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『宇宙戦艦ヤマト2202』神谷浩史が“最終章”への思い語る「気持ちのブレの果てに彼がどういう選択をするのか」

2019.02.28 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 3月1日に公開される劇場版『宇宙戦艦ヤマト2202』第七章“新星篇”の上映に向けて、神谷浩史さん(キーマン役)オフィシャルインタビューが到着した。

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──『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(以下『2202』)も、残すところ第七章「新星篇」のみとなりました。ここまできた率直なお気持ちをお聞かせください。

神谷:約2年掛かってようやく全てのアフレコが終了しました。全26話構成なので、およそ1ヵ月に1本のペースで収録していたことになりますが、そのような長期間にわたる関わり方をさせて頂いた作品は今回が初めてでした。無事に最終話まで辿り着けた時に、メインキャストの方々はこんなに長い旅を2回も経験していたんだなということに思い至り、改めて本当に頭が下がる思いでした。

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──第七章でキーマンが見せる姿は、第一章から観てきた方にとっては驚きだと思います。演じている神谷さんご自身はどのような想いで収録に臨まれていましたか?

神谷:ヤマトを利用することによって自分に課せられた大義を成し遂げるという想いで、キーマンは今までずっと命運を共にしてきたんだと思います。様々な選択をしてここまで辿り着いていますが、その中で彼の人間としての感情が持つもう一つの選択肢、つまり自分を必要としてくれる人、ないしは自分が必要としている人のために生きるという道は、どこかのタイミングで分岐して生まれていたんだと思います。ある時にバレルから「可愛い顔をしとるぞ」と言われてキーマンがハッとするシーンがあって、無意識的に彼が持っていたもう一つの選択肢が、彼の中でも明確になってきたのかもしれません。僕はそのことを全く考えずに演じてきていたんですけど、本編とは別のドラマCD(法人特典としてBlu-ray&DVDに付属)の収録をやっている時に気付きました(笑)。

 本編と同じ時間軸の中で語られる福井(晴敏)さん渾身の書き下ろし限定版ドラマCD“誰も聞いてはならぬ裏ヤマト”の中で、キーマンが抱いている明確な気持ちに触れる機会があって、そうだったのかと腑に落ちました。彼の中でも人間としての感情があって、自分が必要としている人に気持ちが向くということが選択肢としてあったんだなと。第六章までの道程で徐々に気付くというよりは、瞬間的にパッと出てきたものだったので、第七章でそれをどう自分の中で整理していくのかが一つの見どころなのかなと思っています。

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──過去のインタビューで福井さんに質問をよくされているというお話がありましたが、具体的にどのようなことを聞かれていたのですか? また、第七章に臨むにあたり、新たにお聞きしたことはありましたか?

神谷:最初は何も教えてくれなかったから戸惑いましたよ(笑)。よく分からないのにいきなりヤマトに乗るなんて理解できないので、「キーマンはどういうキャラクターなんですか?」とすぐに羽原(信義)監督と福井さんに聞きに行って、彼の置かれている立場や生い立ち、ヤマトに乗る目的などに関して、最初に福井さんから教えて頂きました。

 その情報がどの程度作品の中に生きてくるのかというのは状況によって変わるんですけど、やっぱり聞いておいて良かったなと思います。キャラクターの背景を知ったことで、裏ではこう思っているけど表面的にはこうしなければいけないという感情の動きも理解できました。

 ただ、キーマンは気持ちのブレがほとんどなく、常に論理的で最善の選択しかしないので、正直に言ってしまうと退屈な役でした。最初の頃は「全部言ってやりたいけど、そうもいかないしな…」というジレンマを抱えつつ、自分を納得させながらやっていましたが、途中からは自分が喋っている言葉と気持ちの揺れが一致してくるので、こちら側に判断が委ねられるようになっていきました。

 今までは出せる音が一つしかなかったんですけど、気持ちがブレれば色々なやり方を提案できるようになります。様々な演技のアプローチを提案するのは役者としては楽しい作業なので、一つしかないものを実直にやってくれと言われたところから解放された瞬間はよく覚えています。第七章に関しては、気持ちのブレの果てに彼がどういう選択をするのか、皆さんに観て頂いて感じてもらいたい部分ですね。

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──第七章の変化するキーマンを、どのようなアプローチによって見せていこうと考えていましたか?

神谷:自分からアプローチを変えようと思ったことはないです。福井さんから教えて頂いた情報によってできたベースからしか考え方は発展していかないので、急に全く新しいアプローチを発想することには至らなかったですね。今までは、自分がやらなければならない使命がまずあって、そこに置かれた状況があって、その使命を全うするためにはどういうアプローチをしなければならないのかという一つの考え方しかありませんでした。

 その使命を全うした後は彼の判断に委ねられるので、例えば第五章でキーマンが古代に銃を突き付けた時は、羽原監督と福井さんにこの後どうなるのかを聞いて確認するというようなやり取りはありました。自分の中で想像できる範囲のことを取り立てて質問することはないんですけど、答えが分からないことに関しては自分が思い違いをしていると演出と掛け離れた音しか出てこないので、その都度お伺いしていました。答えを持っている方(福井さん)がいつも変なTシャツを着て後ろにいらっしゃるので(笑)、すごく安心感がありました。

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──収録時の印象に残っているエピソードがあればお聞かせください。

神谷:これだけのベテランの方々とご一緒できる作品はなかなかないので、収録は毎回楽しかったです。石塚運昇さんとは(2018年)2月の収録でお会いしたのが最後でした、その後は忙しい方だから抜き録り(一人での収録)なのかなと思っていたので、まさかあんなこと(2018年8月に逝去)になるとは思ってもいませんでした。

 最後の収録の時も、収録の直前までロビーで楽しそうに(大塚)芳忠さんと運昇さんが話していたので「何話していたんですか?」と聞いたら、「健康の話題は尽きないね」と仰られていたので、まさか健康を損ねていらっしゃるとはこれっぽっちも思いませんでした。ご自身の体調のことを微塵も感じさせないあのお姿は本当に素敵でしたね。いつまでも健康でいて欲しいですし、この人たちとずっと一緒に仕事をしたいなと思いながら、『2202』の収録をしていました。

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──共演する機会の多かったデスラー役の山寺宏一さんとのエピソードは何かありますか?

神谷:一つの答えしかない窮屈なキャラクターだったキーマンが、山寺さんが来てくださったことで変わりました。デスラーと会話するシーンになった瞬間に、ありとあらゆる選択が僕に委ねられている状況になりました。山寺さんと喋っていると、その選択肢がとても豊かになるんですよね。自分がやっていることを受けてまた違うボールを返し続けてくれるので、自分が出した選択肢の中でちゃんと良いものが選べているという感覚を持って芝居ができました。それが本当に楽しくて、終わった後に「今日の収録スゲー楽しかった!」って小野(大輔)くんに言っていた気がします。「じゃあ、それまで退屈だったんですね」って返されて、思わず口ごもりましたけど(笑)。

 あとは、健康器具の話をずっとされていた山寺さんから「イェーとかウォーみたいな名前のやつ、持ってる?」って聞かれて困惑したんですけど、調べたら「バーンマシーン」のことを言っていたことが分かって(笑)。後日、僕が「バーンマシーン買いましたけど、悪くないですよ」と話したら、買うかどうかその場で真剣に悩まれていたこともありましたね(笑)。

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──キーマンの第七章での選択に関して、神谷さんご自身はどう思われましたか?

神谷:台本を頂く前にその結末だけを福井さんに言われて、表面上はすごく冷静に聞いていたんですけど、内心は「うわぁ、福井晴敏にスゲーネタバレされたわ…」と思っていました(笑)。いざ台本を読んでみるとそれは納得せざるを得ない選択だったので、そこに至るまでにキーマンがヤマトクルーたちと培ってきた信頼関係が大切になってきます。信頼関係は時間の経過でしか育むことができませんが、通常のTVアニメは半年程度で終わってしまうところを『2202』はおよそ2年かけてそこまで辿り着いています。劇中で彼らが過ごしている時間はもっと短いですけど、その間で起きている出来事は本当に激動で、常に命の危険に晒されていて、最善の選択をしなければ生きていけない状況です。

 例えば、半年間毎週アフレコをしてその感情に至ることも可能だとは思いますが、この2年という長い間作品に関われたことで、先程お話したようなベテランの方々とのやり取りだったり、小野くんや(鈴村)健一くんたちと一緒に過ごしたこともプラスされていきます。それによって、その選択に至る際の納得の度合いが高まったんじゃないかなと思っています。2年間のアフレコはよっぽどですけど、その長さは決して無駄じゃなかったですね。

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──長きに渡って『2202』に関わってきた今、改めて『宇宙戦艦ヤマト』はどのような作品だと思いますか?

神谷:これは前から変わっていないですけど、やっぱりSFの古典ですよね。『宇宙戦艦ヤマト』の歌を歌えれば大体の話が分かるので、浦島太郎や桃太郎といった昔話と同じくらい誰もが知っているものです。古典は事あるごとに新しい解釈を得て、今の人たちに伝わりやすいようにその時代の優秀なストーリーテラーが再構築をして、その時代に合った物語に姿を変えて届けられていくものだと思います。そうなっていくための布石として『宇宙戦艦ヤマト2199』があって、今回の『2202』は福井さんがメスを入れて、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』という古典を現代に甦らせているという解釈を僕はしています。

 古典という言葉から古いもののイメージを持たれてしまうと困るんですけど、色々なものに影響を与えた全ての原点であって、それ以上のものはないというところに辿り着いたもの。そこに対してどうやって手を加えていくんだろうと最初は思っていましたけど、担当されるのが福井さんだと分かった時点でこの作品は絶対に面白いものになるだろうと確信していました。大船に乗った気持ちで作品に参加できるなというところからのスタートで、収録中もその気持ちは全然ブレなかったですね。

 こんなに難しい物語を書く人で、日本中の人が知っているベストセラー作家で、最初は福井さんが何を考えているのか分からなかったので怖かったんですけど(笑)。変なTシャツ着て毎回アフレコに来てくれるし、ありがたいなと思っていました。限定版ドラマCD“誰も聞いてはならぬ裏ヤマト”の台本をもらって驚きのあまり、「こんな台本も書くんですね?」って福井さんに聞いたら、「はい、書くんです」と答えられて(笑)。そこからは気軽に話しやすくなりました。時間を経て、作品を通して、関係値を築いていくことができました。『宇宙戦艦ヤマト』に対するイメージ、『2202』に対するイメージは全く変わらなかったです。

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DATA
■『宇宙戦艦ヤマト2202』

『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』第七章“新星篇”<最終章>
2019年3月1日より全国35館にて期間限定劇場上映開始
上映劇場にて3月1日より特別限定版Blu-ray最速先行販売!
デジタルセル版同時配信スタート

STAFF:
製作総指揮=西﨑彰司
原作=西﨑義展
監督=羽原信義
シリーズ構成=福井晴敏
副監督=小林誠
キャラクターデザイン=結城信輝
音楽=宮川彬良・宮川泰
アニメーション制作=XEBEC
製作=宇宙戦艦ヤマト2202製作委員会

CAST:
古代 進=小野大輔
森 雪=桑島法子
島 大介=鈴村健一
真田志郎=大塚芳忠
キーマン=神谷浩史
サーベラー=甲斐田裕子
ズォーダー=手塚秀彰
テレサ=神田沙也加
沖田十三=菅生隆之

©西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト 2202 製作委員会

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