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『BANANA FISH』月龍役・福山 潤さんインタビュー「月龍って実はアッシュにとって何者にもなれていないんですよね」

2018.11.17 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 PASH!11月号では放送中のTVアニメ『BANANA FISH』の特集を掲載しています。ここでは、掲載されている月龍役・福山 潤さんのインタビューの一部をご紹介。

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月龍役・福山 潤さんのインタビュー

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──福山さんは原作ファンとのことですが、本作を知ったきっかけは?

 元々作品のタイトルは知っていたのですが、僕が中学生くらいの頃はまだ少年が少女漫画を手に取ることはなかなかなかったんです。でも高校のクラスメイトに、そういうことを気にせず好きなものや面白いものは何でも観ると公言する、全然オタクっぽくない子がいて。その友人に何か面白い漫画ない? と尋ねたところ、勧められたのが『BANANA FISH』でした。

──それで読んでみたらハマってしまった、と。

 はい。少女漫画に抱く印象とは全然違って、特に最初の5〜6巻までは大友克洋さんや初期の浦沢直樹さんのような線の多さで、人物が記号に近い形で描かれていると感じました。女性も全然出てこないですし(笑)。当時はこれを少女漫画と言っていいのかな…? と思うほどでした。ベトナム戦争後のアメリカ、恐らくレーガン大統領時代あたりと、自分が小学生で経験した年代でもあったので、映画を観ているような気分で読み始めることができましたね。

──一ファンとしては、今回のアニメ化された映像はいかがでしたか?

 アニメ化されるということだけで僕は嬉しかったんですが、実際1話を観て、非常に高いクオリティだと感じました。原作を読んでいた当時では、こんな映像にはならなかったでしょう。久しぶりに一視聴者として、普通に楽しんでアニメを観ることができました(笑)。時代設定の変更については、僕自身一番気になっていたところで。

 でもよく考えると、舞台を現代にした上で不都合なことって、携帯電話の存在と、CIAなど政府が絡むと、地下活動が現代技術によって筒抜けになりやすいことくらいかな?と。それならいくらでもドラマで見せようがあるし、ディテールに影響はあれど、本筋のドラマには影響しないんじゃないかなと思いました。

──月龍役が決まった経緯は?

 僕はオーディションではなく『BANANA FISH』のいずれかの役でお問い合わせいただいてます、と聞いていました。もう出られるなら何役でも! という気持ちでしたね。ただそう言ったところで僕がゴルツィネやマックスをやるはずはなく(笑)。個人的にアッシュも絶対ないだろうと。だから自分のなかであり得る役が3キャラくらいしかなかったんです。年齢的にシンもないし、ショーターか…?とか。

 今の自分で一番やりたい役だったので。誤解を恐れずに言うと、今までの自分の道行きを考えたら最初に思い浮かぶのは英二でしたが、同時にこれもないなと思いました。そのなかでも、はなから月龍はなかったんですよね。だからこの役が決まったときは「マジで!?」というのが正直な印象でした(笑)。

──そうだったんですね! 意外です。

 月龍は、「自分がやれる役」の枠に入っていなかったんですよ。多分原作を読んだ当時の印象から、僕の力ではまず演じられないと思っていたんだと思います。難しい役なのはもちろん、自分に「妖艶」な要素があるとは微塵も思っていない時期でしたから。

──ではそんな月龍の人物像や彼の境遇に感じることを教えてください。

 月龍は、当初まったく理解の範疇になかったキャラクターでした。10代で読み終えた当時は、やっぱり日本人としても近い感覚で見られた英二に対して、月龍の境遇や心情ってどうしても想像ができなくて。だから最初の印象は、「このドラマに必要なキャラなんだろう」でした。

 アッシュと陰と陽を分けるキャラクター構図のための人物であり、「ヒステリックで嫉妬に駆られている人」くらいで。セリフの意味もよく分かっていなかったですしね。でも僕自身年を重ねていくうち、脇役に対する理解も広がりが出てきましたし、今回月龍役が決まって読み返してみると、視点が変わり彼の印象もだいぶ変化しました。 

──具体的にどう変化しましたか?

 大変人間らしく映るようになりました。それに、かわいそうな人だなとも思うようになりましたね。この物語のなかで、月龍って実はアッシュにとって「何者にもなれていない」んですよね。ライバルでもなければ友人でもない。視界に入れてももらえないんですよ。だから英二に向かうことで、アッシュと関われているんです。また、アッシュは自分と同じ地獄を生きる同様の存在だったはずなのに、英二のおかげで彼ひとりだけその地獄から逃げる道が見えている。

 それも月龍は許せないんでしょう。アッシュに救いがあると知ってしまうことで、自分にもそうしたことが起こり得るかもしれないと思わされてしまう。月龍は、自分の道にそんな「光」が見えてしまうのも怖いんです。だからアッシュは月龍にとって、憧れと嫉妬と恐怖と…いろんな対象になってしまっていて、もう関わらざるを得ないんだと思います。とにかく、月龍はどうにかしてアッシュの視界に入りたかったんだと思うんですよ。そう考えながら読むと、今はすごく魅力的な人物に映ります。

──この先登場となるブランカへの期待も聞かせてください。

 原作を読まれている方は、恐らくイメージどおりだと思います。これってすごいことだと思うんです。実はここ10年程、僕自身ブランカ=森川(智之)さんとして読んでいたんですよ。だから実際キャスティングを聞いたときも、驚きより「だよね?」という感じでした。それ以外ないだろ!って。まだ収録には合流していないのですが、きっと何の違和感もなくハマるんだろうなと思います。楽しみです。

──最後にファンの皆様へ一言!

 声優をやってきたなかで、僕には“好きすぎる作品に関わるといいことがない”というジンクスがあります。これは決してマイナスな意味ではなく、好きすぎるがゆえにハードルが上がりすぎて、何をやってもうまくいかない感覚に陥ることがあるからです。だからそういう作品は観る側がいいと思ってから数年、まさかのこのタイミングで好きすぎる作品をやらせてもらえることになりました(笑)。

 今はその幸せを感じながら参加しています。本作の面白さは、漫画からアニメに媒体が変わっても薄れることはないと確信しました。ですので原作にまだ触れていない方はぜひ原作も、アニメが観られていない原作ファンの方はぜひアニメもご覧いただけたら幸いです。月龍役としては、作品の一助になれればと思いつつ、嫌われる覚悟満々で演じています!(笑) これを読んで「確かにそうかも!」と思った方、どうぞあいつにも同情を向けてやってください。彼のことも、どうか愛でてやってください!!(笑)

(※PASH!2018年11月号より抜粋)

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PASH! 2018年 11 月号 [雑誌]

DATA
■『BANANA FISH』
公式サイト:http://bananafish.tv/
公式Twitter:@bananafish_tv

ON AIR:
フジテレビ”ノイタミナ”にて毎週木曜24:55より放送中
ほか各局でも放送

STAFF:
原作=吉田秋生「BANANA FISH」(小学館フラワーコミックス刊)
監督=内海紘子
シリーズ構成=瀬古浩司
キャラクターデザイン=林 明美
総作画監督=山田 歩・鎌田晋平・岸友洋
ハードボイルド監修=久木晃嗣
色彩設計=鎌田千賀子
美術監督=水谷利春
撮影監督=淡輪雄介
編集=奥田浩史
音楽=大沢伸一
音響監督=山田 陽
アニメーション制作=MAPPA

CAST:
アッシュ・リンクス=内田雄馬
奥村英二=野島健児
マックス・ロボ=平田広明
ディノ・ゴルツィネ=石塚運昇
ショーター・ウォン=古川 慎
フレデリック・オーサー=細谷佳正
伊部俊一=川田紳司
ユーシス=福山 潤
ブランカ=森川智之
シン・スウ・リン=千葉翔也
ラオ・イェン・タイ=斉藤壮馬

あらすじ:
 ニューヨーク。並外れて整った容姿と、卓越した戦闘力を持つ少年・アッシュ。ストリートギャングを束ねる彼は手下に殺された男が死ぬ間際に“バナナフィッシュ”という謎の言葉を発するのを聞く。時を同じくして、カメラマンの助手として取材にやってきた日本人の少年・奥村英二と出会う。二人はともに“バナナフィッシュ”の謎を追い求めることに──。

©吉田秋生・小学館/Project BANANA FISH

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