩史&坂本真綾『傷物語 Ⅲ 冷血篇』公開記念インタビュー

2017.01.12 <PASH! PLUS>

神谷浩史「声優をやっててよかったと思いながら作った作品です」

©西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

いよいよ2017年1月6日(金)より公開となった『傷物語〈Ⅲ 冷血篇〉』。〈物語〉シリーズのエピソード0にあたる作品が完結するということで、これを記念して主人公・阿良々木 暦(あららぎ・こよみ)役の神谷浩史さんとヒロインの吸血鬼キスショット役の坂本真綾さんのお2人にインタビューを敢行。作品やシリーズについてのさまざまな想いを語っていただきました!


「『冷血篇』は、より“変態”な感じに仕上がっているだろうなと楽しみにしています(笑)」(坂本真綾)


──いよいよ『傷物語』三部作の完結編の公開です。まず、見どころを教えてください。
坂本真綾:アフレコ段階では画ができていなかったので、私たちもまだ完成した映像は観てはいません。ただ前2作の『鉄血篇』『熱血篇』の完成度は、アフレコの段階でこうなるんじゃないかって予測したことの何倍か上をいった仕上がりになっているんですよ。それは尾石(達也)監督だからできたことだと思いますが、そういった監督の作品を追求する姿勢にはある種の狂気を感じました(笑)。監督って見た目すごくさわやかな人なんですけど、作品から受ける印象は「この人絶対、変態だな」(笑)。もちろんいい意味ですよ。こだわりがすごくて、2作とも命懸けで作っているのがわかるので、満を持しての完結編である『冷血篇』がこれまでより劣るわけがないと信じています。より“変態”な感じに仕上がっているだろうなと楽しみにしています(笑)。
 あと、表現もTVシリーズとは違い劇場版ならではのものとなっているので、そこも見どころです。これまでもTVシリーズなどたくさん作られていますが、『傷物語』は劇場版だからこそできるような一歩踏み込んだ描き方をされていると思います。“楽しい”とか“かわいい”“かっこいい”だけじゃない「その人の本質を、そのまま受け止められるのか?」といった重いテーマが投げかけられていますしね。

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──神谷さんはいかがですか?
神谷浩史:見どころは全部でしょうね。最初は気づかないと思いますが、作品全体を通して観るとあとになって「あ!そういう意味だったんだ」と気づくセリフやニュアンスが散りばめられています。それを発見していくのも楽しみ方のひとつだと思います。
 それと、登場するどのキャラクターも見どころになっています。本作の登場人物はひとりも嘘をついていません。それ故に、それぞれのキャラクターに魅力を感じると僕は思っています。例えば、キスショットは肝心なことをまったく言いませんが、すべて正直に話していて。暦に「人間に戻してあげる」と言いつつ、その方法に関しては一切しゃべらない。暦がそれを知ることで、どんな気持ちになるかってところまで考えてしゃべってくれているんです。忍野(メメ/CV:櫻井孝宏)もそうで、彼自身も嘘は言っていない。だけど彼も肝心なところは言わないまま物語がどんどん進んでいく。そしてボタンを掛け違えたまま物事が進み、最後は阿良々木 暦とキスショットにとっては悲惨な物語になってしまうわけですが、そういうさまも三部作を通して見どころとなっています。
 あと個人的には、今回のバトルシーンがどのように仕上がっているのかがとても楽しみで、なかでも特に音に注目しています。今までの作品を観ても、映像的にはショッキングだけどそこに妙なSE(効果音)などが足されているんですよ。たとえば腕が吹き飛ばされるカットに「ぴゅ~」といったとぼけた音が付いてちょっと面白いシーンに見えたりする。ただ今回はバトルシーンの映像が相当ハードなので、そこにどんなSEやBGM(劇伴)を当てるのかなって興味がありますね。
 音楽を担当されている神前(暁)さんも毎回シーンに合わせた曲を書き下ろしてくださっていて、音楽的にもいろいろなジャンルのものを盛り込んでくださっているので、今回どんな音楽が聴けるかということも楽しみのひとつです。

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──演じた際、心情表現で大変だったところは?
神谷:本作で、暦はキスショットがどういう存在なのか気づかされるわけですけど、そのあとの演技で大変だったところがあって。
 怪異を安易に助けたことを後悔する暦ですが、高校生のメンタルでそれを受け入れきれず当たり散らすんです。ただ、そこが台本上では100カットほど延々「うわぁぁぁー!」としか書いてなくて(笑)。それを全力で演じたわけですけど、本番一発でOKが出て本当によかったなと。2度やるのはさすがにきつかったので(笑)。

──(笑)、なるほど。坂本さんはいかがでしょう?
坂本:キスショットの心情については三部作でじっくり描いていただいているので、今回疑問に思うところはほとんどなかったですね。
 私の解釈を原作の西尾維新先生のお考えと照らし合わせているわけではないですけど、私としてはキスショットが「すごく女性的だ」というところで理解していて。何百年生きたところで、女は女なんだと。そういうことは自分も年齢を重ねてわかりかけてきたところです。そんな私の100倍は生きているキスショットでも、女であることの業(ごう)というか性(さが)といったものを感じることができたので、その部分を軸に演じようと収録に臨みました。

──神谷さんと坂本さんはほかの作品でも共演されていますが、本作で共演してお互い改めて発見したことは?
坂本:神谷さんはいつどこでも神谷さんなのですが、一緒に収録していると、声優さんが隣でしゃべっているのではなく、暦がしゃべっている感じがして、もうキャラクターと一体化しているんですよ。
 それは神谷さんが長年この役を演じてきたからかもしれませんが、神谷さんが世界中の誰よりも暦のことを理解しているからなんじゃないかとも思っています。そうなるには原作を誰よりも繰り返し細かく読み直し、収録現場にも原作を持ってきてチェックするという努力があってのことだと思います。だから、私はほかの作品のとき以上に神谷さんとキャラクターとの一体感を感じました。

神谷:真綾ちゃんも、ほかの現場と違うところはそんなにないと思います。
 ただ〈物語〉シリーズはほかの現場と違って“暦と誰か”といった形で収録するので、毎回スタジオにいる声優さんの数が極端に少ないんです。なので必然的に今回僕と真綾ちゃんしかいない時間も長かったんですよ。2人っきりでひとつの空間で作品に向き合っていたわけですが、真綾ちゃんは、そうした時間がこんなにも幸せな時間なんだって思える空気を作ってくれるんです。それが本当にありがたいなと思って、いつも感謝しています。

坂本:うまいこと言うなあ(笑)。

神谷:いやいや、普段口に出して言わないだけだよ。真綾ちゃん自身には独特の緊張感もありますし、品の良さもある。現場にいる佇まいやマイクに向かう姿勢、出てくる音など、とにかくなにをやっても絶対に品性を失わないんですよ。それはもう持って生まれたものなので、キスショットという高貴な存在の声はこの人以外考えられないって思いながら、いつも同じモニターに向かわせてもらっています。

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「西尾維新の持つ文章の力をいちばんいい形で映像化したのがこのアニメシリーズです」(神谷浩史)


──まだ〈物語〉シリーズを観ていない人は、どの作品から観るといいでしょうか?
坂本:お話の順番としては『傷物語』がエピソード0にあたるので、逆に今がチャンスですっていう感じですね。「〈物語〉シリーズはどれから観ればいいんだろう?」と思っている人にとってみれば、『傷物語』から入るっていうのは、いいきっかけになると思います。
 私は特に自分の演じている役が本作でフィーチャーされているので特別な思い入れがありますけど、それを差し引いてもほかのストーリーを観る上で『傷物語』を知っておいたほうがより他作品を楽しめるので、初めての人はまず本作から観ることをお薦めします。

──坂本さんは、〈物語〉シリーズの魅力はどこにあると考えていますか?
坂本:う~ん、シリーズ全体の魅力については、私も半分くらいわかっていないと思っています。というのも、なにを魅力に感じているかは、観る人によってそれぞれ違うとも思っているので。
 私は最初のころ、忍野 忍が幼く、すごく肌の露出が多かったので、大丈夫なのかな?って心配していたんです。「子どものこういう格好を見て興奮しちゃう大人が増えたらどうしよう。責任持てない」って思いながら、ちょっと悩んだんですよ(笑)。
 でも放送が始まってみると、そんな心配をする必要はありませんでしたね。普段アニメは観ないけど〈物語〉シリーズは観る、といった知り合いがけっこういて、この作品が持っている間口の広さを感じました。お仕事が終わって帰ってきた深夜の時間帯に、なんとなく観ているうちにハマって、ずっと観てしまうみたいな。年齢層もいろんな人がいて、もっとコアな作品になるかと思いきや、いろんな人のツボに入っていく作品なんだなと感じたことを覚えています。
 私個人は、正直アフレコのとき「?」と思いながら演じることもあったんですよ(笑)。でも、できあがった映像を観るとすごくポップだったり概念的な部分を映像化していたりしてとても実験的で、観るのが面白くって。なので、この作品になにを求めて、どこに魅力を感じているかは、実は人によってぜんぜん違うんじゃないかなと。初めての人は、自分にとっての魅力を見つける楽しさも味わっていただきたいですね。

──神谷さんは、いかがですか?
神谷:僕もよくわからないんですけど、まず原作が非常に多くの人に受け入れられていることは事実です。その人気の作品をいちばんいい形で映像化したのがアニメのシリーズだと思っています。というのも、〈物語〉シリーズは新房昭之総監督や尾石監督の方針で、セリフは基本的に原作にある文章しか使っていないんです。もちろんアニメーションならではの言い回しに変える部分もあるんですけど、原則的には一言一句、原作のまま作るというこだわりで作られています。たぶんそれは西尾維新先生の文字に魅力が詰まっているからなんだと思います。それを忠実にやっていこうという志の下にみんな集まって作ってきて、結果できあがっているものがみなさんに受け入れられている。ということは、やっぱりそのやり方が正しかったんだと思うんです。
 今回の『傷物語』は、そんな〈物語〉シリーズのエピソード0にあたる作品で、これを起点に物語がスタートしています。なので、ここから観ていただいたあとは、物語の時系列順に『猫物語(黒)』『化物語』『偽物語』…と楽しんでいただけます。もし本作でこのシリーズを気に入っていただければ、このあと『暦物語』を含めて80本を超える作品群が待っているので、その作品の数だけ楽しめるというのは自信を持って言えますね。

――では最後に、PASH! PLUS読者にメッセージを!
坂本:劇場で観るために生まれた作品なので、ぜひ劇場で観てください。よろしくお願いします。

神谷:僕も同じですね。『傷物語』はぜひ劇場に足を運んで観ていただきたい作品です。劇場とはその作品を楽しむためだけに造られたぜいたくな空間で、本作はそのぜいたくな空間で鑑賞するに堪えうる作品だと思います。僕も声優をやっててよかったと感じたいなと思いながら作った作品なので、それを確認しに必ず劇場へ足を運ぼうと思っています。みなさんもぜひ劇場でご覧ください。

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DATA
傷物語〈Ⅲ冷血篇〉

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ROAD SHOW:全国公開中
HP:http://www.kizumonogatari-movie.com/
Twitter:@nisioisin_anime
STAFF:
 原作=西尾維新『傷物語』(講談社BOX)
 総監督=新房昭之
 監督=尾石達也
 キャラクターデザイン=渡辺明夫、守岡英行
 音響監督=鶴岡陽太
 音楽=神前 暁
 アニメーション制作=シャフト
 製作=アニプレックス、講談社、シャフト
 配給=東宝映像事業部

CAST:
 阿良々木 暦=神谷浩史
 キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレード=坂本真綾
 羽川 翼=堀江由衣
 忍野メメ=櫻井孝宏