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『七つの海のティコ』90年代のアニメは凄かった! 94年1月スタート

2018.04.21 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

『この世界の片隅で』の片渕須直も参加

1994年1月スタート『七つの海のティコ』

『七つの海のティコ』
 1994年1月16日からフジテレビ系で放映

七つの海のティコ(1) [DVD]

※Amazonより

 かつて日曜夜19時30分といえば、日本アニメーション製作のアニメ『世界名作劇場』という時代がありました。1974年の『アルプスの少女ハイジ』はズイヨー製作でしたが、1975年の『フランダースのイヌ』からは日本アニメーション製作で、2009年の『こんにちは アン』まで、26作品が作られています。その第20作の記念作品として製作されたのが、シリーズ唯一のオリジナル作品『七つの海のティコ』です。1年間放映されましたがナイター中継などで全39話となりました(本放送時は第31話がナイター中止時に放送される予定でしたが雨天中止にならず放映されませんでした)。リアルタイムの舞台や、日本への立ち寄りなど、シリーズ初の試みも多い意欲的な作品です。なお、監督は『ちびまる子ちゃん』などの高木 淳で、設定協力で『この世界の片隅で』の片渕須直も参加しています。

 海洋動物学者のスコット・シンプソンは11歳の一人娘・ナナミと、友人のアルの操るオンボロ海洋探査船ペペロンチーノ号で世界中の海を廻っていました。ナナミが生まれたきと同時に衰弱していたところを助けられたメスのシャチ・ティコも同行。ナナミとティコはお互いのことが分かり合う、親友以上の関係です。
 スコットの研究テーマは幻のヒカリクジラ。ペペロンチーノ号がサンフランシスコ湾に立ち寄ったとき、メルビル財閥のお嬢様のシェリルが執事のジェームスを伴って、冒険に縁がありそうだとペペロンチーノ号へ強引に乗船します。その後、スコットの研究者仲間で、研究手法で対立するルコントの息子、トーマスも加わって、ペペロンチーノ号はヒカリクジラを求めて旅を続けます。
 ルコントの支援をしているGMC社は、ヒカリクジラの体組織に含まれるトロンチウムが目当てで、ナナミたちと何度も争うことになります。途中、ティコは大西洋でティコジュニアを出産。ティコ自身は北極海でアルを助けるために絶命してしまいます。
 その後もナナミたちの旅は続き、日本に立ち寄った後に南氷洋へ。ついにヒカリクジラと出会うのですが、国際南極財団(GMC社の別組織)によりヒカリクジラは捕獲されてしまいます。GMC社はトロンチウムをICチップの触媒として使用すると千倍以上の処理能力を実現できるとして、ルコント博士の研究を支援してきたのですが、実はヒカリクジラの生物兵器利用を目論んでいたのです。
 かくして、ルコント博士は離反してスコットとともにヒカリクジラを解放しようとします。さらに、ヒカリクジラの声に導かれて集まった海洋生物たちによって南極財団の研究所は壊滅。ナナミは捕獲されていたカプセルからヒカリクジラを解放しました。ヒカリクジラはナナミに不思議な力を見せた後、どこかへと姿を消してしまいます。ヒカリクジラを巡る冒険は終わりましたが、ナナミたちは今もペペロンチーノ号で世界中の海を冒険していることでしょう。

 この作品の主人公はアメリカ人の父と死別した日本人の母との間に生まれた少女、ナナミです。ほとんどペペロンチーノ号で過ごしている彼女にとって、唯一の友がシャチのティコ。当然ながら遊び場は海なので、自然に鍛えられたナナミは素潜りで100メートル以上、数分活動できます。一方、シャチのティコは訓練されたわけではありませんが、ナナミの求めに応じてジャンプなどをこなします。ナナミとティコの息のあった海中での活躍が見どころでした。ティコジュニアもたちまちナナミと巧みなコンビを見せるようになりました。また、ポンコツ探査船のペペロンチーノ号は、砕氷船をベースに改造されたオーバースペックの船です。エンジンがしばしば止まるのは、古いだけでなく改造が原因のフシがありました。元砕氷船の頑丈さがウリなので、ちょっとした改造で陸を走るような無茶もできます。それでいて1000メートルの深海まで耐えられる潜水球のスクイドボールなどの装備も充実しています。このほかにGMC社の大型海洋調査船・スコーピオ号とそこに搭載された潜水艇・アルファ号。シェリルの家であるメルビル家が保有する、クルーザーやヘリコプター、キャッチレーボートやクローゼット専用船など、名作劇場らしからぬメカが登場。ここもちょっとした見どころです。

 キャラクターとしてはスコットが研究者ということもあり、荒くれ者タイプの海の男は多くありません。ただ、シンプソン家は父子家庭で、トーマスは両親が別居中など、家族はテーマのひとつでした。ペペロンチーノ号の5人と1頭は擬似家族として支えあいます(ジェームスは執事なので家族には数えません)。ヒカリクジラを巡る冒険の後、シェリルとトーマスは船を下りますが、それは家に戻るため。このあたりは、やはり『世界名作劇場』らしさを発揮ししていると言えます。

 声優の豪華さも特筆ものです。ナナミ・シンプソン役を林原めぐみ、スコットを池田秀一、シェリルを水谷優子という当時も人気の実力派声優を揃えていますが、意外な事にこの3人は『世界名作劇場』には初出演だったとのこと。池田秀一にとっては初めての父親役でもありました。このほか、アルに緒方賢一、ジェームスに増岡 弘、ルコントに納谷六朗、ゲストにも人気声優が起用されました。

 ちなみに、GMC社の女幹部、ナターリャ・カミンスカヤ・ベネックス(声/川島千代子)は、『世界名作劇場』では希有な改心と無縁の悪の女性です。動物の命なんてなんとも思っていません。しかも、『世界名作劇場』だというのに、爆死という壮絶な最期を遂げているのも彼女だけです。

1994年1月スタートのアニメはこんな作品もありました。
『赤ずきんチャチャ』
『勇者警察ジェイデッカー』
『ママレード・ボーイ』
『美少女戦士セーラームーンS』

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