発売記念SS公開! 『最強魔法使いの弟子(予定)は諦めが悪いです』

2017.06.30 <PASH! PLUS>

ツンデレ師匠と押しかけ弟子の物語、発売記念SSが到着!

(c)SAEKI-SAN

本日発売のPASH!ブックス最新巻
『最強魔法使いの弟子(予定)は諦めが悪いです
(著:佐伯さん イラスト:あり子)

発売記念SSを特別に公開! 

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『保護者<旧>と保護者<新>』

「げ」
「げ、とはなんだ、げ、とは」
 市場で買い出しをしていたらたまたまテオと鉢合わせたが、テオは俺の顔を見るなり明らかに顔を歪めた。
 好かれているとは思っていないし、先日、ソフィと喧嘩したときからテオとの関係は余計に悪化している気がする。気がするじゃなくて現に悪化しているから、向こうも舌打ちせんばかりの勢いなのだろう。
「別に。ただ元気そうで何よりで」
「お前も元気そうで何よりだよ」
 やはりというか、テオは俺が嫌いらしい。……弟子を泣かして傷付けた、この時点で彼にとっての俺の評価は最底辺まで落ちているようだ。
 元々普段から無表情なやつではあったが、俺と会うと無表情が険を帯びる。
「……ソフィは元気にしているのか」
「おう、いつもどおりだ」
「あれから泣いたりしていないよな」
「泣かせてない」
 疑り深いテオであるが、さすがに俺もあれからは泣かさないように傷付けないように、気を付けている。……気丈に振る舞っていたあいつに甘えた俺が悪かったのだ。
 いつ帰るかも分からない俺を一年半もの間一人で待たせた。勝手に戸惑って拒んで傷付けた。泣かせた。
 仲直りをしたものの、傷付けた事実は変わらないのだ。これ以上、何もかも笑って包み隠そうとする繊細なあいつを傷付けるわけにはいかない。
「……まあ、それなら良い。次泣かせたら切る」
「物騒なこと言うなあ。……もう泣かせたりしないから」
「そう信じてる」
 さりげなくに手をかけていたテオは剣から手を離し、小さく溜め息を落とす。余程俺が何かするのを警戒しているらしい。
 テオは馬鹿弟子を非常に可愛(かわい)がっている。可愛がられている本人はあまり気付いていないが。俺があのまま弟子に冷たい態度を取り続けていたら間違いなくテオとイェルクはソフィを自分たちの家に避難させていただろう。
 ……そこまであいつが大切なら、テオは俺と馬鹿弟子が一緒に暮らすのは面白くなかったのではないだろうか。
 もしかしたら、恋情のようなものを抱いているなんてことも、あり得る。割と人たらしな弟子だ、小さい頃からずっと側にいたならそういう感情があってもおかしくはない。
「……お前さ、弟子のことが好きなのか」
「好きだが」
 さらりと答えられて、絶句するしかない。
「といっても、これは恋とは違う。家族愛とか親愛とかそういうものはあるが、異性としては全く見てない。可愛い妹としてしか見てないし、人間として好きといえば良いだろうか」
「お、おう……そうか」
「人に聞いといて何なんだその態度。そういうあんたはどうなんだ」
 じ、と切れ長の瞳に見つめられると、ものすごく居心地が悪くなる。
 どうなんだ、と言われても、どう答えるべきか。
 もちろん人としては好ましく思っているし、でなければ側に置かない。気立てはいいし家事はきっちりこなすし、努力家で目標に向かって努力は惜しまない。多少あざとかったりずる賢かったりはするが、それも本人の魅力の内だ。
 見かけも可愛いとも思う。幼かったあの頃に比べてずっと大人びた姿で現れた時は目を疑った。
 だからって好きとか、そういうものにいきなり発展するかと言われると、こっちも困る。……なるべく、見ないようにしているというのに。
 射抜くような眼差しを向けられると気まずくて、視線を逸らす。
「……可愛い弟子であり、一人の女の子としては、見ている。ただそれだけだ。人として好ましくはある」
「ほー」
「……何だよ」
「いえ、師匠から聞いた話では『オスカーはソフィちゃん気に入ってるし、後ろから支えてくれるタイプが好みだからひょっとしたらねー』とか言ってたので、てっきり落ちていたものかと」
「あんにゃろ何言ってやがる」
 こいつに何を吹き込んでるんだあの野郎。好みのタイプなんて話したことがないだろうが。しかもそんなデマをテオは疑っていないし。
 顔を顰(しか)めるものの、テオは意に介した様子もない。
「まああんたがソフィをどう思おうが勝手ですが、悲しませたり蔑(ないがし)ろにしたら切ります」
「しないって言ってるだろ」
「何をしないんですか?」
 やけくそ気味に答えると、横からあっけらかんとした声が聞こえてきた。
 聞きなれた声は、視線を投げずとも誰か分かる。テオは俺に向けていたものとは打って変わって柔らかな眼差しに。
「ソフィか、元気にしてたか?」
「え? うん、元気だよ。どうしたの二人とも、二人で話してるとか珍しいね」
 ひょこ、と俺の側にやってきた弟子は、いつものように屈託なく笑う。まだあどけなさの残る顔は、俺とテオを見比べておかしそうに緩んでいた。
「……弟子よ、何で外に出ている」
「え? 夕ご飯の材料の買い出しですよ。ちょっと食材足りなかったんですよね」
 今日はポタージュとチキンソテーとサラダです、と本日のメニューを言ってにこにこしている弟子。
「そういう二人は何を話してたの?」
「ソフィが危なっかしいからこいつにちゃんと面倒見とけよと言っておいた」
「もう、テオ! こいつ呼ばわりしないの! あと私はしっかりしてるのでむしろ師匠の面倒見てますー」
 えっへん、と胸を張った弟子にテオが呆れ顔をこちらに向けてくる。……うるさい。弟子が家事できるからつい任せきりにしてしまうんだよ。感謝は、かなりしてる。
 さすがに今お礼を言うのも恥ずかしいので、くしゃりと白銀の髪を撫でてやると、嬉しそうに口許を綻(ほころ)ばせる弟子。
 そんな弟子にテオは呆気にとられたように少しだけ目を丸くしたものの、やがて苦笑に変わる。
「……ま、ソフィが楽しそうならいいよ。おい、くれぐれも……分かってるな?」
「分かってるよ」
 にこにこしてる馬鹿弟子がいるから最後まで言わなかったのだろうが、何を言いたいのかはよく分かったのでしっかりと頷いておく。
 その反応に満足したらしいテオは、ゆるりと手を弟子に向けて振って去っていった。
「……何があったんですか?」
「別になんでもないよ。……ほら、買い出しするんだろう。俺が荷物持ちするから」
「おお、師匠今日は優しい!」
「今日は、が余計だ。……ほら、行くか」
 もう、あの日は過ぎさった。二度と同じ過ちは繰り返さないと誓った。その誓いをいちいち本人の目の前で繰り返すのはこっぱずかしくて、知らない振りをして手を握る。
 昔より少しだけ大きくなった手を握れば、ぱちくりと瞳を瞬(またた)かせて——弟子もまた、俺の手を握り返した。

<終>

STORY:
商家に生まれたソフィには、小さい頃から不思議な力が備わっていた。魔法使いになろうと決意したソフィは、たまたま訪れた魔法使いの青年オスカーに弟子入り……いや、弟子入りを迫ることを決意する!  たとえすげなく断られたとしても、諦めません。お茶菓子持参でだめなら、泣き付いてでも跪いてでも弟子にしてくれるまで離れません。夢の為なら額を地面に擦り付けでもしましょう。 「なので弟子にして下さい師匠!」 「勝手に師匠にするな!」  夢を叶えるまで、ソフィは諦めない……!

DATA:
最強魔法使いの弟子(予定)は諦めが悪いです
佐伯さん 著 あり子 イラスト
6月30日発売/定価1,296円(税込)/四六判

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