『ユーリ!!! on ICE』久保ミツロウインタビュー(後編)「一緒に細胞を活性化しましょう!」

2016.10.27 <PASH! PLUS>

私たち以上に愛を込めて作れる人はそう現れないと思っています。

 

PASH!11月号に掲載された、『ユーリ!!! on  ICE』久保ミツロウさんインタビューの後編を公開! 前編はこちら♪

作品の構想をスタッフに伝えるためのネーム制作

——『ユーリ!!! on ICE』の脚本は文書形式ではなく、すべて久保さんがネーム(マンガの下描きの下描き)を描いています。アニメ作品に関わるのは初めてとのことですが、マンガ執筆や実写化との違いはありますか?

 『モテキ』の実写映画化のときにもネームを描き下ろしたので、最初はその感覚で描けばいいと思っていたんですが、ネームを描くという意味合いがまったく違っていて。『モテキ』は原作と実写ドラマ化を土台にした共通認識がみんなのなかにあったけれど、今回は誰も『ユーリ!!! on ICE』に対するイメージを持っていない状態。ゼロから作らなければいけなかったんです。どうすればスタッフのみなさんに、私と山本監督のなかにある作品の魅力やキャラクター像が伝わるのか、この作品を好きになってもらえるのか…。「あぁ、超ネームを頑張らなきゃ!」と思いましたね。それから、まだ作品が全部完成していないうちから、自らの口で「観てください!!」と宣伝するのも初めてで、ドキドキしました。

——実際に完成した映像をご覧になって、いかがでしたか?

 自分がネームに描いたものが動いているという感覚ではなく、もっと新鮮な気持ちでしたね。「そうそう、私も似たようなことを考えてた!」みたいな(笑)。私の絵柄ではアニメ化に向かないんじゃないか、自分の絵に対するこだわりが足手まといになるんじゃないか…なんて思っていたんですが、キャラクターデザインの平松禎史さんや、フィギュアスケートアニメーション担当の立中順平さんと安彦英二さんたちのおかげで、本当になめらかに動く! こんなにもワクワクするものがこれから観られるんだということに感動しました。同時に、私はマンガという表現に甘えていたんだなと考え直すくらい衝撃的でした。
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豊永さんは勇利そのもの! 迷わず決まった配役

——キャスティングに関して、どのように決められたのでしょうか?

 山本監督と一緒にオーディションテープを聴いて、どの方も素晴らしかったのですが、豊永(利行)さんは一発で「この人!」と思いました。ちょっと裏返ったときの声も、弱さの表現と清潔感も…そこから強気になったときの真っ直ぐな声も、勝生勇利そのもののように感じたんです。何の迷いもなかったですね。諏訪部(順一)さんはテープで聴いた淀みのない感じもよかったんですが、実際にオーディションに来てもらったときの「アメージング!」が面白かった(笑)。1人だけ「アメージング!」ってセリフをすごく練習していたんですよ。誰もそこ練習してないのに(笑)。カッコいいだけではない、みんなから愛されるような引き出しが素敵だと思いました。内山(昂輝)さんはオーディションテープで最初に「劇団ひまわりの内山昂輝です」って名乗るところからロートーンで(笑)。ユーリの声の位置づけを考えたときに、内山さんみたいなタイプがぴったりハマったんです。実際の収録でも、みなさんすごく説得力があるというか。じっくりとキャラクターに合わせてくださっていて、改めて「声優さんってすごい!」と思いました。

——アフレコ現場の様子で印象に残っていることはありますか?

 第1話の最後、全裸のヴィクトルが勇利に向かって「今日から私はお前のコーチになる」と言うシーン。諏訪部さんに何度かセリフを試してもらったんですけど、イケメンボイスというより少し抜けた感じのテイクに決まったら、豊永さんが「あれ? ヴィクトルってそういう胡散臭い感じなんだ?」みたいな顔をしてて。豊永さんのなかにあったヴィクトルのイメージは少し違っていたようで、「まさにそれ! キミのなかにある憧れのヴィクトル・ニキフォロフはそうやって形を変えていくんだよ!」と思いました。そんなふうに豊永さんと勇利が重なって見えることがけっこう多いんです。
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——第2話以降の見どころとPASH!読者へのメッセージをお願いします。

 あのヴィクトル・ニキフォロフがコーチになるんですよ、やばくないですか!?(笑) 憧れの選手が自分のコーチになるなんて夢のようだけど、実際にそれが叶っている世界もあるんです。今回のストーリーが前代未聞なのは、ヴィクトルが現役の選手だということ。人気も実力も絶頂の選手が、自分の練習を休んでまで他国の選手に教える、というのはファンタジーかもしれません。でもその舞台装置があることによって、シリーズが一気に色めきたっていきます。そのなかで勝生勇利は変化し、ヴィクトルとの関係を深めていく…。選手とコーチとの絆は現実の競技スポーツにおいても重要なことです。どうやって関係を深め、選手たちがそれぞれどう変わっていくのかご注目ください。10月からは現実のシリーズも開幕します。スケオタにとっては寝る暇もない日々の始まりですね(笑)。そこで、さらに『ユーリ!!! on ICE』を観て盛り上がってもらえればと。一緒に細胞を活性化しましょう! だって、こんな機会は滅多にないですよ。「フィギュアスケートは素晴らしいから、みんなもっとアニメを作ればいいよ」と言いたいところですが、今後私たち以上に愛を込めて作れる人はそう現れないと思っています。そういう自信があるので、今まで関心がなかった人にもこの『ユーリ!!! on  ICE』をきっかけに、フィギュアスケートの世界を楽しんでもらえたらと思います。

 

(PASH!11月号より) text=脇 美智子(サンプラント)

 

©はせつ町民会/ユーリ!!! on ICE製作委員会