『ユーリ!!! on ICE』音楽制作チームが徹底楽曲解説!【後半戦】

2016.12.23 <PASH! PLUS>

中国大会&ロシア大会出場選手のSP&FSを深~く紹介♪

 

◆エミル・ネコラFS
『Anastasis』(3:42)
梅林太郎
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*「サイバーパンク、人間やめました。」というテーマのプログラム曲ということで、今時のゴリゴリなエレクトロサウンドに加えて、普遍性や未来的なビジョンを追求するため、あえてクラシックなテクノのスタイルもモチーフにしました。よりドラマティックな展開性を盛り込めていると思います。

Q.曲中に入っていセリフはなんと言っているのですか?

 あれは「Drop」と言っています。

◆ミケーレ・クリスピーノSP
『映画“Destiny Of Knights”より「L’homme Armé」』(2:14)
松司馬 拓
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*「騎士道精神」というお題でした。ミケーレはまっすぐなシスターコンプレックスの持ち主ということだったので、愚直なくらい真面目で忠誠心溢れる騎士凱旋マーチのイメージで松司馬くんと取り組みました。すると最初のデモが『水戸黄門』みたいになってしまって、「そっちの忠誠心かー!」と(笑)。そこからオクターブを上げて重心を上げることで西洋っぽさが出てきました。剣は分かりやすい騎士のイメージで振付にも有効だと思ったので、取り入れています。剣が出てきたら、じゃあ闘技場だ!ということで、騎士の勇気を試す対象として猛獣も投入してみました。リズム、SEアレンジはグァンホンFS同様、米田 望さんによるものです。ソリッドでケレン味があって、パンチが効いてます。


◆ミケーレ・クリスピーノFS
『Serenade for Two』(3:36)
梅林太郎 & 松司馬 拓 featuring Wouter Hamel
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*この曲はある意味初となる、梅林くんと松司馬くん2人による共作です。Ensemble FOVEの美しい演奏も相まって、とても高いレベルまで到達できました。梅林くんの書いた楽想とメロディとが本当に素晴らしくよくできていますし、松司馬くんのオケアレンジが相当趣向を凝らしたものなので、極めて流麗でドリーミーなアレンジに仕上がっています。多久潤一朗さんの美しいフルートの演奏も印象的で、とても素敵です。

*作詞のsugar meも素晴らしい仕事をしてくれました。ストレートだけど意味深にもとれる、技ありな英語詞を全編に渡って書いてくれたおかげで、ミケーレとサーラの“禁断の愛”感がより強まっていると思います。

*ボーカルを務めるのは、オランダのジャズ・プリンスことWouter Hamelさんです。“新世代のフランク・シナトラ”の異名をとる彼はまさにハマり役で、歌ってもらえて本当にラッキーでした。

*技術も手間も費用も、おそらく本作内で1、2を争うほどハイレベル&豪華です。…が、劇中では一度しか流れていません(笑)。とても良い仕上がりなので、またぜひ今一度聴き直してみてください。

◆ジャン・ジャック・ルロワSP
『Theme of King JJ』(3:42)
梅林太郎 featuring Linus Norda
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*北米的な抜けの良いオープンな世界観、王道ながらも駆け出してしまうようなダンサブルなグルーヴを意識してアレンジを進めました。ストリングスアレンジもシンプルですが、とてもキャッチーでいい感じです。ボーカルはスウェーデンのLinus Nordaさんに頼みました。彼は日本だとRusmus Faberさんの楽曲『We Laugh We Dance We Cry』のボーカリストとして知られている方なのですが、とにかく素晴らしい歌唱力の持ち主です。当初は上記の曲の印象しかなかったのですが、彼のジャジーなスタイルの歌唱音源など、ほかの楽曲をいくつか聞いてみたときに、正直想像以上の歌唱力に驚き、この人に頼めば間違いない!と感じました。エンジニアの佐藤宏明さんと仕上げMIX作業で詰めに詰めた結果、MIXに関して言えば個人的には、本サントラ内でも最も満足のいくものにもなっています。

*バンド演奏は、佐野康夫さん(Drums)、西川 進さん(Guitar)、鈴木正人さん(Bass)と、多くの名だたるアーティスト、邦楽楽曲の演奏に参加されている、凄腕ベテラン・ミュージシャンの方々によるものです。ピアノの演奏は松司馬くんによるものですね。ミケーレのFS『Serenade for Two』や、そのほか通常BGMで使用している劇伴曲の多くも、同メンバーによる演奏です。
 別作品の話になりますが、菅野さんが書いてYUKIさんが歌った『坂道のアポロン』の主題歌『坂道のメロディ』の演奏も、このお3方の演奏によるものでした。スピード感のある曲でも、タメが効いていてグルーヴィーで弾むような演奏は、この方々ならではの高みだと思います。

Q.印象的な歌詞についても制作エピソードを聞かせてください!

 こちらの歌詞もsugar meによるものです。久保さん山本監督と打ち合わせして作ったタタキと、JJのキャラクター像をsugar meに伝えて、そこから彼女がストレートに英語詞で作詞しています。こういう「俺、俺さま、ていうか俺。」みたいな、プライドの高さというか自意識過剰な感じは、日本人の血には少ない部分だと思うんですが、すごくうまく詞が書けています。また音符への歌詞の当てはめ方や響きも全ラインとても完成度が高く、「I look in the mirror, the king looks back at me(鏡を覗けば、王がこちらを見返してくる)」など、ナルシスティックさをポエムで綴っているあたりも、格調もあってとても気に入っています。sugar meは自分でも楽器を演奏して歌唱するシンガーソングライターでもあるので、歌い手の気持ちやモチベーションをとても理解できているからこそ、こういったうまい歌詞が書けるのかなあと思っています。

 最初にプログラム用の楽曲デモがすべてでき上がった段階で、久保さんが「いろいろな曲があったけど、JJのSPの曲が一番印象に残って頭から離れない」とおっしゃっていたと聞いて、「ですよね」と思いました(笑)。ぱっと聞いた感じは爽やかだけど、極めてパンチが強い一曲になっていると思います。

◆ジャン・ジャック・ルロワFS
『Partizan Hope』(3:42)
梅林太郎
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*制作中はだいたいいつも曲名を仮のタイトルで呼ぶことが多く、JJのSP曲は「北米ロック」、こちらのFS曲は「北米サントラ」と呼んでいました。とにかくJJのプログラム曲は、「北米の音楽らしい抜けのよい感じにしないと!」という気持ちでしたね。曲名にある「Partizan」とは「強い意思や力をもった集団」という意味で、直訳すると「希望党」みたいな感じです。JJと、そしてスケーターたちみんなの力強い躍進と輝かしさを称えるような、祝祭的な意味を込めています。OPの『History Maker』がフォーカスしている部分とも、少し似たところがありますね。

*この曲を制作しているときに、隣で冨永さんが歌まじりに指揮をしていたのがすごく記憶に残っています。どの曲にも言えますが、このようなディレクションがあったことで、スケートプログラムに即し、かつ映像とリンクした構成力のある楽曲に仕上がっていると感じています。(梅林)