『ユーリ!!! on ICE』音楽制作チームが徹底楽曲解説!【前半戦】

2016.12.22 <PASH! PLUS>

勇利、ヴィクトル、ユリオたちのSP&FSを濃密紹介♪

©はせつ町民会/ユーリ!!! on ICE 製作委員会

 TVアニメ『ユーリ!!! on ICE』の世界を彩る数々の楽曲。その魅力と制作秘話を、音楽プロデューサー冨永恵介(PIANO)、作編曲・梅林太郎さん&松司馬 拓さんから、盛りだくさんで語っていただきました。発売中のPASH!1月号には載せきれなかったエピソードを、PASH!PLUSで特別大公開です! なお、PASH!本誌ではここにはない各曲のイメージやテーマ、制作裏話をたっぷり掲載していますので、こちらの『ユーリ!!!』特集もあわせてチェックしてみてください!! それでは早速、前半戦にいっチャイナ♪

【冨永さんインタビューはこちら】→『ユーリ!!! on ICE』音楽プロデューサー・冨永恵介特別インタビュー

※文末に名前の記されていないコメントは、すべて冨永さんからのものです。
※【】内は編集部注釈です。
※SP=ショートプログラム、FS=フリースケーティング を表します。

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冨永恵介
1978年生まれ、横浜出身。音楽プロデューサー。
日本大学芸術学部写真学科卒業、音楽プロダクションGRANDFUNKを経て、2012年PIANO inc.設立、代表取締役社長就任。趣味は海釣り。
主な音楽プロデュース作品に、ポカリスエット2016 CM『キミの夢は、ボクの夢。』、SUNTORY PEPSI桃太郎シリーズCM(小栗 旬主演)、TVアニメシリーズ/『残響のテロル』『スペース☆ダンディ』『坂道のアポロン』、五五七二三二〇/『半世紀優等生』 ほか

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梅林太郎
1980年生まれ、東京出身。作曲家、編曲家。
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、作曲、管弦楽を学ぶ。
2012年8月にRallye Lableよりアーティスト[milk]として1stアルバム『greeting for the sleeping seeds』をリリース。
主な作曲作品に、ポカリスエット2016 CM『キミの夢は、ボクの夢。』、死にゆく星の旋律『ALMA MUSIC BOX』収録“Limbo”、アニメ・スペース☆ダンディ劇伴音楽、原田知世/“ハーモニー”、“黒い犬”、小泉今日子/“小雨の記” ほか

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松司馬 拓
1991年大阪府生まれ。作曲家、音楽家。
東京藝術大学付属音楽高等学校を経て、東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同、大学院修士課程作曲専攻修了。
現代音楽フィールドでの活動・研究を主としながらも、オーケストレーション、指揮の技術を用いてCM音楽等の分野でも活動の幅を広げる。

 

◆ヴィクトル・ニキフォロフFS
『アリア《離れずにそばにいて》』(3:41)
松司馬 拓指揮 Ensemble FOVE(Tenor:工藤和真)
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Q.本楽曲をはじめ多くの曲に参加している「Ensemble FOVE」とは?

 Ensemble FOVEは現在、最も優秀な若手のクラシック/現代音楽の演奏家による、新進気鋭のアンサンブルです。『ユーリ!!! on ICE』では、クレジットされていないいくつかの曲においても演奏をお願いしています。(『History Maker』のオーケストラパートもその1つです。)『アリア《離れずにそばにいて》』では、冒頭の荒木奏美さんによるコールアングレのソロと、ハープの景山梨乃さんが特に印象に残るかもしれません。また中間部のトゥッティによる盛り上がりも、このアンサンブルならではと言える大変魅力的な瞬間です。(松司馬)

 Ensemble FOVEの素晴らしいメンバー構成に関しては、サントラ盤『Oh!スケトラ!!!』ブックレット記載のクレジットをぜひご覧ください。今回制作したクラシックベースの曲は、松司馬くんとも協議の末、広めのスタジオ一部屋を使って、松司馬くんの指揮で基本的にオーケストラ全員一発録り、という、できるだけホールコンサートに近い状態での録音形式を採りました。1つの部屋で同時に録音するため、パート個別の録り直しがきかないというリスクが生じますが、なによりも楽器同士の共鳴とアンビエンス【臨場感】をキャッチできるので、とてもリッチな音響に仕上がっています。これらは今回全編に渡ってレコーディングエンジニアを努めていただいた、佐藤宏明さんの素晴らしい仕事によるものです。佐藤さんとのミックス作業時には、「コンサートホールのS席で演奏を堪能してもらえるような高級な質感」で、ダイナミックレンジ【音量の幅】の広い音像づくりを目指しました。

 

◆勝生勇利SP
『愛について~Eros~』(2:16)
松司馬 拓 featuring 沖仁
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Q.『愛について~Eros~』と『愛について~Agape~』、2曲のアレンジ違いを作る上でのエピソードを教えてください。

 進行としては、梅林くん担当の『愛について~Agape~』のデモを先に上げ、それと同じメロディを用いて、松司馬くんと『愛について~Eros~』バージョンのアレンジを作る、という順序で作業を行いました。

 『愛について~Eros~』のようなインタープレイ【演奏者の相互作用】、デスカルガ【即興的な演奏】をフィーチャーする楽曲ならば、なにはともあれミュージシャンの方たちに集まっていただいて、せーので録音したほうが、ホットで勢いのあるものに仕上がるんじゃないかと思い立ち、早い段階でスタジオに入ってデモ兼本番録音を行っていたんです。ところが、最初この曲は山本監督からOKをもらえず。理由は「勢いが強すぎる」といったようなことだったかと思います。そのときは少し悩んだのですが、改めて聴き直してみるとテンポ感がややスリリングすぎていて、「情熱的ではあるけど、エロスか…?」と思い直し、アレンジの方向性はほぼそのまま変えずに、テンポだけ落としてみました。すると今度はOKをいただけたので、もう一度全部録り直しをしたんです。たしかにテンポを落としたおかげで演奏の機微や遊びの部分が見えてきて、フラメンコのパルマ(手拍子)も効いてきたし、なんだかとてもエロくなりました。しかしこれ以上さらにテンポを落としていくと、ねっとりと熟れた中年のエロスになってしまうので(笑)、その手前あたりで止めることで、エロスに加えて勇利の若さと情熱も感じられる雰囲気に落とし込むことができたのではないかと思います。

◆勝生勇利FS
『Yuri on ICE』(3:42)
梅林太郎
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*山本監督と久保ミツロウさんから勇利のキャラクター像と「その感情をあえて愛と呼ぶことにした」のネームの下りを伺って、梅林くんとは“走馬灯のようにめぐる人生と、その様々な「愛」の記憶”のイメージで制作に取り組み始めました。記憶をめぐるようにピアノが旋回して展開を紡いでいきながら、徐々にリズムがのってきて、中間部で一度ブレイク【リズムや曲の一部が止まること】、そして後半はグルーヴ【ある種のノリ、テンポのよさ】を増してフィナーレに向かって熱く溶け出し流れ出すような展開、という構成にたどり着きました。

*なんといっても梅林くんが書き上げたメロディ、フレーズ展開が素晴らしいです。このリズムで勇利が弧や線を描きながら、氷の上を滑っていくようなイメージで、スタジオでプリプロ【レコーディング前の作業】作業をしていると、不思議とそして自然に、曲みずからが自身を形作りだしたかに思える瞬間もありました。ちなみに第4話では、音大生の友達が作ってくれたデモを勇利が聴いているシーンがありますが、そこで流れているのはまさに今回の制作時の1stデモです。フレーズ展開こそまだ組み上がっていないものの、コードプログレッションとリズムはすでにこの段階で決まっていたのが分かります。

◆ユーリ・プリセツキーSP
『愛について~Agape~』(2:20)
梅林太郎
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*曲が先にでき上がったところで、僕が日本語で歌詞の叩き台を書き、それを元にラテン語の専門家でいらっしゃる宮城徳也先生(早稲田大学学術院教授)に作詞してもらう、という進め方で制作を行いました。しかし、これらの作業が難航を極めたんです。僕はラテン語に関してまったくの無知だったので、教養のある松司馬くんに助けてもらいながら一緒に早稲田大学を何度か訪ねたのですが、実際先生にラテン語詞を作ってもらったはいいものの、ラテン語はアクセントの位置を変えずにきちんと音符にはめなければならない、ということが判明しました。それに伴ってメロディを少し変えなければならない。すると音楽サイドからも、ラテン語の造詣がある人に譜割りや言葉のはめ方を相談しなければならない…ということで、松司馬くんの母校、東京藝術大学の恩師でイタリア語に精通する作曲家の日野原英彦さんを訪ね、発音的にも音楽的にも自然なラインに修正してもらって、その後また早稲田へ行って宮城先生に歌詞を見直してもらって…。そうしてぐるぐる周りながら、なんとか進めることができました。そんな訳で松司馬くんにはずいぶん助けてもらったのですが、先生とのミーティング後に早稲田キャンパスの学食で彼と食事をしていると、「ラテン語もできないなんて僕は失格だ!!」みたいなことを言い出すので、「そ、そんなことはないと思うけど…」となだめたりしながら(笑)、何とか無事完成にこぎ着けた楽曲です。


>>次ページではユリオFSのほか、南、ピチット、グァンホンの楽曲を解説♪