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パンツが空を飛んだ伝説のアニメ知ってる? 『けいおん!』など平成のアニメを振り返る『平成アニメ備忘録』第21回

2018.11.30 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 平成が終わる前に30年分のTVアニメを振り返る『平成アニメ備忘録』シリーズ! 今回は平成21年(2009年)のアニメを振り返ります。

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 この年は、嵐の孤島で描かれる“連続殺人”と“黄金の魔女”の謎描いた『なく頃に』シリーズ『うみねこのなく頃に』、TYPE-MOON制作シナリオを題材とする『CANAAN』、女性に性転換してしまった男子高校生のバトルと恋描いた『けんぷファー』、仮想世界で働く郵便配達者の物語『テガミバチ』、ノイタミナ初のオリジナルストーリー『東のエデン』。

 さらに、傷ついた心を癒す優しい少女の物語『こばと。』、パンツが空を飛んだことで大きな話題を呼んだ平和を愛する少年と天使の少女のラブコメ『そらのおとしもの』、生徒会室で繰り広げられる“だべり”が主軸の『生徒会の一存』、名だたる戦国武将の激闘を描き現在学園パロディが放送中の『戦国BASARA』、巨大地震発生後の東京をリアルに描いた『東京マグニチュード8.0』などが放送されました。

 今回は、数ある平成21年に放送されたTVアニメのうち3作をご紹介します!

登場人物全員がピュア! 理想の学生生活が描かれた『君に届け』

 『君に届け』は、椎名軽穂の同名漫画を原作とする青春ラブストーリー作品。2009年~2010年に第1期、2011年に第2期が放送され、2010年には多部未華子さん、三浦春馬さん主演で映画化もされています。

 黒沼爽子は、真っ黒な長髪に青白い肌という暗い見た目から“貞子”と恐れられ、クラスに馴染めないでいました。しかし、爽やか&気さくな性格からクラスの人気者という爽子とは対照的な男子・風早翔太と仲良くなったことをきっかけに爽子の学生生活は一変。恋を知り、友情が芽生え、輝かしい青春の日々を送る……羨ましいほどの超王道青春ラブストーリー。『君に届け』を見て「こんな学生生活を送りたかった」と思った人、この世界に何万人といることだと思います。

 そして、“風早くん”は老若男女問わず好きになるであろう魅力の持ち主。少女漫画を読まない、『君に届け』を知らない人でも「風早くんは知っている」というような気がする。そんな風早くんは、曲がったことを嫌う真面目な性格で、自分にも他人にも厳しい一面も。そんな風早くんは、爽子にだけはウブな一面を見せ、独占欲を持つ……いい男すぎますよね。

 本作はイケメンすぎる“風早くん”があまりに有名ですが、個人的には同じクラスの真田 龍も気になるところ。寡黙な性格で感情表現が乏しく、一見するとぶっきらぼうに見える龍ですが、幼馴染の千鶴に幼いころから恋心を抱いており、“幼馴染”から“特別な関係”になるため苦心する……という隠れイケメン。筆者の学校では“風早くん”派と“龍”派がなかなかにバチバチしていました。どちらもいい。

 そんな本作は、何より登場人物たちが“ピュア”であることが魅力。爽子や風早くんが恋に悩む姿はもちろん、相手を思う言葉があまりにもピュア。このコラムを書くにあたって学生ぶりに『君に届け』を見たのですが、彼女たちの言葉、姿、行動……すべてにおいて“ピュア”で逆にびっくりしました(大人になるとこうしたところで潤いを摂取しないとダメだなと思った)。

アニメ×実写のハイブリッド作品! 不思議な精神科医の活躍描いた『空中ブランコ』

 『空中ブランコ』は、奥田英朗による同名小説“伊良部シリーズ”を原作とするハイブリッド・アニメーション。2009年にアニメ化されたほか、実写ドラマ化、舞台化もされています。

 本作は、『イン・ザ・プール』や『町長選挙』、『空中ブランコ』など精神科医・伊良部を主人公としたシリーズに収録されているエピソードを織り交ぜてTVアニメ化。伊良部シリーズは舞台化、ドラマ化もされており、その際の主人公は同一人物が1人の“伊良部”という精神科医を演じていました。

 しかし、TVアニメ版では、“視聴者が思うそれぞれの伊良部が居る”というスタッフの思いから、大きい伊良部(CV.三ツ矢雄二)、中くらいの伊良部(CV.三ツ矢雄二)、小さい伊良部(CV.朴 ろ美)と3タイプの伊良部が登場。シナリオごとに大・中・小の伊良部が活躍する……という当時のTVアニメのなかでも珍しい主人公でした。今でもこのタイプの主人公っていない気がする?

 また、“ハイブリッド・アニメーション”の名前の通りアニメ映像と実写映像を織り交ぜた独特のアニメーション。というのも、ナースのマユミやメイン患者を演じるキャストの顔が部分的に登場するのです。かなり独特。最初は「なんだこのアニメ!」とびっくりしたものですが、伊良部シリーズの摩訶不思議な世界観を知れば知るほどに「なんだかしっくりきている気がする」ような気がしてくるのです。“気がする”というあいまいさが味噌。

 各エピソードに登場するメイン患者たちも個性豊か。空中ブランコに乗る睡眠障碍者・山下(CV.森川智之)、“勃ちっぱなし”に悩む区役所職員・田口(CV.櫻井孝宏)、強迫神経症に悩む恋愛小説家・星山(CV.三木眞一郎)など、豪華声優陣が精神的に悩む患者たちを演じているのです。

 “精神科を舞台に患者とその主治医が登場する作品”と思うと、ほの暗い世界観を想起される方もいるかもしれませんが、本作は“それでもいいのか!”と思わせてくれる爽快&じわじわ笑える作品です。全然暗くない。むしろ主治医の伊良部の我儘な子供のような性格に「もう!」と思わず笑えってしまう。

 患者たちは病の持ち主というよりは、“人の弱い部分”を具現化したような存在。見ていると「なんだか分かるな」と共感できるところがあるし、彼らが救われると自分もすっきりした気持ちになれる。まさに精神薬のような作品です。個人的には第5話の強迫神経症の精神科医・池山(CV.平田広明)、第7話の先端恐怖症のヤクザ・猪野(CV.高橋広樹)がおすすめです。

『ごはんはおかず』名曲だったよね! ガールズバンドブームを起こした『けいおん!』

 『けいおん!』は、かきふらいによる同名4コマ漫画を原作とする学園(ガールズバンド)作品。2009年から2010年にかけてTVアニメ化され、2011年には劇場版も公開されました。

 「2009年に放送された思い出深いアニメは?」という質問と投げかければ、おおよその人が名前を挙げるであろう『けいおん!』。同作の登場キャラクターからなる桜高軽音部(平沢 唯、秋山 澪、田井中律、琴吹 紬)+新入部員の中野梓(竹達彩奈)を加えたバンドユニット“放課後ティータイム”による楽曲は、ディリーチャート1位にランクイン、日本レコードにゴールドディスクに認定されるなど記録に残ったほか、彼女たちが使用する楽器や道具なども注目を集めました。

 放課後ティータイムの代表曲は数多く、どれか1曲を上げるとすると難しい……『天使にふれたよ!』、『ふわふわ時間』、『ごはんはおかず』どれも名曲でしたよね。個人的には『ふでペン 〜ボールペン〜』が好きでした。

 彼女たちの楽曲の魅力は、王道バンドサウンドと女性声優ならではの歌声が生み出すハーモニー。第1期のOPテーマ『Cagayake!GIRLS』は、荒々しいタム(ドラム)の連打から、かき鳴らされるギターに合わせてメインボーカル平沢 唯(豊崎愛生)の歌声が愛らしく重なり合う。バックで流れるバンドサウンドは“まさにバンド”と言わんばかりのトゲトゲしいものなのに、唯の愛らしい歌声がぴったりとはまる……この楽曲(もしくは別の楽曲)を聴いて「バンドやりたい!」という気持ちが芽生えた方も多いのではないでしょうか。

 また、彼女たちがバンド活動をとことん楽しむ姿は、見ている人のバンドへの初期衝動をくすぐられた方もおおいはず。この当時、『けいおん!』を見た友達が「バンドっていいなって思ったよ」と言ってくれたことが地味に嬉しかったり。

 『けいおん!』は、バンド活動が魅力的なのはもちろん、彼女たちの日常も見どころ。押下後になるとバンド活動のために集まる“放課後ティータイム”。練習を始めるのかな? と思いきやまずはいったんティータイム。ケーキやクッキー、マドレーヌ、プリンアラモード、カステラ……登場するおやつがこれまた美味しそうなんですよね! 彼女たちの活動を楽しみにする反面、おやつタイムが楽しみだったりしました。

 こうしたほっこりする一幕がありつつも、彼女たちがなぜ軽音部に入ったのか、バンド活動で何を感じたのか、限りある学生生活のなかでなにを感じ、過ごしていくのか……学生ならではの瑞々しい歓声が繊細に描かれています。

平成22年の日本はどうだった?

 ちなみに平成20年の日本では、北京オリンピック/パラリンピックが開催されたほか、エド・はるみさんの「グ〜!」や「アラフォー」が流行語大賞にノミネート。また、『ROOKIES』の『キセキ(GReeeeN)』、『花より男子F(ファイナル)』の『One Love(嵐)』、『エジソンの母』の『愛をこめて花束を(Superfly)』など映画・ドラマの主題歌が話題になりました。

 次回の『平成アニメ備忘録』をお楽しみに!

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