発売記念SS公開! 『私、魔王。ーなぜか勇者に溺愛されています。』

2017.09.29 <PASH! PLUS>

勇者→→→→→魔王 の溺愛コメディ、発売記念SSです♪

(c)Punichan

本日発売のPASH!ブックス最新巻

『私、魔王。−−なぜか勇者に溺愛されています。』

(著:ぷにちゃん イラスト:柚希きひろ)

発売記念SSを特別に公開! 

特典情報などの詳細はコチラ

 

【ソラの居場所】

 

 「はあぁぁ~」  

 ソラの口から盛大なため息がもれて、控えていたメイドがびくりと肩を揺らす。王城内に用意されている、ソラの部屋付きのメイドだ。
 その様子に気付き、ソラが「ごめんね」と謝る。
 ソラはちょうど国王に呼び出されて、オリヴェルをまだ殺せないのかという文句を聞いてきたばかり。部屋に帰ってゆっくりしようかと思ったけれど、同じ空間に国王がいると想像するだけで嫌な気持ちになってしまう。  
 ――オリヴェルさんのところに、遊びにいこっかな。
 我ながらナイスアイデアだと、ソラはにんまり笑う。でも、それならば何かセシリアにお土産を買っていかなければとも考え、メイドに問いかける。

  「ねぇねぇ。どこか美味しいお菓子屋か何か知らない? スイーツ系」
 「ええと、そうですね……この間お教えしたチョコレート店の姉妹店が、マカロンの専門店を やっていてとても評判がいいです」
 「マカロン……いいね、それ」

 美味しそうだ。今日のお土産はそれに決定して、ソラは自室を飛び出した。

 

 ◇ ◇ ◇

 目当てのマカロン専門店は、大通りにあった。可愛らしいピンクのリボンで装飾された店舗は、やはり女性に人気があるのだろう。

 「うわ、すっごい人だ……並ばないと店に入れないか」  

 ソラは大人しく最後尾に並んで、順番を待つ。  
 列の前から回ってきたメニュー表を見て、カラフルな色合いにわくわくしてしまう。ピンク、白、緑、青。とりあえず一人三個ずつくらいでいいかなと、美味しそうな味を選んだ。  
 ――魔王ちゃん、食べてくれるかなぁ。  
 オリヴェルの機嫌が悪い場合は、お土産が全部ゴブリンのものになってしまう。別にゴブリンにあげること自体は問題ないけれど、せっかくならセシリアとオリヴェルにも食べてもらいたい。
 しばらくして順番がくると、ソラは想定していたよりもたくさんのマカロンを購入してしまった。……実物を見たら、どれも想像以上に美味しそうだったから。

 

 ◇ ◇ ◇

 「あ、今日もオリヴェルさんの家は結界が張ってある」  

 とはいえ、ソラは破って侵入することができるからいいけれど。
 ――というより、すり抜ける感覚に近いかな?  
 破損した結界をそのままにしてしまうと、国王の手先である兵士たちが勝手に入ってきてしまう。あくまでも、ソラ一人だけが中に入れる状況というのが大事なのだ。  
 オリヴェルの張った結界を通り抜け、その場所を確認する。もし破れていたりしたら、苦手ではあるが魔法を使って修復するのだ。

 「てか、唯一上達してきた魔法が結界の修復っていうのもどうなんだ……」  

 もしかしたら、勇者を辞めて結界職人にでもなった方が儲かるのではないだろうかとソラは考えてしまう。まぁ、そんなことをしたら国王が怒り狂うだろうけれど。

 「オリヴェルさ~ん、魔王ちゃ~ん、ゴブリ~ン!」  

 遊びに来たよ~と言いながら、ソラはチャイムを押す。  
 すぐに「はいはーい」というゴブリンの声が聞こえ、やっぱり今日の出迎えもゴブリンか~とソラは笑う。

 「いらっしゃいませ」
 「やっほ。オリヴェルさんと魔王ちゃん、いる?」
 「いますよ。今日はジグソーパズルをしています。大きいやつ」
 「うわ、また大変そうな遊びしてる……」  

 ソラはゴブリンにお土産のマカロンを渡し、まるで自分の家のように中へ入っていく。一直線でリビングに入り、「遊びに来たよ、まぜて~」とセシリアとオリヴェルに声をかける。  
 そんなソラを見て、オリヴェルは露骨に不機嫌そうに眉をしかめた。

 「まーた俺とセシリアの邪魔しに来たのか」  

 邪魔だ帰れとオリヴェルが告げるけれど、ソラはそれくらいではめげない。テーブルの上に広げられたパズルを見て、仲間に加わるために手を伸ばす。

 「いいじゃないですか、可愛い勇者の後輩なんですから」
 「そんな後輩いらない」  

 あははと笑うソラと、しっしと追い払おうとするオリヴェル。

 「ジグソーパズルなんて、懐かしくて腕が鳴るね!」  

 そういって、ソラはバラバラになっているピースへと手を伸ばして遊びに加わる。
 オリヴェルが浅くため息をついて、好きにしろとばかりにパズルへと戻る。
 ――なんだかんだで、オリヴェルさんは優しいよね。  
 もし本当にソラが気に入らないのであれば、結界を強化してしまえばいいのだ。いつも、ギリギリでソラが侵入できる強さの結界を張っているのがいい証拠だ。      
 しばらく、室内にはピースをはめる音だけが流れた。

 「……! ソラ、いつの間に?」
 「え、魔王ちゃん俺が来てることに気付いてなかったの?」  

 パズルに熱中していたセシリアは、少し休憩しようとして顔を上げ……突如現れたソラに驚 いた。

 「セシリアはパズルに夢中だったからね、本当可愛い……ぎゅってしたい……」
 「はいオリヴェルさんアウトー」
 「うるさいソラとっとと帰れ」
 「嫌でぇーす」
 「…………」  

 ――にぎやか。  
 セシリアが口を挟んだりしないため、二人の低レベルな言い争いが続く。まぁ、別段害があるわけではない。そう思って、セシリアはいつもこの二人を放っておく。
 楽しそうなソラとオリヴェルを見ながら、セシリアはゴブリンの持ってきた紅茶とマカロンで一人休憩をするのだった。

 

 <終>

 

◆STORY◆

 王命により、仲間とともに魔王討伐へと向かった勇者オリヴェル。あっさりと倒した魔王の正体は見目麗しき美少女セシリアで、なんとオリヴェルはヒトメボレ(しかも初恋)! 
 思わず自宅へお持ち帰りして、ひたすらに、狂おしいほどに甘やかす。しかし周囲がそんなこと許すはずもなく、勇者は今日も国軍と諍いを繰り広げる。しかし当のセシリアは、残念ながらそんなオリヴェルの思いに1ミリも気づくことはなく……。
 「勇者は、私をどうしたいのでしょう…? 何かに、利用するつもりなのでしょうか」

思い込みとすれ違いの共同生活の果てに、勇者の愛が魔王に届く日は来るのだろうか!?

 

DATA 
『私、魔王。–なぜか勇者に溺愛されています。』

価格:本体1200円+税
判型:四六判
著:ぷにちゃん イラスト:柚希きひろ

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