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名作『電脳コイル』の魅力とは? ノスタルジックな世界と電脳空間が交錯する独特な世界観に注目

2018.05.22 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

電脳世界の都市伝説に始まり、子供たちのモラトリアム描く

 磯 光雄さんが原作・監督・脚本を手がけるオリジナルアニメ『地球外少年少女』の制作が発表されました。磯 光雄さんがアニメーション監督を務めるのは『電脳コイル』以来実に11年ぶりとのニュースを見て、『電脳コイル』が11年前の作品であることに驚いた方もいるのでは?

 今回は、久々に『電脳コイル』を見たくなった方、『電脳コイル』って何だろうと思った方に向けてどんな作品か振り返ってみようと思います。

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▲磯 光雄最新作『地球外少年少女』ビジュアル

電脳空間を見ることができるんだよ、メガネさえあれば!

 『電脳コイル』は、2007年にNHK総合テレビで放送されたTVアニメで、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞や第29回日本SF大賞など数々の賞を受賞した経歴を持つ作品です。

 物語の舞台は2026年。“電脳メガネ”と呼ばれるメガネ型のコンピューターが普及している世界で、主人公・ヤサコ(小此木優子)が、転校先の地方都市で“電脳世界”と“電脳メガネ”にかかわる事件に出会い、解決していきます。

 電脳メガネというのは、簡単に言うと“身に着けることができるインターネット”のこと。作中では“メガネ”と呼ばれていて、装着することで“電脳空間”にある“電脳物質”と呼ばれるものを見ることが可能になるのです。

 この電脳メガネ、なにかに似ているな~と思えばVR(仮想現実)にちょっと似ていやしませんか? VRは“実在していないものを実在しているように見せるもの”であり、電脳メガネは“かけることで実在していないもの=電脳物質を見ることができるもの”であるため、約10年の時を経て『電脳コイル』で描かれた世界が現実になりつつあるのかもしれません。

 しかも、『電脳コイル』の世界では電脳メガネが普及していて、子どもでさえ持てるようになっているのはちょっぴり羨ましかったりします。

SFとノスタルジックな世界が交錯する不思議な感覚

 『電脳コイル』は、“電脳空間”や“電脳物質”といった架空のものが存在するように描かれているSFですが、皆さんが思い浮かべるSFとは違った雰囲気を持っていると思います。

 SFの世界というと思い浮かべるのは高層ビル群に、全てがインターネットで制御・管理された世界、燦燦と煌く飛行物体……みたいなものをイメージしてしまうのですが(もしかしたら自分だけかもしれない)、『電脳コイル』の世界はどちらかというと“古き良き日本”の風景が描かれています。

 主人公・ヤサコが暮らしているのは、大黒市という石川県金沢市からそう遠くない場所に位置している歴史ある都市。古い神社や木造の建物がたくさんあり、畳の敷かれた和室、夏祭り、老朽化した校舎……などなど、2026年という未来の話でありながら、どこか昭和のような風景が広がります。そんな古き良き日本のノスタルジックな空間とSFならではの電脳世界が交錯しているのが本作の不思議なところであり、魅力です。

 ちなみに、磯監督は、スタジオ・ジブリにて『おもひでぽろぽろ』や『紅の豚』の原画を手掛けていた方。“どこか懐かしい”と感じさせてくれる景色は、ジブリから由来しているのかも?

都市伝説や電脳世界の謎を追ううちに、物語は急展開を迎えていく

 物語の前半戦では、ヤサコら登場人物たちの日常をメインに展開。呼び出すと願いを叶えてくれるという“ミチコさん”と呼ばれる存在を探したり、“はざま交差点”と呼ばれる路上で奇妙に固まる4つのマンホールの謎を解いたりと、電脳メガネを駆使して大黒市で起こる都市伝説や問題を解決に導いていきます。

 ときたま起こるホラーな展開にぞっとすることもあれば、登場キャラクターたちにヒゲが生えてしまう(主人公は女の子)など、笑える展開も交えつつ、ヤサコたちの日常がオムニバス形式で展開されていきます。

 そんな少し不思議な日常から始まり、後半戦では子供たちの過去や電脳世界の謎が明らかに。電脳世界とは何か、電脳メガネが映し出しているものは何なのか。電脳メガネを用いた子供たちの単なる遊びであったはずなのに、次第に大人をも巻き込む大きな事件にまで発展してしまいます。

 そして、前半戦に登場した都市伝説や事件の数々が伏線になっていたこと、登場人物たちが抱える過去が繋がっていたことに気付いたときには「そういうことだったのか!」と思わず叫びだしたくなるはず。子供向けアニメでありながら、謎が謎を呼ぶ壮大な展開は鳥肌ものです。

電脳空間に隠された謎はいかに?

 『電脳コイル』は、“電脳空間”という特殊な空間を描いているだけに、設定や時系列をくみ取るまでに少々時間がかかるかもしれません。そのため、最後にこれから『電脳コイル』見る人に向けて覚えておいてほしい2つのキーワードがあります。それは“4423”と“4年前”。この2つのキーワードが繋がった時、登場人物たちの日常に隠されていた謎が明らかになっていくはずです。

 あなたも『電脳コイル』を見て、電脳空間に隠された謎を探求してみませんか?

DATA
■『地球外少年少女』

STAFF:
原作/監督/脚本:磯 光雄
キャラクターデザイン:吉田健一
制作:SIGNAL.MD

©MITSUO ISO/avex pictures 2014

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