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平成の名作アニメ『おジャ魔女どれみ』の魅力とは? 思い出コラムで名作を振り返り

2019.04.28 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 2019年2月7日で放送開始から20周年を迎え、さまざまな20周年企画が発表されたアニメ『おジャ魔女どれみ』。本作は、1999年2月7日に第1期がスタートした平成の名作アニメのひとつです。

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 1999年2月7日に第1期がスタートし、2000年には第2期『おジャ魔女どれみ♯』、2001年には第3期『も~っと!おジャ魔女どれみ』、2002年には第4期『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』が放送。さらに劇場版やOVA『おジャ魔女どれみナ・イ・ショ』、2011年~2015年には小説『おジャ魔女どれみ16』シリーズなど、さまざまな形態で展開されてきた本シリーズ。

 PASH!PLUSでは、20周年という記念すべき節目に合わせて、『おジャ魔女どれみ』を全3回にわたり大特集! 平成の終わりを前に、第1回“思い出コラム”、第2回“スタッフ座談会”、第3回“おジャ魔女キャスト座談会”の3つの記事をチェックしてください♪

 今なお愛され、視たことがない人には今からでも視てほしい名作『おジャ魔女どれみ』に注目です!

ただの魔法少女アニメじゃない。キャラクター1人1人の物語を丁寧に描いた名作を振り返る

 1999年2月7日、日曜日の午前8:30に『おジャ魔女どれみ』はスタートしました。1月まで放送されていた『夢のクレヨン王国』も魔法少女テイストがあったものの、東映アニメーションオリジナルの魔法少女ものは1984年の『とんがり帽子のメモル』(実質的にはSFでした)以来。はたして、始まった本編は本来のターゲットである女児たちはもちろん、辛口なアニメファンも惹きつける名作となりました。

 番組は4年間続き、リアルタイムで時間が経過するスタイルだったので、TVシリーズは放送開始時に小学3年生だったどれみたちが卒業を迎える節目に大団円。と思いきや、好評を受けてOVAやさらにライトノベルでの続編などが発表され、その根強い人気を示してきました。2019年2月7日は、この『おジャ魔女どれみ』の放送開始から20周年になります。

 『おジャ魔女どれみ』最大の特徴は、キャラクターたちの活き活きとした描写にあります。本作を立ち上げたシリーズディレクターの佐藤順一さんが『きんぎょ注意報!』(1991年)で大胆に導入したマンガ的表現をさらに発展させた、場合によっては落書きっぽいデフォルメが目を惹きます。関節のない棒状の手足を波のように動かしたり円形にしてみたりすることは、ギャグアニメでもほとんどなかった表現です。

 その一方で、キャラクターたちの等身大の感情の動きをシリアスに語りかけてきます。ほどよくギャグが織り込まれるので重苦しくならないものの、それがかえってドラマとして視聴者の心に深く染みいる匠の技です。泣かせるための演出技法がふんだんに使用され、確実にファンの涙腺を攻撃しました。

 物語は、主人公の春風どれみ(CV.千葉千恵巳)が小学3年生になったばかりの頃からシリーズは始まります。どれみがちょっとした悩みから怪しげな雑貨店魔法堂(のちのMAHO堂)にたどり着き、その店主のマキハタヤマリカが魔女であることを看破。その瞬間にマキハタヤマリカは魔女ガエルという、カエル(に見えなくもない謎の生物)になってしまう。

 魔女は正体を見破られると魔女ガエルになるという仕組みで、元に戻るためには看破した者を魔女見習いから魔女に育て上げ、その力を使ってもらうらしいのです。マキハタヤマリカという名前も仮の名で、本名はマジョリカ(CV.永澤菜教)でした。とはいえ、その頃魔女に憧れていたどれみは魔女見習いになれて大喜びで、マジョリカの話もまともに聞きません。マジョリカの不安が募ります。

 その後、どれみの幼馴染みの藤原はづき(CV.秋谷智子)、大阪から転校してきてすぐに親しくなった妹尾あいこ(CV.松岡由貴)も魔女見習いに仲間入り。

 4人めの瀬川おんぷ(CV.宍戸留美)は、マジョリカのライバルだったマジョルカの魔女見習いで、『も~っと!おジャ魔女どれみ』で加わった5人めの飛鳥ももこ(CV.宮原永海)は、アメリカ・ニューヨークのMAHO堂のマジョモンローの魔女見習い。縁あって、ふたりもどれみたちの仲間になりました。また、どれみの妹のぽっぷ(CV.石毛佐和)も魔女見習いになりますが、4歳違いということもあり、みんなの後輩かつ妹ポジション。

 そしてもうひとり、魔女界の次期女王候補のハナ(CV.大谷育江)。『おジャ魔女どれみ♯』でどれみたちはハナの誕生に立ち合い、母親変わりに1年間育てます。特にどれみのことを一番のママとして認識しているよう。

 しかも『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』では、どれみと一緒の学校に行きたい気持ちから6年生相当に成長。マキハタヤマリカの親戚、巻機山花として編入してしまいます。しかもこの急成長によって、魔女の証の水晶玉が粉砕!

 魔女に戻るため魔女見習いとして試験を受けることになりますが、もともとの魔力が普通の魔女とは桁違い。加えて、ハナは身体が成長しても中身が2歳児のままなうえ、いつでも魔法を使っていい魔女界と真逆の人間界の常識の違いなどから、予想外の事件が連続します。どれみたちは、かつてマジョリカがしてきた苦労を味わうことになりました。

■どれみとおジャ魔女仲間たちの魅力

 どれみというキャラクターの魅力は、一言で言うなら元気で明るく前向きなところです。お調子者のドジっ子なので、考えうる最悪の失敗をしてみせますが、それで挫けることはありません。なにより相手の気持ちを考えられるのが、どれみの長所です。妹のぽっぷがいることもあって世話焼き気質。はたから見ると、超がつくほどのお節介気味です。ただ、もれなくドジがついてくるので、世話を焼かれた相手も世話を焼き返さないといけない、という場面が多々。それは強みでさえあります。

 容姿としては、大きなふたつのお団子頭が特徴ですが、長い髪を下ろしたシーンも少しだけあったりします。髪を下ろしたビジュアルは可憐な雰囲気があり、いつものズッコケ娘がお嬢様風になるギャップが人気です。

 そんな彼女がすべての思考をストップして欲しがる大好物で、彼女の欲望の塊ともいえるものがステーキ。なにしろ魔女見習いになって最初に使ったのが「ステーキを出す」魔法なのです。しかし、魔女見習いになり立てのため魔法が長持ちせず、食べることはできませんでした。

 その後もステーキへの想いを断ち切れず、見習い試験に落ちるなど度々失敗をしてしまいますが、懲りることはありません。そして“どれみはステーキを食べられない”というのがお約束の展開となり、彼女はシリーズを通して最後まで、ステーキを食べることはできませんでした。

 そして発するのが彼女の代名詞「私って世界一不幸な美少女~!」というセリフです。実はこのフレーズはどれみが自分を慰め、現実を受け入れるものです。決して自分の境遇を悲観して負の感情を募らせるものではなく、口に出すことで苦悩を発散、リセットします。喜怒哀楽が激しい、どれみならではのセルフコントロールと言えるでしょう。

 どれみのおジャ魔女仲間もユニークな個性がありました。幼馴染みの親友はづきは、メガネとリボンが特徴のお嬢様キャラです。どれみの明るさと自由さに憧れており、お嬢様ゆえかちょっとズレたところも。ヴァイオリンが上手で、いずれはプロの奏者になりたいと思っています。もちろん、そのために魔法を使うことは考えていません。不良っぽい幼馴染みの矢田まさる(CV.宮原永海)との関係を描いたドラマが印象的でした。

 どれみのドジにはづきはボケてしまうので、ボーイッシュなあいこがツッコミとして加わるとバランスがよくなります。あいこは大阪生まれの元気な人情家。広いおでこがチャームポイントです。大好きな父(お父ちゃん)に楽をさせたい、幸せになってほしいという理由で魔女見習い修行に精を出しました。離婚してしまった両親の復縁を望んでいますが、人の心を変える魔法はタブーです。大阪で暮らす母の様子を見に行ったり、父の見合い話をぶち壊そうとしてみたり…最後には両親の復縁の最大の壁である祖父を土下座で説得したりと、あいこの両親をめぐるエピソードは多彩でした。

 登場当初、3人とは少し距離を置いていたのがおんぷ。人気チャイドルとして活動中の芸能人で、登場してしばらくは壁を感じさせるところがありました。それでも自分を芸能人として特別視しないどれみに、少しずつ信頼を寄せていきます。プロ意識が高く、物語後半では自身の芸能人としての在り方に苦悩するエピソードも。

 マジョルカのところにいる頃は、人の気持ちを変えるタブーを破ることもしばしばでした。ただ、どれみの影響からか他人の気持ちを考えるように。第49話「パパに会える! 夢を乗せた寝台特急」では、電車の運転士をしている父が運転する記念の列車に乗りたいと考えていたのですが、直前のオーディションでライバルの子を助けたことで審査が延長になり、乗車時間に遅れてしまいました。このとき、諦めたおんぷをどれみたちが魔法で列車に移動させるシーンは感動的です。

 ももこはアメリカ帰りで、魔法のインカムがあれば日本語を話せますが、5年生で転校してきた当初は学校で英語でしか話せませんでした。ももこ自身はある程度日本語を理解できるので、どれみたちが話している内容はわかっています。ただ、話すことができないという難しい状態でした。

 なお、このとき番組中で日本語字幕はありません。現実に英語しか話さない転入生が現れても、彼らの話に字幕はありませんから。ただ、はっきりわからなくても、なんとなく通じあう、理解し合おうとするコミュニケーションというものを考えさせるものでした。編んだ髪を輪にしているのは個性的です。

 主人公の名前がどれみなのに、本人が楽器を演奏しないというのは、テレビ番組としては意外なものと言えます。妹もぽっぷなので、音楽一家として描くのがオーソドックスな手法でしょう。その秘密は劇場版『おジャ魔女どれみ♯』とそれに続く『おジャ魔女どれみ♯』の第40話「春風家にピアノがやってくる!」で明かされます。このエピソードでもそうですが、どれみとぽっぷの姉妹関係の見事さもこの番組のキモのひとつです。

 面と向かっては口げんかの絶えない兄弟姉妹であっても、お互いの姿が見えないところでは気にかけているもの。どれみとぽっぷもそうした関係です。魔女見習いの進級試験のとき、どれみは夜に弱いぽっぷをなんとか起こそうとして奮闘しています。また、『おジャ魔女どれみ♯』で女王から魔女見習いに戻れると聞いたときも、どれみはぽっぷにも同様の処置を求めています。どこまでも面倒見のいい姉という側面はあまりアピールされませんが、シリーズを通してさりげなく描かれています。

■クラスメイトにモブはいない!設定が作り込まれた友だち

 小学生のどれみたちの物語なので、中心になるのは学校生活。今どきの小学校をリサーチした現代的な学校の規模で、児童数はあまり多くありません。クラスメイトを描くエピソードは、同学年の全員を網羅しています。ここでも、今どきの学校ならではの、帰国子女や片親などの家庭が存在します。このあたり、社会派ともいえますが、やはり深刻にならない、けれど観ている子どもたちには伝わるレベルで物語がつづられていきます。

 特に注目されるのは、第3シリーズにあたる『も~っと!おジャ魔女どれみ』の第20話「はじめて会うクラスメイト」。不登校のクラスメイト、長門かよこのエピソードです。学校に来ないクラスメイトを登校させるのは学園アニメの定番です。『魔法使いサリー』(1966年)にもこれに類するエピソードがありました。

 ただ、これまでは心の病の部分が描かれることはなく、1話完結でめでたく登校しています。それが長門かよこの場合は全3話に渡って丁寧に描かれており、この第20話のラストでは登校できません。学校に行きたい気持ちはうまれていたのに、身体が拒否してしまうラストでした。

 不登校を真剣に考えさせられる内容なのですが、どれみは給食のステーキ丼のためならかよこが登校するに違いないと確信していたり、挙げ句に自分もそのステーキ丼を食べ損ねたり、ギャグ度はむしろ高めでさえあります。そんな仕掛けで重苦しさを抜きつつ、かよこの深刻さを残しながらも、この後につづく展開を期待させる秀逸な物語でした。

 魔女と魔女見習いの間の存在であるハナは、シリーズ全体を見ると絶妙な位置にいました。最初に登場した『おジャ魔女どれみ♯』では「成長」というシリーズを通してのテーマを体現する存在です。そのあとの『も~っと!おジャ魔女どれみ』、『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』では、シリーズの発端となる事件の発生源です。発生源でありながら、敵役ではありません。

 大きな悪を倒すドラマでも、なんらかの障害を乗り越える物語でもない『おジャ魔女どれみ』にあって、愛されるトラブルメーカーなのです。しかも、キャラクター関係としては次期女王候補という高い地位にあるのが面白いところです。

■魔法は絶対の力ではないという描写

 そしてなにより、この作品は“魔法が絶対の力を有していないこと”がポイントです。これまでの魔法少女ものでも、魔法よりもたいせつなものがある、という描写はありました。『おジャ魔女どれみ』のなかの魔法が、これまでの魔法少女もので使われてきたものより威力が小さいことはありません。

 命にかかわる魔法と人の気持ちを変える魔法はタブーで、大きな魔法には代価が必要という縛りはありますが、女王といった強力な魔力の持ち主などは、明らかになんでも叶えるだけの力を持っています。まだ魔女見習いのどれみたちは仲間たちと協力するマジカルステージで力を補い、いくつもの大事件に対処してきました。

 そんなどれみたちですが、最初の3シーズンは最大の危機を乗り越えるために魔女になることを諦めざるを得ませんでした。ところが、4年めの魔女見習い生活の最後の決断は、魔女にならないことを自ら選びます。自分たちで魔女にならないことを選択した彼女たちの決断には、テレビの前のお子さんたちもかなり考えさせられたことでしょう。

 実は日常エピソードで魔法が効果的に使われたことはさほど多くありません。事件を盛り上げることは多いのですが。どれみたちは魔法がなくても、自分たちの力で問題を解決できるほどに成長していました。そして、4年目のシリーズのテーマは「卒業」。小学校だけでなく魔法からも卒業するどれみたちが描かれたのです。

 テレビシリーズを中心に語ってきましたが、『も~っと!おジャ魔女どれみ』のサイドストーリーであるOVA『おジャ魔女どれみナ・イ・ショ』はもちろん、高校生以降のどれみたちを描くライトノベルのシリーズも、こうしたキャラクターから外れることなく完成されていました。魔女になることはやめたどれみたちですが、人間界と魔女界をつなぐ橋としてこれからも長く働いていきそうな気がします。

DATA
■『おジャ魔女どれみ』
『おジャ魔女どれみ』20周年記念公式サイト:http://www.doremi-anniv.com/
『おジャ魔女どれみ』20周年記念公式Twitter:@Doremi_staff

©東映アニメーション

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